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創作育児

『絶望鬼ごっこ』クライマックスへ向けて、既刊を無料で読めるキャンペーンを開催中である。
読んだことない人も途中で止まっている人も、たくさんの人に読んでもらいたく…!


これを期に自分も読み返してみようかなぁ……と思い、そういえば自分は出版した自作を読み返さないタイプだなぁ、ということに気づいた。
「前の巻ではどう書いたっけ?」という確認をすることはあっても、本として読み返すことはほとんどしない。
なんでだろう?
べつに、「たくさん出してるから、出版したはしから忘れちゃうんで…」というような、人気作家っぽい理由ではない。
たぶん、お母さんの心のもやもや的な問題なのだ。


あのですね。
いちばんはじめに、原稿を書いているとき。
自分の頭の中から、自分の手を介して、自分のPCの中のデータとして、原稿をこねくりまわしているとき。
これはね、
『子供を産んで、家の中にこもって、お母さんの手だけで子供を育てている状態』
なんです。
いるのはお母さんと子供だけ。子供のことしか考えてない。

ここにね、やってくるのがお父さん(編集者)。
そんで、お父さんは立派な出版社に勤務していて、社会をよく知っているので、
『こういう教育をしよう。この子が社会で、立派に生きていけるように…』
って、お父さんの声も聞きながら育てていくようになる。

これで、お母さんとお父さんと子供の世界になります。
両親の足並みがそろっていれば、子供はすくすくと育ちます。
両親のコミュニケーションが取れてなかったり、教育方針が合ってなかったりすると、子供はグレるか、離婚になります。
うん。多い。とても多い。


で、順調に育っていくと、ゲラというやつになります。
校正さんをはじめ、いろんな人が見て、いろんな手が加わった紙面。
子供が学校に入学し、お母さんとお父さんだけではなく、先生とか友達ができたような状態です。

ゲラ

このときのお母さんの感覚は、ちょっと複雑で…

『家ではおかあさんおかあさんとなついていた子供を、家の外で見かけたら、学校の友達といっしょに笑っていて、こちらに気づいてもなんだかよそよそしく首をちょこんとするだけ…。
 ああ、この子は私の知らないところで、いろんな人と触れ合って成長していくのね…。うれしいけど、ちょっとさびしいかな…』

みたいな感じなんです。ええ、感じなんですよ。
なのでお母さんは、ゲラになった著者校をチェックするときには、若干心の距離ができています。
家のなかにいたときとおなじようにはもう読めないの…。

で。
最後、本の形になって出版され、書店さんへ出ていくと、これはもう、
『育児を終えて独り立ちし、戦地へ向かった子供を思う親』
のような心地になっちゃうんです。
つねに売上を測られて、生存/戦死がきまる戦地へ子供を送りだすんだ。ワイは鬼や。NO WAR!! NO WAR!!
送りだした子供のことは、とても心配……。
でも、もう母にはなにもしてやれることはないのです……強く……強く生きなさい……という気持ち。


なので、出版した自作を読み返すのは、
『子供が戦場で戦っているときに、感慨深く思い出のアルバムをひらいてしまう』ような感じがしちゃってね。
あんまり読み返す気にならないのでした。


というようなことを語っていると、
「針とらさんはヘンなんですね」
と言われるので、ヘンなんだと思います。

そんなことはどうでもいいので、無料キャンペーンをよろしくね。


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