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建物ごと民藝の世界観「美しき漆」展@日本民藝館


「民藝」という言葉を作った思想家•柳宗悦のコレクションと邸宅を見るため、日本民藝館へ行ってきました。

柳宗悦は、大正〜昭和時代、芸術の対象として見られることのなかった日用品の中に「美」を見つけ、その価値観を広めようとしました。

アクセス

井の頭線 駒場東大前駅、下車。
線路沿いを道なりに7分歩きます。

改札を出て左に進みます

本館

本館 正面左手にチケット売り場
現金のほか、Suicaなども使えるとのこと
看板のフォントも味わいがあります
入り口前の大きな鉢から伸びる蓮

チケットを買うと、建物保護の為、シューズカバーを渡されます。靴にカバーを被せていざ、建物の中へ。

古い家の匂い。土もの、磁器、かすりの着物、展示用の木の棚も古いながらもよく手入れされて、いい色です。展示ケースのガラスもよく磨かれていました。

混雑状況は、平日の昼間の為、一つの展示室に多くて5、6人。鑑賞の妨げになるようなことはありませんでした。

無秞の焼き物の部屋

部屋の真ん中、休憩用のスツールかと思ったら、コートジボワールのセヌフィ族の《洗濯台》でした。座らなくて良かったです。

2階

入り口正面の大階段から、2階に上がります。ガラスケースに入れられない展示品には「お手を触れないでください。」と書かれていました。
建物を含めた至る所が「用の美」を感じさせるので、調度品と展示品の区別がつきづらいのでしょう。

ちなみに展示品には、黒地の板に手書きの朱文字でキャプションがついています。

東洋への憧れや素朴さを好む外国人観光客は相当数いると思うので、是非英語キャプションか、英語の音声ガイド(日本語もあったらもちろん嬉しい)を備えていただきたいものです。

企画展 美しき漆 
日本と朝鮮の漆工芸


漆塗り、螺鈿細工、綺麗だなと通り過ぎていると、見過ごせない作品に出逢いました。

丸山太郎 1958 《岩偶 卵殻貼収納箱》
隣には紀元前800年頃の《岩偶》が展示されています。卵殻貼収納箱は、岩偶のケースとして作成されたとのこと。岩偶は土偶の岩バージョン。つるっとした白い手のひらサイズの岩偶におおらかな模様が彫り込まれていました。

丸山太郎氏は、卵殻貼アーティスト。箱、文鎮、筒といろいろな漆作品の外側に卵の殻を貼り付けています。卵殻貼は、うずらの卵を酢で脱色し、薄皮を剥がして漆器に貼り付ける技法です。気の遠くなるような作業により、生まれた作品でした。

そんな収納箱を作ってもらうことになるとは《岩偶》の作者は想像もしなかったでしょう。

裏庭

ベランダに大きな甕が数個置かれ、その奥の木々が重なり合って、遠くまで続いているように見えます。日本の湿度が似合う景色。

裏庭、うっそうとした森のような奥行き
実際より深く見えます

大展示室

チラシの表面にある2つの作品が展示されていました。

上、茶碗の温かな艶は写真が作品の魅力を引き出しています
下、螺鈿は実物の方が輝いています


《諸将旗旌図(ショショウキセイズ) 江戸時代》が、デザイン的で面白かったです。目立つための工夫を凝らしたお家の旗がたくさん描かれている画です。
同じモチーフの画はたくさんあるようです。

《19世紀螺鈿の物差し》メモリに螺鈿が使われていて、可愛かったです。

館内で撮影可能な箇所はここだけ

「用の美」

館内をうろうろしたながら、用の美について思いを巡らせました。

歪みや二股に分かれた筆跡も味わい。
寸分狂わぬ職人技とは一線を画すもの。
意図的でない、恣意的でない、あざとさなんてかけらもない。

試行錯誤の上に生み出された作品も魅力的ですが、あざとさのかけらもない作品もまた無邪気で愛しいですよね。

西館(旧柳宗悦邸)


バーナード•リーチも宿泊したという西館(旧柳宗悦邸)を楽しみにしていました。西館は第2・3水曜日、第2・3土曜日公開です。公開日であれば追加料金なしで見学できます。
こちらは靴を脱いで上がります。

引き戸を開けるのに勇気が要りました

柳兼子記念室

柳兼子氏(奥様)が有名な声楽家(アルト)とは全く存じ上げていませんでした。記念室には歌声が流れています。展示されていた楽譜(横書き)に縦書きのメモがあって、西洋と和が普通に混ざり合っている面白さを感じました。


客間

本館で展示されていた《諸将旗旌図》と似たものが、床の間に飾られていていました。やはりインテリアにも良いです。

書斎

本棚に白樺仲間の《岸田劉生全集》、《楢重雑筆》を見つけ、柳宗悦の時代のイメージが膨らみます。
大きな木のデスク、立派な椅子、背後に布張りのソファーがあります。友人たちが訪ねて来ては、議論を交わしたのではないでしょうか。ついそんな妄想をしてしまいます。

バタフライスツールやシンプルなカトラリーで有名な工業デザイナーの柳宗理氏は、宗悦氏のご長男でした。実用性とデザインの両立を成し遂げた方です。

工業製品は、手仕事の対極にありますが、「用の美」は共通していますよね。

まとめ

手入れされないままの古いものは、本当に古びれてしまいます。けれど、手入れの行き届いた古いものは、新しいものにはない凛とした佇まいを見せてくれます。

年季が入ったものを輝かせるのは、大切にされていること使われることではないでしょうか。日常を大切にしなくてはと思いました。

チケット

公式ホームページ


今回の特別展は6/18(日)までです。

次の特別展は、
聖像・仏像・彫像
柳宗悦が見た「彫刻」


2023年6月29日(木)―9月3日(日)

展示替え期間は休館ですので、公式ホームページを確認の上、お出かけください。

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