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連続小説「アディクション」(ノート30)

ギャンブル依存症から立ち上がる

この物語は、私の誇張された実体験を基に妄想的に作られたフィクションですので、登場する人物、団体等は全て架空のものでございます。

「神様仏様峰様」〉

「いやー、神様仏様峰様ですよ」

「あー、俺たちもそうすれば良かったなあ。2000円が53000円かよ。」

おたけさんの大的中で、盛り上がり、そして「御祝儀」で皆さんに生ビールが振る舞われました。

「屑星さんはコーラでごめんね」

「いやいや、お役に立てて嬉しいです。でも、ハマらないでくださいよ。」

「そうね。でも今まで名前と真反対で恵まれてなかったから、こういう日があってもいいわよね。」

「あ、詐欺師の彼は左ききに、いくらダマされたんですか?こんなことここで聞くのもなんですけど。」

「300万くらいだったかな。まぁもういいんですけどね。」

「5万じゃ足りないなw」

そんなこんなで他の皆さんは、当たったり外れたり酔っ払ったりしながら、峰さんの出る11レースを迎えました。

このレースで峰さんは、圧倒的有利な1号艇で出場します。先程も見事な「捲り」を決めて「東京支部塾長 江戸川平八」の存在感を見せつけました。欲を言えば優勝戦で勝って勇姿を見たかったのですが、期間の前半はブランクの影響かなかなか感覚が掴めなかったようで、一歩及びませんでした。まぁこれが今回のラストレースの1号艇なので気合も十分でしょう。

「もうここは、峰さんからだな」

「異議なし。迷わず総流し」

「私は「単勝1」を記念に買います」

などなど、まぁ誰が何を言ってたのかはご想像に任せるとして。

「屑星さん、私、買い方覚えたから、1人でやってみるわ」

「大丈夫ですか。もし困ったら声を掛けてください。」

「ありがとう。さっきと同じで峰さんから「全通り」ってのにするわ」

「今度は組合せによって、損するかも知れないけど、いいと思います。」

「……よし、できたわ。買ってくるからそこに居てね」

「はいはい。」

と、おたけさんも無事購入し、いよいよ峰さんのレースが始まります。

「ここは間違いない。」

「2着に何が来るかですね。」

スタートが切られ、峰さんは見事に好スタートを決め、先頭で最初のターンマーク(コーナーだと思ってください)を回ってきました。

「よし、さすがだ。」

だったのですが、、

何かコーナーを回った直後に、速度が急に落ちてしまい、ついには止まってしまいました。

「エンストかよ、、」

「峰さん、どうしちゃったんだ、、」

皆さんは、あ、状況の全くわかってない「おたけさん以外の皆さん」は、一気に落胆ムードとなってしまいました。

そして、峰さんは「エンスト失格」。後に、水中に浮遊していたレジ袋がプロペラに引っかかっていたのが原因と判明。レース前に浮遊物のチェックは必ず行い、見つかれば回収するのですが、稀にこのように見つけ切れないこともあるようです。ついていません。

「ねえ、それで峰さん勝ったの?」

「おたけさん、峰さんはエンストで失格です。」

「だって、あそこの掲示板、「1着4番」って出てるわよ。」

「それはさっきのレースで、峰さんは1番です、、って、え?」

「じゃあ、この4番、峰さんじゃないからハズレね。」

「言ってることが変ですよ。当たってますよ!」

一同、驚愕して、おたけさんに注目しました。

「確認しますので、買った舟券見せて貰えますか?」

「あ、はいどうぞ」

「2500円も買ってるじゃないですか!」

「うん。20点で、さっき5万儲けたから丁度いいと思って、、」

「丁度いい、の意味がわかりませんが、これ恐ろしいくらい凄いですよ?」

「あら、そうなの。」

「間もなく配当が出ます」

4-3-6 125,500円

「313万7500円の払い戻しですね。あ、おたけさん、また死んだか?」

「、、三途の川を渡り切るところだったわ。戻って来れた。」

「これ、私が付いて行ったら、当たってませんでしたね。4が峰さんだと勘違いしたまま買ったのが運命ですね。」

「あー、こわいこわいこわい。なんか、こんな形でお金入るなんてとんでもないわよ。」

「あでも、騙し取られた額とほぼ同じですよね。それと、後で税金も取られますけどね。」

「そうか、こういうところに神様っているのか、神様仏様峰様だわ。」

他のメンバーは、一瞬ドン引きしたものの、おたけさんの快挙で大盛り上がりをしました。

高額払い戻しは、私と柳田さんが付き添い、おたけさんが帯付きの札束3本手にした姿は結構鳥肌モノでした。

「バッグ大きめなの持ってきて良かったわ。でもちょっと怖いな。」

「今日は帰りはタクシーがいいですよ。この後の峰さんとの飲み会も一応気をつけてくださいね。まぁ私も注意はしときますけど。」

それにしても、その札束を見たにも関わらず、私にはギャンブルへの渇望とか衝動とかが一切沸き起こりませんでした。そこが今回の自分にとっての収穫だったかも知れません。

〈「祝勝会」〉

それにしても、レースがどのように行なわれ、そしてどうなれば配当を手にすることができるのか、それを全く知らず、しかも今でもおそらく、舟券を予想して買うなんてことは全くできない。そんなポンコツな人が、知らず知らずに300万円もの大金を手にしてしまう。まぁそれがギャンブルってものかも知れません。

などということをグダグダ考えながら、脇でおたけさんが、「運命とは」だの「神の存在」だの怪気炎でまくし立てながら、私の「追い出しコンパ会場」改めおたけさんの「祝勝会会場」の居酒屋に向かっておりました。

西葛西駅付近の居酒屋に、遅れて峰さんが合流し「祝勝会」が始まりました。

「いやぁ、最後は申し訳ございませんでした。あんなことになるとは」

「レジ袋捨てたの誰なんですかね」

「アディクションのメンバーなら平気でやるかも知れませんね」

「ノブさん、いくらなんでもそれはちょっと、、まあいるかもw」

冒頭、峰さんがエンストを詫つつ開会したのですが、

ノブさんがおたけさんに指さしつつ、

「エンストのお陰で、一攫千金かっさらった人がいるんですよ。」

「え、俺を買わずに当てたんですかw」

「峰さんが最初のレースと同じ「4番」だと勘違いして買っちゃったんです。」

「ほう、ならば俺のお陰だなw」

にしても、30年以上公営ギャンブルをやり続けていた私も、さすがに300万は手にしたことはありませんでした。

ギャンブルだか何だかわからん人が一生に一度(であってほしいが)のギャンブルであっさり手に入れるのも、まぁ人生全て「運」だわなと確信もしました。

「しかし、メンタルヘルスグループも随分かわいい人が来たんだな」

「峰さん、あかねんとあおたんです」

「ノブ、お前の通訳はいらんw」

「始めまして、香坂茜です」

「始めまして、四条葵です」

「ああ、それでそういうのか。ところでどんな仕事してるんですか?」

そういや、私もこの二人の職業を聞いたことないというか、他の皆さんもそのようでした。

「あ、言いにくかったらいいよ。」

と、峰さんがいうものの、あかねんが

「いや、大丈夫です。私は消費者金融なんです。」

(なんとまぁ、また私に関わり深い)

「お、それは屑星さんが随分お世話になって踏み倒そうとしてる所ですね」

「柳田さん、酔っぱらい過ぎですよ」

「あ、そうなんですか?」

「はい、場合によっては御社が私の債権者集会の対象になってるかもw」

「アハハ。ギャンブル依存症だと伺っておりましたので、ちょっと関係あるのかなって私も思ってましたよ」

「屑星さんよ、あかねんが債権者だったら優先的返せよな」

「柳田さん、ご存知かと思いますが、それは平等に配当することになります」

「まぁでも、アディクショングループ行けば、あかねんの会社から踏み倒してるやつらたくさんいるよね。」

「おいノブ、アディクションのことあまり言うと、島貫に睨まれるぞw」

と、峰さんが合いの手w

「そうっすね。屑星さんいなくなったら僕が睨まれるのかなぁ」

実はこの人、睨まれるどころか私同様追い出されることになるんですけどねw

「そちらの、あおたんちゃんは、どんな仕事してるの?」と峰さんが質問

「あ、私、デリ●ルです。」

「屑星さん、デ●ヘルって何?」

「おたけさん、知らんのか。」

「あ、こちらも屑星さんの世話になってるとこですな。」

「相羽さんも飲み過ぎですよ。てか、言って大丈夫なんですか?」

「はい、仕事は誇りをもってやってますから。ところで屑星さんご利用されるんですかw」

「この人はD専だから、あおたんはご利用しないかな。」

「ノブさん、水ぶっかけますよ。アタマ冷やしましょうかw」

この若くてかわいいお二人も、なかなか闇を抱えていて、更に話してくれて、

あかねんは、とにかくブラックな業務でセクハラもパワハラも受けまくって、そして睡眠薬を大量に飲んで自殺しようとしたら、たまたま母親が様子を見に来て倒れているのが見つかり、救急車で病院に運ばれ一命を取り留めたらしく、そのセクハラパワハラ上司は2人いて、職場で強姦までされてたらしく、結果その2人は捕まったのですが、、

(まさか、アディクショングループに犯人の元上司いないだろうなあ)

と、私の頭はこうなってしまいます。

一方のあおたんはというと、実は中学生のころ、母親が再婚し、その義父に性的虐待を受けたため施設に逃げ、その後生計を建てるために、風俗界に飛び込み、その時に知り合ったホストに貢いだ挙げ句に捨てられボロボロになって、そのホストの住むマンションを探し当て、ホストが建物に入るところで目の前で自ら手首を切って大騒ぎして、警察沙汰になってこちらにやってきたとのことでした。むしろアディクションのほうがいいのではと私も一瞬思ったのですが、あの連中のところに投げ込まれたら厳しいかなとも思いました。

「そういや、この場は峰さんの卒業祝いと屑星さんの追い出しコンパでしたね」

「ノブ、今更そんなこと言うなw」

「おたけさんの祝勝会をも通り越して、今はあかねんとあおたんを励ます会ですかねw」

「あおたんを励ますというか、僕は慰めてもらいたいなぁ」

「あ、ノブさん、仕事ならちゃんと慰めますよ。60分2万円ですけど。」

「じゃあ、おたけさん、お金下さい」

「下さいって、どういうことよ?ていうか、私も一応結婚詐欺に遭った女ですからね。」

更に皆の酒量が増し、深夜までワチャワチャやってしまいました。

まぁそれでも、峰さん囲んで記念撮影をしてから、おたけさんをしっかりとタクシーに乗せ、めでたく解散しました。

ギャンブルペアとノブさんと女子二人はあれからオールだったそうですがw

さぁ、私のメンタルヘルスグループ編もそろそろファイナルとなります。

今回はここまでとします。

GOOD LUCK 陽はまた昇る
くずぼしいってつ








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