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ミッキー絵本探究ゼミ第4期①リフレクション

チャレンジ精神旺盛なわたしは、また新たな世界に足を踏み入れてしまった。それが、ミッキー絵本探究ゼミである。

Ⅰ.ミッキー先生との出会い

ミッキー先生との出会いが、山の上でよかったと思う今日この頃。

出会いのきっかけは、動物写真家の友人であるハッシーからのご紹介。
「絵本のエキスパートで、数多くの素晴らしい活動を手掛けているパワフルな女性に会ってみない?」「現在進行中の絵本探究ゼミの講師をかのんちゃん(私)にお願いしたいと言ってるよ。」とのお誘いがはじまりだ。
わたしが講師?そんな大役、私には務まらないでしょ。と思いながらも、「絵本のエキスパート」というワードに惹かれてはいた。そして今年8月下旬、友人ハッシーの計らいで、わたしが当時訪れていた大雪山黒岳石室にてお会いすることになった。

ミッキー先生の第一印象は、オーラ、威厳漂うが、お酒が大好きな山女。「はじめまして」後の第一声が、「わたし、今日は石室に泊まります。テントのかわりに美味しいワイン担いできたの。(にっこり)」。
さらに、美味しいおつまみも沢山持参されており、とても親しみを感じるお人柄。夕方、一緒に稜線上を歩き、動物探しや植物観察をした後、夜はお楽しみの宴タイムへ。
ワインを飲みながら沢山のお話を聞かせてもらった。中でも、ミッキー先生が構想している自然環境を保全するための活動についてのお話が興味深かった。終始笑顔で楽しそうにお話される姿から自然愛護への本気度が伝わってきた。また、おべんちゃらは口にしないであろう真っすぐなお人柄にも惹かれ、お会いできてよかったと心から思った。

後日、ミッキー先生の経歴を知って驚いた。
さらに講師をされているときのお姿ときたら、山小屋での寝起き姿とのギャップが激しくカッコよすぎる。
街で初対面だったら緊張して何も話せなかったと思う。
肩書から解放される山の上でお会いできてよかったとつくづく思った。

そんな計らいをしてくれた、友人ハッシーとミッキー先生に感謝しかない。

「エゾシマリス」  大雪山黒岳にて

Ⅱ. 絵本探究ゼミ
 受講動機  ~動物写真家として~

1.  2月の層雲峡リアルゼミにむけて

 2月のリアルゼミでの講師を依頼されている。(大変恐縮ではありますが)
内容は動物写真家としての活動、撮影した写真や作成した写真絵本の紹介などを考えている。それにあたり、少しでも絵本について学ぶことで有意義な内容にしたいと思い受講を決意した。

2.  伝わる写真絵本を作成したい

 現在、動物撮影歴9年目。5年前から被写体をリス(ニホンリス、エゾリス、エゾシマリス)に絞り込み撮影を続けている。撮影した写真でこれまで5冊の写真集を作成した。そのうち3冊は物語をつけた絵本風に仕上げ、出身幼稚園や知人の経営する幼稚園、以前働いていた小児病棟などの子どもたちに読んでいただいている。

 2019年に作成したエゾリス写真絵本「ぼくのもりにはるがきた」は、子リスの成長と母親から独り立ちするまでの物語に仕上げた。読者である子どもたちも成長とともに、母の元からはなれていくが、恐れることはない、母の教えを守っていれば素敵な春を迎えることができるよ。そんなメッセージを込めて作成した。その後、この本を読んだ子どもたちの反応を知人(園長)が送ってくれた。「かわいかった」「悲しかった」「寂しくなっちゃった」など、子リスが小さいうちにお母さんとおわかれすることに驚き、多くの子どもたちがさみしい気持ちになってしまったようだ。わたしはこの物語を作成するにあたり、「わかれ」という事実は事実として記し、できるだけ読者がさみしい気持ちにならないよう配慮し、「どんなにつらくてもかならずはるがくるよ」「はるになれば きれいなおはなばたけが みれるよ」と前向きになれるような物語にしたつもりだが、幼稚園児には難しかったようだ。一方、大人達からの感想は、「卒園を迎えるこどもたちに相応しい一冊」「子育てしていた頃を思い出す、優しい気持ちになれたよ。」などのお言葉を頂いた。

 講義の中で紹介された、「ベージック絵本入門」によると

5歳ごろには、見えないものについて考える力が大きく育つ。ストーリーを追うだけでなく、登場人物の気持ちを思いやり、作品のメッセージを自分なりに受け止めて読むことができる。科学絵本で自然の営みを知って驚いたり、ファンタジーの世界で空想の翼を広げたり、それぞれの個性と関心に応じて、絵本の世界を自在に楽しむようになる。 

『ベージック絵本入門』生田美秋・石井光恵・藤本朝巳著 ミネルヴァ書房

と記されている。
また、今回の翻訳の講義の中でミッキー先生がお話されていたことはとても勉強になった。絵本の翻訳で一番気を付けなければならないことは、子どもの目の付け所は大人と違うということ。大人は文章を聞いて主人公に集中するがこどもがそうとは限らない。ストーリーとは関係のない、主人公ではない絵の犬や鳥などに集中することもある。また、時の認知のお話も勉強になった。3歳と5歳の時の認知も異なる。3歳の時に初めて桜をみて春を認識する。その時はまだ春が巡るという想像はできない。翌年、さらに翌年に春を迎え桜を見ることで5歳になり四季の存在を認識していく。何歳の子どもだったら、どのような経験をしたら、どのような見方をするのか、絵と言葉の関係をしっかりと考えていく必要があるということを学んだ。

そして、わたしが過去に作成した写真絵本。経験や想像力が豊かな大人たちに物語のメッセージがある程度伝わることは当然である。しかし、肝心な読者の子どもたちへメッセージが伝わらなかったのは、作成段階で対象年齢の設定が曖昧だったことや、子ども目線になっての想像力や語彙力の乏しさがあったからだと思う。
貴重な時間を割いて読んでいただくからにはもっと良い本を作りたい。作品に込めたメッセージが伝わってほしい。そのためにはまずは、沢山の絵本に触れることからはじめ、表現力を身につけていきたいと思う。

Ⅲ.  絵本探究ゼミ 受講動機 ~看護の現場で絵本を活かす~

現在わたしは、高齢者施設の看護師として働いている。
今回、第一回目の講義に参加するにあたり選書した翻訳本を自身の感想とともに紹介する。

書籍情報 「わすれられない おくりもの」 評論社 1986年
スーザン・バーレイ 作/絵 小川仁央 訳 

命と向き合い、患者さんの死と遭遇する現場で働く私には欠かせない一冊。この本は、大切な人を失い悲しみに暮れている人へのサポート、「グリーフケア」で読まれる1冊であり、多くの病院や施設に置かれている名作である。喪失体験をされた読み手は、主人公のアナグマを自分の亡くした大切な人と重ね、また、自分を友人のモグラやカエルと重ね読みすすめるであろう。人が悲しみを乗り越えるプロセスには「ショック期」「喪失期」「閉じこもり期」「再生期」(※グリーフケアにおけるプロセス)があり、この過程を繰り返しながら長い時間をかけて受容を迎える。この本が多くの人に読まれ、グリーフケアに相応しい絵本として選ばれる理由について考えてみた。あらすじはシンプル。皆に好かれる主人公アナグマが老衰で亡くなり、友人の動物たちは悲しみに暮れるが長い時間をかけてその死を受けいれ、仲間たちと楽しい思い出話ができるようになるというお話。しかし、単純のようで奥が深い。誰もが死に対する恐怖心を持っていると思うが、このアナグマは死ぬことをおそれていない。また死はすばらしい夢の中からはじまり、動かなくなった足は走れるようになり自由になる。死は怖くないというメッセージが伝わってくる。そして、モグラがベッドの中で涙を流しているページのイラストレーションは、雪上に残された足跡が悲しみをより一層深めており、読み手は自分とモグラを重ね、涙をいっぱい流し絵本の物語とともに悲嘆のプロセスを進めていく。我慢せず、悲しみを沢山表出することの大切さを教えてくれている。そして時が経ち春を迎え、仲間たちとアナグマとの思い出が語り合えるようになる。ここでは、ひとりで悲しまず、同じ気持ちでいる身近な人と語りあうことの大切さを教えてくれているのではないか。そして最後の「ありがとう。モグラさん」と淡いピンクの空に呼びかけるシーン。姿は見えないけれどいつもそばにいる、見守ってくれている。前向きで温かな気持ちになれる締めくくりである。

医療、介護の現場では、グリーフケアのみならず様々な絵本が読まれている。わたしの働く高齢者施設でも、レクリエーションの一環として絵本を読み聞かせる時間がある。
認知障害を患っている高齢者はしばしばスタッフのことを自分の息子や娘、母親と認識している方がおられる。以前、私のことを「おかあさん」と呼ぶ90代の女性がおられた。体調を崩された時に「おかあさん、おかあさん」とギュッと握った手を離さず涙を流されていた。その時に、そばに付き添いながら一冊の本を読んでさしあげた。

書籍情報 「たんぽぽの おかあさん」金の星社 2017年
こんの ひとみ / 作 いもと ようこ / 絵

ずっと寂しそうな表情をしていたその女性は、わたしが絵本を読み始めるとみるみる表情が穏やかになり、読み終えたときににっこりと「ありがとう」とおっしゃった。その時の笑顔が今でも目に焼き付いている。
高齢者への絵本の読み聞かせはのメリットは、認知症予防、脳の活性化、心地よさなど様々であるが、この時は、心地よさを感じていただけたのではないか。
これからも、絵本と通して心地よさを感じていただけるよう、高齢者に相応しい絵本を見つけていきたい。そのためには、まず、沢山の絵本に触れていこうを思う。

Ⅳ. おわりに

ミッキー絵本ゼミの内容はとてもレベルが高く、絵本入門レベルのわたしにはとても難しく、一緒に学んでいるチームメンバーの先輩方にも申し訳ない気持ちでいっぱいである。
しかし、参加した以上、一つでも多くのことを学びたい。
まずは、チームメンバーが選書された絵本を読むこと。ミッキー先生が研究されている石井桃子について知るために、くまのプーさん、ピーターラビットを読むことからはじめる。
何事も最初からできる人はいない。目の前にある課題をコツコツとクリアしていけば、数年先にいつの間にか成長している自分がいる。
9年前、動物写真を始めたころに憧れていた写真家とは今では出版の協力者として著書に名前を載せてもらえる間柄になった。また、趣味の登山においては、極度の高所恐怖症でありながら、沢山の山に登ることでそれを克服した。夢だった北アルプス槍ヶ岳を踏破し、今では一般登山道最難関といわれている北アルプス剣岳を目標にするまで成長した。
人とくらべず、昨日の自分とくらべる。目の前の壁を着実に超え、行動しながら改善を繰り返す。このことをスローガンに絵本の勉強に励んでいきたいと思う。

カナディアンロッキー ジャスパー国立公園 メディスンレイクにて




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