柳川海月

柳川海月

最近の記事

[詩]コンプレックス

小さい背が ずっとコンプレックスだった それを君が 「お人形さんみたいでかわいい」と 笑って言った ほんのちょっとだけ 嫌な気持ちになったけど ほんのちょっとだけ この背が好きになった

    • 「No title」

      なあ少年よ 教えておくれ その純粋な 眼で見据える先は 幸か不幸か 善か偽善が

      • 「愛して」と言いかけて、 とっさに「る」と付け足した。 私の人生、 そんなものだと思った。

        • 幻【詩】

          「独りで何をしてるんだい」 街灯が声をかけました。 「死にゆく人を追いかけてるノ」 目を合わせずに僕は言う。 「懸命に走ってる人は懸命に死に向かってるノ」 誰よりも高く望んだ者は 誰よりも醜い最後を迎える あゝ、 夏の夜の鈴の声は まるで幻のように感じる。

          人工物[詩]

          空へ掲げられたランプ達は 暗くなると 黒いスタンドを無くします それを浮かんで見える人々が 星と名付けるので いつしかほんとうに 浮かんでしまったように感じます

          人工物[詩]

          幻影[詩]

          暗き夜には 明かりを食べて 私と一緒に 踊りましょ たんたかた たんたらた ステップなんて ふみながら 形すらも消えてしまうほど 明るき夜には 月を飲んで 私と一緒に 行きましょう たんたかた たんたらた スキップなんて ふみながら 原型すらも留めないほど

          少年[詩]

          教えてくれ、少年よ 曇りなきその眼で 見据えるものを 吁、神はなんと業の深きことをしたのだろう! この罪なき純粋な少年が いつしか、大人になってしまうなんて いつしか、世の中に絶望を覚える日が 来てしまうなんて

          故郷[詩]

          いつの日だろう あの記憶 草花の香の あの記憶 逃げ出すように ここに来て また逃げ出したい ここに来て 家も家族も 捨てたはず 今度は何を 捨てたいの? 嗚呼戻りたい あの記憶 嫌だったはず あの記憶 だけど幸せ あの記憶

          海[詩]

          波風よ 私をこのまま攫ってくれ 小鳥の籠に入れられた 私の心を一筋の光にして どこまでもどこまでも 連れて行ってくれ 波風よ 私をこのまま攫ってくれ この体を縛る鎖ごと 私の体を海に溶かして 永遠に永久に 連れ去ってくれ

          僕達[詩]

          夜に溺れる僕達は きっと誰の行方も知らずに 愛だけを追い求め続けて そしていつかは灰になる 嗚呼、哀れなものだな少年よ いつの間に人間は 道化なってしまったのだろう

          愛[詩]

          私の中は からっぽ 何も無い 本当に数十年 生きてきたのか疑われるほど 何も無い それなのに そうだったはずなのに 今はあなたがくれたものでいっぱい 忘れもしない はじめてあなたがくれた「愛」は カランと音を立てて 私の中に入れられた 私もいつか 何もなかった私もいつか あなたの中を 私からの「愛」でいっぱいにできるでしょうか

          月[詩]

          夜が森を食べて あたりが黒におおわれたとき 月がぽっかり顔を出しました。 夜の虫もなきやみ 蛍ももう力尽きたころ 月の頬は未だ虫に食われていました。 夜が森を消化したころ あたりはあおくあおく染まり けれども月だけは白くそこにありました。 何時間たったでしょうか 夜が森を食べたとき また月が顔を出しました

          夜[詩]

          月明かりに照らされる交差点を 横目で眺めながら 神様、僕は今日もひとりです。 夜の冷たい空気は 僕の耳元のおとをさらっていきます。 満点の星々は そんな僕を嘲笑でもしているのでしょう。 今日もあんなに楽しそうです。

          渡り鳥[詩]

          つぼみのクチナシ 顔を出し 酪農の雨 降り注ぐ 三分の桜と 山の香が 風に乗せられ 鼻を擽る この人気静まる 晩春に 散り行く春よ とんでゆけ 百羽の桜 燕となり 春に向けまた とんでゆけ 千羽の桜 燕となり 春が来たらまた 戻ってこい

          渡り鳥[詩]

          老夫婦[詩]

          ああ、たった今 思い出しました 貴方と会ったあの日は それはそれは 映画のように 綺麗な雨の降る 日曜日でした

          老夫婦[詩]

          初恋[詩]

          あなたの脳の中の 1パーセントでも 私が存在していれば 私はそれで満足なのです 私はそれだけで幸せものなのです