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第249回、タイム・ルーパー・バトルロワイアル


タイム・ルーパーである青年は、いつもと変わらない怠惰な一日を過ごしていた。
永遠に何も変わる事のない、退屈な日常の一日。
何をしても時間になれば、全てがリセットされてしまう世界。
永遠に明日が来る事のない世界。
今日もそんな何も変わる事のない、退屈な一日が始まるだけのはずだった。

だがその日は、何かが違っていた。
突然、青年に向かって、自動車が猛スピードで突っ込んで来たのだ。
それも一台だけではなく、次々と自動車は青年の方へ走って来る。
それはもう、ブレーキの踏み間違いと言えるような物ではなかった。
まるで殺意を持ってアクセルを全開に踏んでいるとしか思えない自動車が、何台も青年に向けて走って来るのだ。
青年はかろうじてそれを避ける事が出来たが、全速で走って来た自動車は、壁や歩道に衝突をして大破していた。
恐らく運転手も、無事ではないだろう。

青年は必ずしも毎日を、同じ場所で過ごしている訳ではなかった。
今いるこの場所も、ループしている世界では、初めて来た所だ。
だが、こんな自動車事故が予め決まっていたとは、とても思えない。
明らかに自分を意識して、自分をひく為に車を走らせていたようにしか思えなかったのだ。
だがそんな事が、あり得るのだろうか?
確かにループする世界の中でも、自分と関りを持つ事で、世界に変化が生じる事はある。だがこんな変化は、青年にとって初めての出来事だった。
何かがいつもと違う。

そう思った時に、道路の向こうから人が現れて、青年に話しかけて来た。

謎の人「あ~あ、避けられちゃったか。人間自動車ミサイルが台無しだよ」

青年「お前は、一体誰なんだ! これは一体どういう事だっ!!」

謎の人「初めまして、ルーパーさん」

青年は驚いた。相手は自分がタイムループをしている事を知っているのだ。

謎の人「そんなに驚かないでくれよ。同じルーパー同士なんだ、仲良くしようぜ。いや無理か、僕達神候補は、殺し合う事が定められているんだから」

青年「ルーパー同士? 神候補? 君は一体‥何の話をしているんだ!?」

謎の人「何だこの人、そんな事も知らずにループをしていたのかい?
君は僕達が、同じ一日をなぜループし続けているのか、その理由も知らずに今まで過ごして来たんだね。
自分が神様候補だという事も知らずに。まったくお気楽なものだよ。

いいかい、僕達ルーパーは、神になる為に選ばれた人間なんだ。
僕達は、このループする世界の中で殺し合いをし、最後に残った一人だけが次の世代の神として、ループの先の時間に行けるんだ。

神候補というからには、もちろん、ただ時間をループするだけじゃない。
それ相応の超常的な力を皆、持っている。
僕のは、人間操作能力さ。
操作を出来る範囲と時間は限られているけれど、車を運転している人間を、少し操作してやれば、こうして人間自動車ミサイルにする事も出来るんだ。
車があふれる都会の街中で、僕の能力に勝てる人なんているのかな?」

青年「人間操作能力‥恐ろしい力だ。だがわからないのは、なぜ神様選びの殺し合いと、タイムループをセットにする必要があるんだ。
ぶっちゃけタイムループ、いらなくないか?」

その時、目の前の建物が、前触れもなく、大きな音を立てて崩れ出した。

謎の人2「タイムループがいらなくないか‥ 全くのんきな野郎だぜ。
俺の能力は、物体破壊だ。視界にある非生物の物なら、どんな質量の物でも破壊をする事が出来る」

ご丁寧に、自分の能力を紹介してくれる、神様候補ばかりだった。

謎の人2「いいかい、神様候補同士のバトルは、常軌を超越しているんだ。
そんな激しいバトルを繰り広げれば、当然人や街も無害では済まない。
そんな神候補同士の戦いの痕跡をリセットする為に、ループはあるんだぜ。
どうだい、これ程、理にかなった理由はないだろ?
むしろこれまでの神バトルで、ループ設定がないのが、意外な位だぜ」

謎の人が、意味不明な事を話しだす。

青年「成程、これはとても理にかなった理由だ。この設定のアニメがヒットをしない訳がない。これを真似されたら、パクリ疑惑確定だっ!!」

青年も、おかしな言動を始めていた。

謎の人達「所でお前さんは、どんな特殊能力を持っているというのかな?」

青年「俺か? 俺は、俺の能力は‥‥ 」


電車に揺られながら、青年は自分の能力を何にしようかと考えていた。
このシナリオは、きっとヒットする。
青年はそう思いつつ、それ以上考えるのをやめる事にした。
どうせ時間が来れば、また昨日に戻るだけなのだ。
このアイデアが、世間に知られる事は永遠にないのだ。

ループする時間の中で、青年は次に行う犯罪を考る事にし直すのだった。

参考ブログ記述
第245回、T刑事の奇妙な取り調べ事件簿 その11 time looper
第248回、タイムルーパーの怠惰な一日

今回、適当なAI画像が得られなかっただけで、本画像と内容に、さほど関連性はありません。

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