喫茶店を出て街中を歩く

〇  :  美味しかったですね

筒  :  はい。また行きましょうね

〇  :  ぜひ行きましょう

とある川辺沿いに咲く紅葉が見れる所

筒  :  おぉ〜

〇  :  綺麗ですね

筒  :  よかったら写真撮ってみますか？

〇  :  じゃあやってみようかな

筒  :  はいどーぞ

〇  :  ありがとうございます

筒井さんからカメラを受け取り紅葉を撮る

〇  :  おぉ〜いい写真が撮れた

筒  :  ...

〇  :  まだ難しいな笑

筒  :  ...

秋は木や葉と同じ

別れの季節

私もその木々たちと同じ

大学で初めてできた彼氏

男性に興味がなかった私は

恋愛というものをしてこなかった

人を好きになることがなかった

でも初めて好きといえる人ができた

とてもかっこよかった

私とは違う明るい人で

いつも私に優しくしてくれていた

でも最初だけだった

付き合ってからの彼はとてつもなく変貌していた

私といてもすぐ違う女にいくしお金使いも荒い

時には暴力だってしてくる

私はそれに耐えられなかった

逃げ出したかった

勇気を振り絞り私は逃げ出した

どこかに行くあてもなく街中を彷徨う

カフェや喫茶店が好きな私

少し強いこだわりをもっていたものの

このカフェはなぜかいつもより魅力が引き立てられた

入ってみると"今"とは違う暖かさがあった

食べ物も美味しかった

なにより店員さんが優しかった

女子高校生らしき子と

同い年ぐらいの男性の店員さん

話した時からあの男とは違う優しさを持っていた

私はそんな彼に

"人生で二度目の恋をした"

あまり感情を表に出さない私はひっそりと恋焦がれていた

普段の彼の優しい話し方

性格の面の優しさ

話していて楽しい

学生生活を送っていてもこんな人出会ったことなかった

私は自分を助けてくれた人

これからも助けてくれる

安心して甘えられる

私は彼が好き

カメラを使っていい写真を撮るのに苦戦中

〇  :  さっきの筒井さんみたいにいい写真撮れないな〜笑

〇  :  難しいですね

筒  :  ...

〇  :  筒井さん？

歩いているときと同じく俯き黙っている

〇  :  筒井さん？大丈夫ですか？

筒  :  ...〇〇さん

〇  :  はい？

筒  :  ...

筒  :  私と...お付き合い...してくれませんか

顔を上げ真っ直ぐな目で喋る筒井さん

筒  :  まだ私たちはそんなに深まった関係ではないと思います

筒  :  ですが私は...〇〇さんのことが"好き"です

筒  :  この気持ちは本当です

〇  :  ...

筒  :  こんな私ですが...

筒  :  お付き合いしてくれませんか

〇  :  ...

思い切った私

〇〇さんは俯いた状態から

振り返り川辺の橋に手をつき紅葉を眺める

私も〇〇さんの隣にいく

〇  :  筒井さん

筒  :  ...はい

〇  :  まずは気持ちを伝えてくれてありがとうございました

筒  :  ...はい

〇  :  秋は別れの季節

〇  :  そう思ってる人が多いと思います

筒  :  ...私もそう思ってます

〇  :  俺はそんな風には思いません

〇  :  だって今こうして出逢えているんだから

筒  :  っ！

〇  :  ...

〇  :  風吹けば落つるもみぢ葉水清み

筒  :  なんですかそれ？

〇  :  凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)が歌った俳句です

〇  :  綺麗な川に落ちたもみぢの影が川にうつるぐらい川が鮮やかでもみぢと対照的

〇  :  と歌ったものです

筒  :  それがどうかしたんですか？

〇  :  ...筒井さんはこの俳句のように綺麗で鮮やかな心をもっていると思います

〇  :  そして俺はそんな筒井さんが好きです

筒  :  っ！

〇  :  俺はそんな筒井さんの心に惹かれました

筒  :  ...

〇  :  筒井さん

筒  :  ...はい

〇  :  長くなってしまいましたが

〇〇さんはこちらに体を向ける

〇  :  好きです

〇  :  こちらこそよろしくお願いします

続く