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【短編小説】春夏秋冬の記憶 最終話『春夏秋冬』

前話:第4話『冬』→https://note.com/vast_lotus157/n/nd979f887a8f0
 
 季節と記憶は連鎖している。春夏秋冬が始まれば過去の事を思い出す。

 春になれば、入学式、新生活、新しい友達、家族でお弁当を持って行ったピクニック。

 夏になれば、お祭り、海、バーベキュー、初めて恋人になった人との花火大会、大好きなお爺ちゃん、お婆ちゃんの笑顔。

 秋になれば、ご飯を食べすぎた姿、苦手なスポーツをする姿、折りが合わず友達と喧嘩をした時、家族で行ったキャンプ。

 冬になれば、雪で無邪気に遊ぶ姿、クリスマスのイルミネーション、お年玉を貰う正月、成人を迎えた成人式。

 季節を迎える毎に過去の風景を思い出し、その時の楽しい、嬉しい、悲しい、怒り、恋しいの感情や春ソングや夏ソングといった曲も思い出す。

 そして、再び春は訪れる。

詩 「琴音ことねーー!走ったら危ないよーー!」

 ネット通販で悩みに悩んで購入したフォーマルの服を着用した詩は大声を出す。桜並木の道で新品のランドセルを背負った琴音は嬉しいさの余りに大はしゃぎしていた。琴音がはしゃいでいる中、同じ小学校でこれから入学式であろう女の子が両親の真ん中で大人しく歩く。女の子は琴音を横目でチラッと見ると視線は再び真っ直ぐに戻す。

大地 「琴音!あの子に琴音が余りにも落ち着いてないから、幼稚園の子が間違えて来てるって勘違いされたな!」

 黒いスーツを着こなす大地にからかわれ琴音は頬をプクーっと膨らます。

琴音 「ちゃ、ちゃんと幼稚園のみんなと先生にバイバイしたもん!だから、ことね、今日から小学生だもん!」

 琴音がムキになっていると、風がサーっと吹き桜の花びらが目の前に落ちる。ゆっくりとひらひら落ちる桜の花びらの場所に琴音は両手を広げる。

琴音 「桜のお花ってきれい〜」

 開いた両手の上に落ちた桜の花びらを、琴音は目はキラキラと輝かせながら見惚れていた。

詩 「あーー!そろそろ入学式が始まっちゃう!」

 詩は右腕に身につけている時計を見ながら叫ぶと、大地も時計の時刻を確認する。

大地 「本当だ!よし、走るぞ!」

琴音 「はしるぞー!」

 詩と大地は娘の琴音を間に挟み手を繋ぐと入学式の会場へと笑いながら無邪気に走る。走っている間、ピンク色の幾つもの桜の並木道がずっと続く中、桜の花びらがゆらゆらと落ちる中、3人はずっと笑顔で走り続けていた。

 春夏秋冬が訪れるたびに、私の思い出は更新されていく。キラキラと輝く思い出もあれば、濁る思い出もある。

 楽しい事も沢山あれば、苦しい事も、辛い事も沢山あった。

 でも、それは……全て私の大切な思い出。

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