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短編小説 雪とこねこと子どもたち

ある朝、カーテンを開けると窓の外は、真っ白な雪の世界になっている。まるで別世界のように見える。
そういえば、昨日の天気予報で「明日は雪になるでしょう」と言っていたのを思い出した。どうりで昨夜は冷え込んだ。
幼稚園の年長組の光と小学二年生の明は、大喜びしている。東京ではめったに雪が降らないからだ。おまけに今日は学校も幼稚園もお休みだ。朝からたっぷり雪遊びができる。
朝ごはんもそこそこに明と光は、外に飛び出していった。家の庭で二人はカマクラづくりを始めた。
「大きな山をまず作ろう。雪を積み上げるんだ」
「うん、わかった。お兄ちゃん」
部屋の中まで二人の楽しそうな声が聞こえてくる。
ニャーゴは、ベランダの窓越しに座って、二人のことをじっと見ている。ベランダの窓から離れようとしない。ニャーゴがニャーア、ニャー、鳴きだした。
「ぼくも一緒に遊びたい」と言っているように見える。
 ニャーゴは夏に生まれた黒白ねこだ。パンダみたいな顔をしている。愛嬌のあるねこだ。生後七か月になっている。ねこは半年で大人になる。
 ニャーゴは、いつも子どもたちと行動を共にしていた。夜、子どもたちが布団を敷くときは、急いで寝る部屋に飛んでいき、子どもたちが広げたシーツにじゃれつく。
光がお昼寝するときは、一緒にソファで丸くなって寝ている。ニャーゴが光を寝かしつけてくれているみたいだ。おんなじ格好をして寝ている。
明が机で勉強しているときは机の上に上がっていた。ときおり、教科書を覗き込んでいる。光が絵本を読んでいると絵本の中に顔を突き出してくる。
 私はニャーゴに字を教えようかしらと冗談半分で思ったものだ。
 ねこはこたつで丸くなるというけれど、どうやらニャーゴは、外に出たいらしい。
 ベランダの窓を開けると、ニャーゴは、窓から弾丸のように素早く飛び出して行った。子どもたちがカマクラを作っているそばでうろうろしだした。ニャーゴは、生まれて初めて見る雪に興味深々。地面に鼻を近づけてふんふんにおいをかいでみたり、なめてみたりしている。前足で雪をかいたりした。
 出来上がったカマクラのてっぺんに明がニャーゴを抱き上げて乗せると、するすると滑り降りてきた。カマクラの中にも子どもたちと一緒に入っていった。
 かくして、二人の息子とニャーゴは、楽しく雪遊びをした。
 ニャーゴの足にしもやけができやしないかと心配したが、大丈夫だった。
 その夜、子どもたちとニャーゴは、ぐっすりと眠った。雪の好きなねこがいると思うとおかしくなった。


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