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Writing With Fire ~ 映画『燃えあがる女性記者たち』

Writing With Fire……なんと力強い言葉でしょう。
今公開されているインド映画『燃えあがる女性記者たち』の原題です。

まず本作の公式サイトから、作品の解説と取り上げられた新聞社についての説明を引用します。

<作品解説>
インド北部のウッタル・プラデーシュ州で、アウトカーストとして差別を受けるダリトの女性たちが立ち上げた新聞社「カバル・ラハリヤ」。
独立した草の根メディアとして、大手メディアが注目しない農村の生活や開発など地方自治の問題を報道し続けてきた「カバル・ラハリヤ」は、紙媒体からSNSとYouTubeの発信を主とするデジタルメディアとして新しい挑戦を始める。ペンをスマートフォンに持ちかえた彼女たちは、貧困と階層、そしてジェンダーという多重の差別や偏見、さらには命の危険すらある暴力的な状況のなか、怯まず粘り強く小さな声を取材していく。(中略)
(主任記者の)ミーラたちは、次々と生活の問題の先にある反社会勢力の存在や警察の怠慢などをあきらかにしていく。やがて、彼女たちの発信するニュースは、インド各地へと波紋のような広がりを見せるのだった――。

<「カバル・ラハリヤ」について>
「カバル・ラハリヤ」は“ニュースの波”という意味で、2002年にウッタル・プラデーシュ州チトラクート地区にて、ダリトの女性たちによって週刊の地方新聞として創刊される。
農村ジャーナリズムとフェミニストを掲げ、地域社会での差別、女性への暴力や性犯罪、ライフラインの不整備、違法労働の癒着と不正、拡大するヒンドゥー・ナショナリズムなど、地元の生活に立脚した草の根報道を続けている。2016年には、独自のビデオチャンネルを立ち上げ、デジタル配信へと移行する。現在、ウッタル・プラデーシュ州とマディヤ・プラデーシュ州の13地区で、30人の女性記者と地方通信員のネットワークを持ち、複数のデジタル・プラットフォームを通じて毎月500万人にリーチしている。
「カバル・ラハリヤ」公式サイトにはこう記されている、「あなたのニュース、あなたの声で」。(参照:Khabar Lahariya公式サイト)

このドキュメンタリー映画を紹介するのに適切な、分かりやすくまとまった文章なので、長いですがご紹介しました。

『燃えあがる女性記者たち』チラシ


多重構造の差別・偏見・危険に屈することなくジャーナリズム本来の役割に邁進する情熱を、まさに原題の「Writing With Fire 」が象徴しています。
そして映画では、燃えあがるような情熱にただ任せて突っ走るのではなく、手ごわい取材相手との粘り強い交渉や、記者仲間の育成(新人さんはスマホを触るのが初めてだったりアルファベットも知らなかったり)、デジタル化などの事業展開と、堅実に冷静に報道活動を進める姿を追っています。

特に印象に残ったのは、選挙取材が一段落した後、慰労会、懇親会のような場が設けられ、そこで楽しそうに寛ぎ、夢や目標を語る彼女たちの、希望の溢れる、生き生きした表情です。

また、終盤に出てきた
「将来『あの時あなたはどうしてたの』と問われても、私達は胸を張れる」という主任記者の言葉に、実績を重ねてきた誇りと自信を感じました。

分断を煽る傾向に乗せられてしまっては、「支配層」の思うつぼ。
「支配層」は「被支配層」が団結するのを恐れているから。
それは、インドでも日本でも同じなのだなと、観ていて痛感しました。
世界経済フォーラムが今年発表したジェンダーギャップ指数ランキングで、日本は125位、インドは127位です。
また、近年、「報道の自由度ランキング」が持続的に落ちるばかりの日本。
今後どうなるのか。
私たち一人一人の自覚と行動にかかっているのですよね!


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