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【創作童話】ダイジョーブ電話とラビ

ラビのお父さんは発明家でした。
今もラビの家にはお父さんが作った発明品が残っています。でもどれも変なものばかり。
 お父さんが亡くなってから、ラビは友だちと遊ぶのがおっくうになっていました。
今は、お父さんの残した発明品に囲まれて1人でのんびり暮らしています。
 ラビは自分は発明家ではありませんが、
色んな商売を思いつく天才だと考えていました。毎日新しい商売について頭を巡らせています。

 つい先日は
お天気あて屋さんを思いつきました。
「父さんが作った発明はちっとも当たらなかったけど、
『明日の天気は晴れ、時々曇り。ところにより雨。』これなら絶対はずれっこない。」

 でも、天気の予報を、お金を払って知りたがる人は残念ながら、この街にはいませんでした。
「せっかく、いい商売だと思ったのになあ。」

 次のいい商売はないかと考えながらラビは、
家でラジオを聴いていました。
「都会では、今、子どもになりすまして電話をかけるサギが多発しています。
あなたの街にも、いつそんな電話がかかってくるかもわかりません。気をつけましょう。」
 このニュースを聞いてラビは
ぴーんと思いつきました。
「子どもと電話をする練習をしていたら、サギに合わないかもしれないな。いい商売を思いついた。」


 ラビはさっそく家の前に看板を立てることにしました。幸いお天気あて屋をしていた時のものがありました。お天気あて屋の字に大きくバツを書いて、その下に、
「こどものフリ電話屋」と書きました。
サギに合わない練習をするためにかからない電話も置いておきました。
 ラビのお父さんが、落ち込んだ人を励ますために、話しかければ、ダイジョーブダイジョーブと返事してくれる電話を作っていました。
 今も受話器をあげるとラビのお父さんの声でダイジョーブ、ダイジョーブとだけ応えます。
 「父さんその通り。次の商売は絶対ダイジョーブ。」

「子どものフリ電話屋ですよー。
普段から子どもと電話する練習をして
サギに合わないようにしましょー。」
最初のうちは、自信まんまんに、道行く人に声かけていましたが、何日たってもお客さんはあらわれません。
 それどころか、隣の家のクマおばさんには
「いい加減わけのわからない商売はやめて、
うちの畑を手伝ってよ。うちには子どもがいないんだから」と叱られるしまつです。

 ある雨の日、そろそろ次の商売を考えようかと外の雨の音を聞いていたラビは
電話がダイジョーブダイジョーブというのが聞こえました。
「ここに来れば、都会にいる子どもと電話ができると聞いたんだが。」 
 お爺さんが雨の中立っています。
「すいません。違うんです。子どもと電話するフリをする電話屋なんです。その電話は、使えません。」ラビは、都会で流行っているサギの話をしました。

 お爺さんはガッカリしています。
「せっかく雨の中来てくれたのに、悪かったね。雨がやむまでここにいてください。」
 2人は雨がやむまで話をしました。

お爺さんの子どもは、都会で大きな建物を建てる仕事をしているそう。おじいさんの家は、以前から雨漏りしていて、いよいよ今日の雨でひどくなったそうで、屋根の修理の相談がしたかったんだと話します。

「なんだ。そんな事なら早く言ってくれればいいのに。僕が屋根に登って修理しますよ。
屋根の穴を見つけるって機械を持ってるんですよ。」

 ラビは翌日おじいさんの家の屋根の修理をしました。

 またある日のことです。
電話が「ダイジョーブダイジョーブ」と言いました。

「ここに、願いが叶う電話があるって聞いたんですが。」女の人が立っています。

「ちがいます。一体全体どうなってるんだ。」
ラビは都会で流行っているサギの話をしました。女の人はガッカリしています。

「私、仕事を探してるんです。あーまただめだった。私なんでも頑張れるのに。」

「なんだ。そんな事なら早く言ってくれればいいのに。隣のクマおばさんが畑仕事を手伝ってくれる人を探していますよ。」

女の人は大喜びです。「本当に大丈夫でしたね!。」

 それからというもの、ラビの家の前に置いてある電話は「ダイジョーブ電話」と呼ばれ、困っていることや叶えたい願いを話す人たちが毎日やって来るようになりました。

 ラビは、家の中から話を聞いては、お父さんの発明品と持ち前の商売っ気で、色んな問題や願いを叶えるお手伝いをしました。

 あんまり、忙しいので、友人達にも商売の手伝いをお願いすることにしました。
「やあラビ。誘ってくれて嬉しいよ。ぜひ手伝わせてもらうよ。」

困ったことがあればまず「ダイジョーブ電話屋に。」これがこの街のお決まりになりました。

ラビはすっかり自分が子どものフリ電話屋だった事を忘れていたある夜、電話がダイジョーブダイジョーブと言うのが聞こえました。

日が沈み暗くなった通りで1人のお婆さんがラビの電話に向かって、話しているのが聞こえます。

「『都会にいる子どもから、久しぶりに電話がかかって来て、事故を起こして困っている。お金を持って都会まで来て。』って。私どうしたらいいか分からなくって。」

 ラビはぴーんときて、外に飛び出しました。
びっくりするお婆さんにラビは言いました。
「お婆さん、その電話サギかもしれませんよ。よくダイジョーブ電話に話してくれましたね。」

 「父さんあなたは、やっぱり天才発明家でしたね。そしてぼくもやっぱり天才だ。」

ダイジョーブでんわとラビ   創作お話

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