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【創作童話】ぼくん家のトラベルエレベーター

①どうして僕の家は2階建てなんだろう。
3階建ての家の子もいるし、10階建ての子だっている。
10階建ての家の子は、エレベーターで登って、自分の家まで行くんだって。
いいなあ。僕の家にもエレベーターがあればいいのに。
今日学校で友だちと話したことを思い出しながら、お風呂に入った。

②お風呂から上がって、洗面所で歯をみがいてたら、いきおいよく妹が入って来て、ドアを閉めてこう言ったんだ。
「このエレベーターは300かいにまいります。」
「えー300階?スカイツリーより高いんじゃない?」
とつぜんエレベーターガールになった妹は得意そうに「そうですね。」と言った。

③「チーん300かいです。」
ドアが開くとそこは空の上。飛行機が目の前を通りすぎた。
「すごい。すごい。次はもっと高くに行こうよ。」
「かしこまりました。つぎはうちゅうへまいります。」
僕らは急いで、エレベーターになった洗面所のドアを閉めた。

④「チーん。うちゅうです。」
ドアが開いて、またたく間に宇宙に着いた。

⑤宇宙になったリビングを僕らは無重力で移動したんだ。
「こちらは、うちゅうです。ちきゅうがみえます。」
「地球はどれですか?」
僕がたずねると妹は机にのっていた小さな青いゼリーを指さした。
「地球はやっぱり青いんですね。でもまん丸じゃないですね。」
「はい。かたちはかわるんですよ。つぎはどこにいきますか。」
「次は下。海の中に行こう。」
「かしこまりました。うみのなかにまいります。」

⑥「チーん。うみのなかです。みずのなかなのでゴーグルをしていきましょう。」

⑦スイミングで使っているゴーグルをつけてドアを開けた。
「このうみはピンクいろです。」
「僕の海は青だよ。」
「いえ、ピンクです。」
妹のゴーグルはレンズがピンクで、僕のは青。
ピンクの海も面白いから、ピンクでいいよね。
「つぎはどこにいきますか。」
「もっともっと下、地底に行こう。」
「かしこまりました。ちていにまいります。」

⑧「チーん。ちていです。」
今度はお風呂側のドアをエレベーターガールが開けた。
地底から湧き上がるマグマが見える。

⑨僕はお風呂のお湯に手を突っ込んだ。
「なにやってるんですか。マグマはとってもあついのでおきをつけください。」
エレベーターガールが怒っている。
「でもこのマグマはとっても気持ちいいですよ。」
「そうですか。わたしもあたたまりましょう。つぎはどこにいきますか。」
「上下以外の移動も出来ますか。」
「もちろんです。」
「じゃあ、じーちゃんとばーちゃんに会いに行きたいな。」
「かしこまりました。じーちゃんとばーちゃんちにまいります。」

⑩「チーん。じーちゃんとばーちゃんのいえです。」
「じーちゃん!ばーちゃん!それに猫のまるちゃん元気だった-?」
「うんうん。元気だよー。2人の顔が見れて嬉しいよ。」

⑪僕らはタブレットごしに話した。
学校のこととか勉強のこととかなんだかたっくさん聞かれた。
「もしかして、時間の移動もできますか?」
「もちろんです。」
妹は当然っといった表情で自信満々に答えた。
「それじゃあ、ティラノサウルスに会いに白亜紀へ!」
「かしこまりました。はくあきにまいります。」

⑫「チーん。はくあきです。」
うっそうとしげる原始の森を僕らは歩いた。ドスッドスッドス。大きな足が見えたと思ったら、そこにはお腹を空かせたティラノサウルスが現れた。

⑬ティラノサウルスの人形を持った妹が僕を追いかけてくる。
「早く!エレベーターに逃げこまなきゃ。」
「あー。怖かったー。」
人形を持って追いかけて来た妹が言った。
まだ人形も手に持っている。
おかしくって僕らは大笑いした。
「過去に行けたんだから、次は未来に行ってみよう。僕らが大きくなる10年後!」
「かしこまりました。10ねんごにまいります。」

⑭「チーん。わたしたちの10ねんごのせかいです。」
ドアが開くと、そこは真っ暗で、なーんにもない。
「え?未来は?失敗ですか?」
すると聞いた事のない女の人の声がこう言った。
「未来は、今このしゅんかん、しゅんかんの決定の結果なんです。だから決まった未来なんってないんですよ。あなたたちがこれから作るもの。それが未来です。」

⑮「へーそうか。むずかしい事言うね。」
そう言って振り返ると、妹は洗面所に置いてある小さな踏み台の上に座って、眠っていた。
「いつの間に寝たんだ?それにさっきの声はなんだろう。」
僕もすっかり眠くなってきた。

僕たちはいつでも、どこにでも行ける。
あ。未来を除いてだけど。

#創作童話 #ショートショート

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