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遺産相続2 金の亡者たち 

母が亡くなってすぐに病院へ引き返す
ことになった私は、あまりのショックからか
物凄い偏頭痛に襲われた。
病室には家族全員がいた…らしい。
全くその時の事を私は覚えていない。

通夜の準備をしている時
実家に婿に入った次女の夫が、突然

○千万は貰わなきゃ困るからな~
新しい車も買いたいし

と言い出した。
咎める気にもならない程
私は疲れきっていたし悲しかった。

婿は結婚の条件として戸籍上父の息子に
なった…と、この争いの中で知った。
用意周到というやつだ。

夫と息子は唖然として呟いた。

今言うことじゃないよなぁ

妻である次女は何も言わない。ずっと
引け目を感じているのだろうか。
田舎の嫁らしくバタバタと一時も休まず
動き続ける。まるでそれが任務であるかの
ように。

けして仲の悪い姉妹ではなかった。
特に私は田舎が嫌いで飛び出した人間なので
出来る限り実家との付き合いは避けてきた。

交流が無ければいさかいの種も生まれない。

それにしても
最初に聞く言葉がお金…とはね。
血が繋がっていないとはいえ長年共に
暮らしてきた家族には違いないのに

ドライ過ぎるだろ。

葬儀のあと、直ぐに長女から電話があった。

やはり次女夫婦のことだった。私の知らない
家族の内情をこれでもかというくらいに
聞かされた。

実家を捨てた身の私は、父が亡くなった時も
相続分の放棄に迷わず印を押した。
夫も私もお金にはあまり執着が無いので
今回もそのつもりだった。
田舎の家を守るのは、それだけで
本当に大変なことだから。

でも長女の話を聞くうちに
私は何も知らなかったという現実に
向き合わなければならなくなった。

母は同居とはいえ食事はいつも一人
自分の部屋で食べ、会話も殆ど無くいつも
孤独だったと長女は言った。

しかも
次女夫婦はしょっちゅう泊まりで旅行に出掛け
湯水のようにお金を遣っていると。
父の残したお金がすでにもう無いのだと
長女は憤慨していた。

そう言われてみると、最近になってまた
次女の車が新しくなった。姪が大学生になり
数百万のお金が必要だとは聞いていたが
その全てを母が払っていたことも知った。

それでも
母が大切にされているなら、幸せを感じて
日々を過ごしているなら、お金の事は
多分気にならなかっただろう。

入院する直前、母は食べたものを
戻していたらしい。
何故その時に病院に連れて
行かなかったのか次女に聞きたかった。

次女夫婦は次の日から泊まりで旅行に行って
しまった。

私に責められたと感じたのか、旅行に行くことのどこが悪いのかと逆ギレされてしまった。

せめて、母の具合を案じて欲しかっただけだ。

何故突然
あんなに苦しんで亡くなったのか
真実を知りたかっただけだ。

姉達への不信感。

争いはもう止められない気がした。


















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