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【新日本プロレス】1997年⑤健介政権の夜明け…しかしリング上の話題はnwo一色

①FINAL POWER HALL in YOKOHAMA

長州引退記念ツアーとして、大きな箱を次々埋めていく強気な新日本。
長州・天龍・藤波トリオの初合体、小林邦昭とタイガーキングの合体など昔からのファンにはたまらないカード編成。

長州の試合後には、前田日明がサプライズ登場して花束を渡すサプライズ。
過去の顔面襲撃事件以来となる、公の場でのコンタクトでしたが、双方満面の笑顔。長州がロープを開けてリングに通して握手を交わしたシーンが印象的。
この場には、他にもアニマル浜口と、世界選手権に優勝したばかりの浜口京子も登場。引退記念大会を盛り上げました。
(セミ前なので、その後まだ試合あるんですけどね…)

セミでは小川直也がなんとスコット・ノートンとの異種格闘技戦に登場。
「異種格闘技戦」って言ってるから異種格闘技戦ですが、いくらなんでも土俵がプロレスすぎ…
どのくらいプロレスかというと、小川がノートンのパワーボムを完璧な形で食らってしまうくらい。
(間違いなく、この日一番の盛り上がりでした)
その直後、小川が変形三角絞め(アンダーテイカーのヘルズゲート・SHOのスネークバイトのような形)でノートンを失神させて大逆転勝利を飾りますが、いよいよ小川を本格的にプロレスとしての立ち位置に引きずりこもうと動き出しますが、この裏では現場監督である長州との軋轢がすでに生まれていました。

そして、メインはG1覇者の健介がIWGPヘビー級王座に挑戦。
ノーザンライトボムで健介が勝利。1年4ヶ月に渡る長期橋本政権に終止符を打ちました。橋本はこれが最後のIWGP王者となります。

以前も書きましたが、この時は長州プロレスが全盛で、健介はその正統後継者と目されていたことから、そのハイスパートレスリングも一定の評価がなされている時代だったのは間違いありません。

そのスタイルが批判、揶揄されるのはこれからもう少し経ってからのことです。

ともかくここから、IWGP戦線は健介政権がスタート。それは、三銃士という大きな幻との戦いでもあったのです…。

②G1クライマックススペシャル

この年のG1クライマックススペシャルの目玉は『3軍対抗タッグトーナメント』です。
※3軍=本隊・平成維震軍・nWo
まあトーナメントと言っても…
平田・木戸組 とか
飯塚・藤田組 とか

ちょっと勝てる見込みのなさそうなタッグも相当混ざってましたけど 笑

ここでも、注目はグレート・ムタの動向。
つまり「タッグトーナメント」という”ガワ”は見てる方もあまり注目していなくて『ムタはこのままnwoに残るの?裏切るの?』ということだけがこのトーナメントの存在意義だったのです。

で、決勝戦は健介・山崎vsムタ・天山。

このまま何もなくnwo優勝…というわけはなく、終盤にムタが天山に毒霧噴射!セコンドに付いていた蝶野がすかさずケンカキックでムタを排除(あまりにすかさず入ってきたので『ああ、蝶野もムタが裏切ると思ってたんだなぁ』と感心したものです 笑)

これで、ムタとnwoの空中分解は確実。今後どういった立ち回りをするのか注目が集まります

③格闘CLIMAX

せっかく異種格闘技路線に適正のありそうな選手がいるので、異種格闘技戦を軸にした大会を組もう、という興行。

メインは橋本が”ケンドーナガサキを秒殺した男”ジーン・フレジャーを迎え撃つ異種格闘技戦。
その他、ドン・フライと藤田の再戦。そして後に常連ガイジンとなるブライアン・ジョンストンが初登場し小川直也と対戦。

と、ここまで書きましたが、この日の興行も話題はnwoのモノになりました。

異種格闘技戦自体は、どれも好勝負となりました。
藤田がフライに肉薄しますます格闘技線への適正を見せ、ジョンストンは史上最高とも言われるSTOバンプを披露(笑)、そして橋本は打撃に苦しめられながらも関節技で逆転、というプロレスのリングにおける異種格闘技戦の理想形の試合を展開。

しかし、しつこいようですがこの試合の話題はnwoのモノです。

セミ前に組まれたタッグマッチ。
健介・山崎vs蝶野・ムタで事件がおきます。

ファンとしても「いや、なんでまだムタと蝶野組んでんだよ」という疑問もありつつ、ここが大きな転換点であることはファンも試合前からわかっていました。

一応、本隊 vs nwoの頂上決戦という形ではありましたが、この時点で先にやったトーナメントなど意味がなかった事がわかるマッチメイクで、この試合こそがこの時点での最強タッグ決定戦であることは明らか。

そんな中、蝶野のダイビングショルダーアタックがムタに誤爆したタイミングでムタが一人控室に帰っていく。
蝶野どころか、対戦相手の健介達までしばし立ち尽くしますが、蝶野が意地でこのハンディキャップで試合を続行。ローンバトルで奮闘します。

そして4〜5分たったタイミングで場内がザワつく…見ると、ムタが下がった控室から、今度はペイントをとってオレンジタイツになった武藤が登場!
この時点で場内歓声は大爆発。
そして、手につけていたnwoのリストバンドを叩きつけて蝶野に詰め寄る武藤…しかし、その矛先は蝶野ではなく健介に!
不意打ちのドロップキックからの波状攻撃でなすすべなく健介が武藤のムーンサルトプレスで3カウントを奪われることに。

ファンの中にあった「ムタ=nwo 武藤=本隊」というイメージを逆手に取った仕掛けで、武藤としてのnwo入りをよりドラマチックに展開したのでした。

いま振り返ってみても、数ヶ月に渡ったこのドラマは観客の心を掴む意味で本当によくできており(語弊のある表現でごめんなさい…)、これこそ当時WCWとWWFがリアルタイムで展開している『スポーツエンターテイメント』を意識した大胆な仕掛けだったように思います。
しかもこれを、間違いなく猪木の意向が生じているであろう異種格闘技戦を軸にした興行で持ってくるとは…。

この後ますます、格闘技路線を進めたい猪木と、プロレスをやりたい新日本との溝が深まっていくことになります…。



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