【新日本プロレス】1998年⑧蝶野最初で最後のIWGP戴冠

【RISING NEXT GENERATIONS IN OSAKA DOME】8.8

G1クライマックスからわずか一週間。余韻の残る中でのドーム大会。
この前年から、坂口征二によって「ドーム興行でのビッグマッチを軸にして、年間試合数を減らしていく」と宣言していたこともあり、ドームがストーリーの軸になります。

この日のメインは蝶野が藤波に挑戦するIWGP戦。蝶野は実に8度目のIWGP挑戦となります。
これまで、武藤(ムタ)、橋本とライバルである三銃士に先を越され、二人に対して挑戦者の立場で何度も挑みましたがいずれも敗北。更には後輩である健介にもIWGPでは先を越されており、ずっと悔しい思いをしてきたはずです。
インタビューでは「輝きのないベルトに興味はない」「あんなものが無くても俺はトップを取っている」と度々口にしていましたが、新日本で戦う以上、IWGPを目指していないはずがありません。
欲しくて仕方のない頂点の証だったことは間違い有りません。
藤波をしつこいSTFで捉えてギブアップ勝ちをおさめた後の、本当に嬉しそうな表情がそれを物語っていました。
勝利者インタビューで「デザインにセンスが無いよ。重いしね」と文句を言う蝶野の後ろに映る辻アナウンサーがニヤリと笑う姿がカメラを捉えているのが印象的でした。
結果的にはこれが唯一のIWGPヘビー級王座戴冠。
新日本の顔だった時期が何年もあるレスラーなので意外かもしれませんが、とにかく不運な怪我のおおいレスラーでしたから、長期的にコンディションを保つのは難しかったでしょう。
そんな蝶野のIWGP戴冠は、わずか1ヶ月。一度の防衛戦も行わないまま返上することになるのですが、それはまた後述します。

この興行では、他に「IWGPジュニアタッグ初代王座決定戦」が行われています。
いま、数々の名勝負を生んだジュニアタッグベルトは、このときがスタート。
人数こそ少ないものの『世界最高峰』というキャッチコピーで売出していた当時の新日ジュニアは、大エースで世代闘争の頂点にいるライガーがまだ33歳という若さで、大谷、金本、高岩らの新世代軍はまだ20代半ばということもあり、当時のジュニアは華やかさよりも激しさが前面に出ていた印象で、それがまた当時ヘビー級が行っていたストーリー重視の展開と良い対比になっていた印象です。
この頃、ヘビー級よりもジュニアの世代闘争のほうが面白いと思っていたファンも相当いたのではないかと感じます。
そんな気持ちが絶頂に来た所での、このジュニアタッグ王座新設なので、なかなか盛り上がりました。

G1クライマックスの最中にリーグ戦を行い、1位と2位でこの大阪ドームで決勝戦を行う、ということが決まっていました。出場チームは

①獣神サンダー・ライガー、エル・サムライ組
②大谷晋二郎、高岩竜一組
③金本浩二、ドクトル・ワグナー・ジュニア組
④ケンドー・カシン、安良岡裕二組

の4チームです。

個人的には、カシンと安良岡が仲間割れを起こしながらもお互いフォールされたらしっかりカットに入る感じとかすごく好きでしたが、決勝に上がったのは大谷、高岩組と金本、ワグナー組の2チーム。

金本とワグナーはこの年のベスト・オブ・ザ・スーパージュニアの優勝者と準優勝者という、元も子もないタッグチームですが、チームワークが驚くほど良く、安心してみていられるチームでした。
ワグナー自体も、元々誰と組んでもきちんと仕事をこなせる職人レスラーだったことに加えて、この数年で「新世代軍の長男」として若手を牽引してきた金本が、ただ激しいだけではない「チームを意識した試合」ができるように成長していた事も大きかったと思います。
一方の大谷、高岩組は同日入門の正真正銘の同期レスラー。早くからチャンスを与えられていた大谷に対して、燻っていた時期の長かった高岩は、これがようやく巡ってきたベルト戴冠のチャンス。
お互いが「このパートナーと初代王者になる」という事を意義の大きさを感じていたことでしょう。
試合は、想像通りハイレベルな攻防で、最後は大谷がワグナーをフォールし勝利。同期タッグが初代王者となりました。
喜びを爆発させてコーナーに向かう大谷が、抱きついて来た高岩のパワーに負けて逆コーナーに追い込まれていく様子が微笑ましかったです。

こうして、歴史を作った大阪ドーム大会が終わり、次は本編よりも長い「G1クライマックススペシャル」がスタート。1ヶ月の長いサーキットでもドラマがおきますが・・・これはまた次回。


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