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私に必要だったもの

「ダメになっちゃった。。。」
いい感じだと思っていた好きな人には彼女がいた。
傷口を掻きむしるように、友人にありのままの気持ちを垂れ流す。(あぁ、その時の私の顔、きっと恐ろしくブサイクだった。)
いつかは立ち直れるとわかっていても、しばらくは気を抜けば波の様に押し寄せてくる後悔をどうにか封じ込めることで精いっぱいの日々。
食欲の湧かない体に無理やり食事を詰め込む傍ら、私は今の自分を救ってくれる何かを必死にスマホに求めた。
Twitterで人気の恋愛アドバイザーの投稿を漁ると、そこには今の私に向けて言ってくれているんだとしか思えないような名言の数々。
「あぁなんて素敵な言葉。そうだなぁ、本当にそうだよねぇ。」
共感し、噛みしめ、心の中で何度も呟き自分の中に落とし込む。

続いてインスタを開く。
フォローしているインフルエンサーがジュエリーを販売しており、あと2日で受付を締め切ってしまうとのこと。
思い切って買っちゃおうか。お値段約20万。
数日前まではそこまで欲しいとも思っていなかったのに、なんだかそのキラキラしたダイヤモンドを無性にこの手に収めたくなる。
「だって。そうすれば。今の気持ちも少しは晴れるかも。」

そこでふと我に返る。

あれ?さっきのTwitterでの名言、どこ行った??
もう私の心の中には見当たらなかった。
人から借りた言葉は、しばらくすると味のなくなってくるガムみたいに、気づけば私の中で色を失っていた。
インフルエンサーのジュエリーも、欲しいといえば欲しい。
でもその時の私は溺れている人が必死に何かにつかまろうとして、夢中で上に手を伸ばしているのと何も変わらない。
でも待って。ジュエリーってそんなに手を伸ばしてとるものだっけ?確実に自分の目線より下から、鼻歌歌いながらとるものじゃないの?
Twitterの名言が素敵なのは、投稿者自身の心の中から出てきた言葉だから。
インフルエンサーのジュエリーが本人に似合っているのは、彼女が自分自身でデザインしたから。
ふと自分に問う。
今の私に本当に必要なのは何?
もし彼とうまくいっていたら辿らなかったであろう思考。

「あぁそうか。」

彼じゃない。私に必要なのは。

幸せの基準を他人の行動に委ねない自分。
例え転んでも、自分で手をついて起き上がれる自分。
多分、その地面に手をついた時の感覚が、自分で思っている以上に人生において大事なんだと思う。

彼に傷付けられたことも「蚊にさされたなぁ」ぐらいに思っていれば、傷口を掻きむしる必要もなくかゆみは収まっていく。
もしくは「私を失って損するのは彼の方なのに。。」と心から思えるようになれば、憂うという状況は同じでも中身は全然違う。

そうだよ、お腹もすいてきた。
何か美味しいものでも食べよう。







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