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#169 未来の学校が教えるべきは「信頼」を築く力である

教員は授業力があればよいのか?


教員は「授業が第一だ」と言われます。

僕は可能な限りの力を尽くし、
自信を持って授業を展開していますが、
「世界で一番優れた授業ですか?」と問われたら、
自信はありません。

あなたは、豊富な知識や経験に裏打ちされた、
無限の引出しを持ち、
子どもたちの興味関心を引き出しながら、
楽しませる授業ができているでしょうか。

自分自身に関して言えば、
間違いなく、
僕よりも優れた授業を展開できる教員は
いくらでも見つかるでしょう。

これだけインターネットが
発達した世の中なのですから、
世界で一番優れた授業を展開できる教員の授業を、
オンラインで見せられれば、
子ども達にとっても教員にとっても、
幸せな結果になると思うのです。

学校の存在意義は何か?


それでは、そこまでの授業力を持たない教員は、
存在意義がないのでしょうか?

オンラインの授業が展開されれば、
学校の存在意義もないのでしょうか?

そんなことはありません。

教員の存在意義は、
そして学校の存在意義は、
子ども達の身近に、
親以外の「大人」として存在することにあるのです。

等身大のありのままを見せるのです。
悩みつつも、一生懸命に生きる姿を見せるのです。

自らの教育観と、
学校教育の求める教育観の狭間に苦しみ、
社会的に求められる制限にも、
息苦しさを感じながら働く姿。

周囲の教員が求めるものと
自らの求めるものの違いに悩みながら、
それでもチームで足並みを揃えようとし、
ときにはそのあいまいさについて、
子ども達のそしりを受けながら、
苦悩して働く姿。

そして何よりも、
成長していく子どもたちの近くに、
「大人」として寄り添えることに、
楽しみや幸せを感じて働く姿。

大人も、子どもと同じように、
社会的な位置付けや人間関係に対して、
悩み、苦しみながらも、懸命に生き、
楽しみや喜びを感じている姿を、
そのまま見せる。

こうして生まれる人間同士の結びつきこそ、
社会の縮図である学校の、
そしてそこで生活する教員の、
存在意義なのです。

「信頼」をどのように教えるか?


学校と言う閉ざされた空間に
適応できない子どもが一定数います。

そういった子どもに登校を強要するのは
明らかに間違った指導です。

しかし、社会の縮図である学校という空間で、
悩みながらもコミュニケーションを取り、
適応していくという、人間同士の結びつきは、
社会で生活していくうえで、
必要なスキルや経験でもあります。

これらコミュニケーションの元となるスキルや経験を得ることは、
「信頼を得る」と言い換えてもよいでしょう。

人とかかわり、信頼を築いていく過程は、
身に付けていかなければならないものです。

教員が学校で教えるべき究極の資質は「信頼」なのです。

社会的な「信頼」が求められている


教員の中には、
他者とのコミュニケーションがうまく取れなくとも
何かひとつでも尖った才能を磨き続ければ
それでよいのだと公言するものがいます。

確かに今までは、
突出した能力があれば、
大きな発明をしたり、
それに伴ってお金を稼いだりと、
活躍することができました。

Web2.0の覇者である、
GAFAMが台頭している現代を見れば、
その在り方は明らかです。

IT方面に優秀な能力を注ぎ込んだ結果、
上記の企業は莫大な富を築きました。

しかし、今後も同じ事が続くのでしょうか。

優秀な若者たちは、
もはやお金よりも大切なものを求め始めています。

それは社会的な意義が
その企業に存在しているかどうかということです。

言い換えれば、
その企業の社会的な信頼が
どの程度存在するのかということです。

今後の社会で求められるのは、
一芸に秀でた能力というよりは、
「評価」や「信頼」をどのように集めるかという
能力になるでしょう。

未来の学校の在り方


Web3.0が浸透した未来においては、
お互いの顔がまったく分からない・・・、
そんな組織の中でもコミュニケーションをとり、
仕事をしていくことになるでしょう。

ノンバーバルの情報が薄い
コミュニケーション環境において、
大切なものは何でしょうか。

それは信頼感です。

相手の思想や目標、
これらに伴うこれまでの活動。

そういったものの中に、
信頼に足る何かを見つけたとき、
顔の見えないコミュニケーションが成り立つのです。

対面でのコミュニケーションが少なくなる未来では、
今まで以上に、評価や信頼を築く難易度が上がるでしょう。

ゆえに、未来の学校において、
子ども達に教えなければならない最も大切な内容は、
社会的な信頼を得るための、
思想や目標・目的といったものを、
どのように見つけ、獲得していくかということ。

そして、相手との信頼を築くための、
バーバル・ノンバーバル含めた、
豊かなコミュニケーションスキルを磨くこと。

これらを、
教員が身をもって体現していかなければならないのです。

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