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美術オタクがパリ旅行で見たいものリスト

パリひとり旅まで約2ヶ月。
目的の9.5割は美術館で、とにかく見たい絵画やら彫刻やら建物がたくさんあります。ありすぎて困る。
モナリザ、モネの睡蓮、サモトラケのニケ、オペラガルニエのシャガールの天井画など定番も勿論ですが、美術オタクの私が我ながら「ニッチだなあ」と思う見たいものをいくつかご紹介します。いくつ叶えられるだろうか!


ルーヴル美術館にある、マリー・アントワネットの最期を描いた素描

フランス革命で処刑されたマリー・アントワネット。
処刑台があるコンシェルジュリー広場へと向かうマリーをジャック=ルイ・ダヴィットという画家がスケッチしたのがこの素描です。

私たちが持つ、もしくは数々の肖像画に残される豪華絢爛で華やかなマリーのイメージとは対極にあるような老け込んだ彼女。しかし背筋はしゃんと伸び、横顔からはこれから起こることへの悲しみや恐怖はなく毅然とした覚悟が伝わってきます。
この絵の存在を知った時、盛りに盛って取り繕った肖像画では決して汲み取れない生々しいマリーがこの線に全て詰め込まれているようで「何がなんでもこの目で見たい」と思いました。

やりたい放題な印象の強いマリー・アントワネットですが、史実は異なる部分も多くあります。決して生きやすくなかっただろうフランス王宮という異質な場所で懸命に自分を保とうとした少女、女性の哀しい生涯を知るとヴェルサイユ宮殿や彼女の肖像画もまた違った見え方をしてきます。
「怖い絵」シリーズで有名な中野京子さんが訳されたこの伝記はとても読みやすくおすすめ。

素描は繊細であるため展示はされておらず、ルーヴル内の素描室の入館予約をすることで見られるそう。

ロダン美術館にある、ゴッホの「タンギー爺さん」

タンギー爺さんとは当時のパリで画材屋さんを営んでいた男性。彼は駆け出しの画家に理解があり、画材代を払えなくてもツケにしたり、描いた絵を店に置くことで支払いの代わりにしてあげることもあったと言います。
今では名の知れた多くの印象派画家が無名の頃から彼の店に出入りしており、ゴッホも彼から画材を買っていました。親交が深く、タンギー爺さんはゴッホのお葬式に参列した数少ない人物のひとりでした。

背景に浮世絵のモチーフがたくさんあって、ゴッホの日本好きがとても感じられる素敵な1枚。この作品が彫刻で有名なロダン美術館にあるなんて意外ですよね。


ゴッホの描いた景色 オーヴェル・シュル・オワーズ

パリから電車で1時間弱、オーヴェル・シュル・オワーズという地があります。ここはゴッホが亡くなるまでの最期の時間を過ごした場所で、ここの景色を描いた作品が多く残っています。

「緑の麦畑」フィンセント・ファン・ゴッホ
「オーヴェルシュルオワーズの教会」フィンセント・ファン・ゴッホ

この教会は今でもそのままの姿で存在しているそう。この角度で、目線で、同じ教会を見たい。

オーヴェル・シュル・オワーズにはゴッホと弟のテオが隣どうしで埋葬されているお墓があります。ここに行くことも今回の旅の大きな目的の一つ。

オルセー美術館のアンリ・ルソー「婚礼」「ヘビ使いの女」

私の中でアンリ・ルソーの作品は、癒しであり肩の力を抜かせてくれる存在。平面的で遠近感はなくみんな真っ直ぐ前を向きなんともシュールな表情。
絵画の魅力は「上手い」だけでは決してなく、いかに新しい価値観を吹き込んだかというところにもあると思っていて、そういう意味でアンリ・ルソーは間違いなくそれまでの「上手ければ上手いほど良い」という凝り固まった概念をぶち壊してくれた存在なのは間違いない。(褒めてます)

「婚礼」は、真っ白なドレスを着た新婦がう・・・浮いてる?ように見える作品。勿論彼は大真面目に描いている。

「婚礼」アンリ・ルソー

そんな異質な画風の多いアンリが描いた「蛇使いの女」。
色使いといい女の妖しさといい細かく緻密に描き込まれた木々といい、「え、本気出してきた…」と身震いしてしまう一枚。この対比を同じ美術館でできるなんて贅沢!!

「蛇使いの女」アンリ・ルソー

オルセー美術館のフランソワ・ポンポン「シロクマ」

常識をぶち壊したターニングポイント的な作品は、絵画だけでなく彫刻にも。
彫刻といえば思い浮かべるのが、筋肉隆々でドラマティックなポーズをとり、布や血管の細部までリアルに掘り込まれた人間彫刻ではないでしょうか。そんな「上手ければ上手いほど、リアルであればあるほど、緻密であればあるほど良い」といった概念から離れて、とことんシンプルを表現したフランソワ・ポンポンの「シロクマ」は当時の衝撃をさらったに違いありません。

シンプルなのに躍動感のある造形や見飽きない愛らしさ、そしてこれは本物を見ないとわからないだろうけど、絶妙なホワイトの色味やツルツルなのに滑らかで艶やかな毛並みが見えてくるような不思議な質感も魅力なのだそう。

キュリー夫人が眠るパンテオン

美術ではないけどこちらも。
パンテオンとは「万神殿」を意味する言葉で、パリのパンテオンの地下埋葬所にはフランスに貢献した偉人たちの墓所があります。
ここに眠る偉人のひとりが、放射能やラジウムの研究を行い女性初のノーベル賞受賞者となったマリー・キュリー。「キュリー夫人」です。
パンテオンでは、マリーが大好きだった夫ピエールと一緒に眠っています。

小学生の頃大好きで読み尽くした小学館の「学習まんが人物館」シリーズ、その中でも特にお気に入りだったキュリー夫人。
数々の逆境や悔しい悲しい想いにもめげず、真面目に愚直に勉強や研究に励む姿は小学生の私の心にめちゃめちゃ刻まれていて、まんがの中のたくさんのマリーの描写は今でも鮮明に思い出せる。(絵が可愛い、っていうのも多分ある)

あれから十数年経って、自分が放射線の仕事をしているなんてなんか感慨深いなあ。

まんが人物館シリーズ、特に好きだったのはこのキュリー夫人とジャンヌダルク、ヘレンケラー、ダイアナ、アンネ・フランク、そして杉原千畝。
私の世界史好きはこの学習まんが人物館で形成されたと確信してる。

最近よく見ているパリガイドさんのYouTubeがあって、その中で彼は「知識があれば、見えないものが見えてくる」とよく話されています。
これは本当にそうで、作られた内容・背景・当時の歴史を知ると美術は何十倍も面白くなり、興味の幅が超広がります。
(実際私もフランソワ・ポンポンをきっかけに彫刻への興味が最近すごい)

フランス旅行に予定がある方、定番観光からもう一歩足を踏み入れたい方の参考になれば嬉しいです。


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