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バッファローマン 炙り

 息子がガチャガチャをやりたがるお年頃になった。最近のガチャガチャは500円とかするんですねえ…でも息子はさいきん野菜もトイレも歯磨きも頑張っているし、お父さん奮発しちゃいます。ゑゐ!500円玉が入らねえ!なんだよ100円玉5枚じゃないとダメなのか。じゃあコンビニで蒙古タンメン 中本でも買うか…
「お父さん!抱っこが先でしょ!」
ごめんごめん!抱っこが先だね~よいしょ。まだセメント袋(25kg)より軽いね~。100mほど離れたセブンイレブンで蒙古タンメン 中本のカップラーメンを買ってカネを崩し、いざガチャガチャ。ねえ息子くん、本当にこの

「鉄道コレクション 群馬県」

でいいの!?いいのね!?
ガチャコン ガチャコン コロン。

出ました


──さて、子供はガチャガチャが大好き(蒙古タンメン 中本を食べながら)。とにかくわたしもガチャガチャが大好きな子供だった。当時ガチャガチャは30円でわたしはスーパーボールやスーパーカー消しゴムをやった。
ある日友達何人かと遊んでいた時、一人がその辺にあった石を入れてよく分からないガチャガチャを回してみたら、コロンとカプセルが出てきた。
「やった!なんか出た!」
カプセルを開けると中には頭がクモで体が原始人の不気味なゴム人形が入っていた。これは悪い事をしたからDELL呪いの人形だ!
「ウワー!」
「ウワー!」
罪悪感も手伝って、蜘蛛の子を散らすように逃げるわたしたち(後に駄菓子屋さんのおばあさんに謝罪)。そしてそのゴム人形は「キン消し」と呼ばれているやつで、頭がクモで体が原始人の奴は「クモノコチラス」という名前の「超人」だとあとで近所のお兄さんに教えてもらった。意味はわからなかった。
そう、「キン肉マン」とわたし(たち)との出会いは、いきなり街角に現れた謎のガチャガチャからだったのである。少なくとも茨城県北部のある地区の昭和50年代生まれにとっては。
瞬く間にキン肉マンブーム!ガチャガチャからジャンプコミックスへ。くる日もくる日もキン肉マンがある家に集まりみんなで肩を寄せ合って何回もキン肉マンを読んだ。わたしの好きな超人はバッファローマンだ。ハリケーンミキサー!わたしはバッファローマンのキン消しが欲しくてたまらなくなった。母のお手伝いをして30円もらってはガチャガチャをやりに駄菓子屋さんへ。しかし出るのはクモノコチラスばかり。またかよ!ある日祖母の肩たたきをしたら100円もらった。そしてためしに大きい100円のガチャガチャをやってみたらガチャガチャコロンと出てきたカプセルの中に角が見えた──バッファローマンがカプセル狭しと力強くギッチリ丸まって入っている!
「アッ、バッファローマンダ!!」
ヤッター!喜び勇んでカプセルをパカッと開けると、丸まったままのバッファローマンが地面にポトリと落ちた。

バッファローマンが丸まったまま直らねえ!!!!

まるで炙ったイカのように。

──それからのわたしは、くる日もくる日も、バッファローマンをまっすぐにするため努力した。お風呂に一緒に入ったり、母のドライヤーを熱くなるまで当ててみたり、酢に浸けたり。しかし、バッファローマンは丸まったままだった。
わたしが
「バッファローマンがまっすぐにならない!」
と言って泣いていると、見かねた近所に住んでいる父の弟(叔父)が、
「1ヶ月ぐらいバッファローマンの上にオモリを載せておいたら真っ直ぐになるよ。」
と言った。

1ヶ月後

長かった・・・
バッファローマンの上に積み重ねられた、叔父からもらったエレベーターのカウンターウェイト(日立エレベーター勤務)。今、叔父の手により1つ1つ撤去されてゆく・・・最後のいっこ。
叔父「ヨイショ!」

QURULI


バッファローマンが秒で丸まった。

おわり



(後日談)
「ウワー!」火がついたように泣き叫ぶわたしを見かねて、叔父は、父がブラック・エンジェルスを読むため購読していたジャンプのキン肉マンを丸々一話分鉛筆で模写し、わたしにくれた。意味は分からなかったが、泣きやんだ。





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