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そんな服を着ていたら鉄砲で撃たれてしまう

 クリスマスにはでっかいおもちゃをプレゼント!わたしは息子の趣味嗜好を反映させ、でっかいトミカ整備工場を選びました。喜んでくれてよかった。ガッツリブルーカラーなのは父ゆえか。妻にはノースフェイスのでっかいブーツをプレゼント。よく似合っているよ…さてわたしが3歳の時のクリスマスの朝、枕元にあったのはトリガーを引くとマシン・ガン・サウンドと共に薬莢がポコ・ポコ飛び出るでっかいM-16ライフル。父はわたしが普段から父の「ゴルゴ13」をエロ・殺人シーン目当てで盗み読みしてこうふんしていた事を知っていたのでしょうか。。おかげでこんな大人になりました。

すべてを破壊する…



 さてわたしはいつもクリスマス時は主にイナリズシをたべながら平穏に過ごしてきたのだが(何でもないような事が幸せだったと思う)、上京してきて最初のクリスマス、埼玉にある寮に住んでいた頃、同じ寮の友達がみんな「クリスマスは彼女と会う」と言っていたので、わたしは「俺もクリスマスは彼女と原宿でデートする」と言った。当然彼女などいない。

川越から東武東上線で池袋。道中冬なのに何度も額の汗を拭った。

そして原宿。夕闇迫る表参道に灯る色とりどりのイルミネーションが列をなす高級車に乱反射し、腕を組んだ恋人たちを赤や青や白金に輝かせる様はまるで新しい銀河のようだった。
そんな中ねずみ色に黒という灰皿のようなコントラストの服を着て1人額に汗をかきながら意味なくほっつき歩くわたしはイルミネーションの光を吸収し、影さえも存在しない暗黒物質と化した。

服は上京前に水戸のマルフルで買った精一杯のおしゃれ服だった。その時、最初は茶色いスウェードのジャンパーにしようと思ったが、母に
「そんなの着でたら高木ブーに鉄砲で撃だれっちまうべよ~」
と言われるのがありありと頭に浮かんだのでねずみ色のジャンパーにした。くそっ

あの時スウェードさえ買っていたら!
俺にも彼女が出来ていたというのに!

と思った。でも俺にとって母に「高木ブーに鉄砲で撃だれっちまうべよ~」と言われるのはこの上ない屈辱だったので良かった。いや良くなかった。どっちにしろ彼女もできなかったと思った。まあせっかく原宿まで着たので、服でも買うかと思って何気ない古着屋で店頭に吊るされていたジーパンを見たら「¥58,000」と書いてあったので川越に帰った。

おわり

補足:わたしの地元は散弾銃での狩猟が許可された地域なので、秋の狩猟シーズンになると猟犬を連れた高木ブーさんが散弾銃を担いで歩いているので、親たちは「そんな服を着ていたら高木ブーに鉄砲で撃たれてしまうよ。」と言って子供にパッと見動物っぽい服や迷彩色の服を着せないよう戒めていた。

民明書房






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