見出し画像

#50 ジャン・コクトーによる動詞『aimer ・愛する』の活用・人生を語るフランス語

stand.fmで紹介した言葉と収録内容の概要です。
音声はこちらからどうぞ。 
https://stand.fm/channels/5fafb858c646546590cea001

YouTubeでもお聞きいただけます。

**********************************

Le verbe amour est difficile à conjuguer ; son passé n’est pas simple, son présent n’est qu'un indicatif et son futur est toujours conditionnel.
 
「愛する」という動詞の活用は難しい。
過去は複雑で、現在はひとつの目安でしかなく、未来は常に条件付きである。

**********************************

この言葉を目にしたとき、なんて独創的で、面白いのだろうと思いました。
フランス語には、jeu de mots ( 言葉遊び)があるのですが、まさにその良い例だと思います。
ここでは、一つの言葉が持っている、異なる意味合いを使った掛詞(かけことば)で遊んでいると言えるかと思います。
 
動詞の活用形を表す単語の意味には、文法的な活用の意味と、一般的な意味があり、それらを絡めて「愛する」の過去、現在、未来、を定義しています。
 
まず最初のフレーズ  “son passé n’est pas simple, “ (過去は複雑で)。
このフレーズでは動詞の過去形の活用のひとつ、passé simple (単純過去)の活用を持ち出しています。
simpleというこの形容詞には、「単純な、理解しやすい、シンプルな」  という意味もあります。直訳すると「過去はシンプルではない。」
これを「過去は複雑である。」という表現にしてみました。
次のフレーズ “son présent n’est qu'un indicatif, “ (現在はひとつの目安でしかなく)。
ここで使われている単語、indicatif は、文法用語では、「直接法」のことです。
一般的な意味では、「指標となる、ひとつの目安になる。」という意味です。
「今、愛しているという現在はひとつの目安でしかない。」
そして最後のフレーズ ”son futur est toujours conditionnel.”(未来は常に条件付きである。)
conditionnel 、この単語は、文法では、「条件法、~だったら」という条件がつく言い方です。そして一般的な意味では、「条件付きの」という意味です。
 
最初に ”Le verbe amour est difficile à conjuguer.” (愛するという動詞の活用は難しい。)という表現から始まっているので、動詞の活用として過去形、現在形、未来形がまず頭に浮かびつつも、先ほどの言葉を読み終わった後には、読んだ人の胸の中には、愛した過去、愛している今、愛するであろう未来を感じ、コクトーの言っていることに、うんうん、と頷いたのですが、
皆さんはどう思われるでしょうか。

コクトーのこの 言葉、jeu de motsとフランスのエスプリたっぷりの洒落た言葉だと思いました。

コクトーは、詩人、劇作家として有名ですが、彼には絵の才能もあり、好きなアーティストの一人です。
彼は絵の描き方もとても独創的で、かなり昔になりますが、Bunkamuraでコクトーの絵の展覧会があり、その時に買った画家のパウル・クレーの自画像は今も大切にしています。

南仏の街、ヴィルフランシュ=シュル=メール(Villefranche-sur-Mer)
にある教会、サンピエール礼拝堂は、1957年にコクトーが礼拝堂の修復・装飾を行っています。彼の絵も見ることができるこの礼拝堂を紹介した動画です。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?