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【本編まとめ読み】『ナイキスTAS』5節「勇気ある前進」

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夢月「俺がヨウタの治療をする、だって……!?」
吏星「見たところ繋がれたパイプは完璧だった。お前なら拒絶されずにヨウタ少年の夢の世界へ入れるはずだ」
夢月「む、無理だよ! 俺まだ一度も夢の世界に入れたことないんだぜ!? 子供の治療はただでさえ難しいんだろ!? いきなり俺にできるわけ……」

蓮夜「嫌なら"やらない"という選択ももちろんある。けど、夢月ちゃんがやらなきゃヨウタ君の夢魔を祓える保証はない。最悪あの子の治療を諦めるって言うなら、無理にとは言わないんだけどね」
夢月「そ、それは……」

夢月「……ほ、他の夢想師に応援を頼むっていうのは!? 俺みたいなことが得意な奴もきっといるだろ!?」
吏星「無理だろうな。香澄周辺の患者は、夢うさぎで受け持つのが原則だ。それに、応援に来たところで成功するか分からん施術だ」

吏星「自分達の面子を潰すような仕事を喜んで受ける奴など、いないだろうな」
蓮夜「失敗したら責任問題になるからね。うちのマスターだって貧乏くじ引いたと思ってるよきっと」

そら(他の夢想師も各地方に拠点を構えてるとは聞いていたけど……利権争いみたいなのも、やっぱりあるんだな……)

夢月「ううう、マジか~」
蓮夜「……夢月ちゃん。夢想師の施術っていうのは、誰しも最初から完璧にできるわけじゃない。才覚があっても、全てを1人でこなせるようになるまで20年以上かかった人もいたらしい」
夢月「に、20年……!」

蓮夜「でもね、そういう人達に共通していたことがあるのも分かってる。それは何だと思う?」
夢月「え……? やっぱ……勉強不足?」

吏星「自分自身と、向き合わなかったことだ」

夢月「え?」
吏星「そういった者達は失敗を恐れ、夢魔を恐れ、そしてできない自分を恐れた。その自分自身の弱さに気付こうとすらしなかった。だから成長することもなかったんだろう」

蓮夜「夢想師の仕事は技術じゃない。大事なのは心の在り方さ。挑戦し克服する心を真に持てない者は、何も為すことができないんだ」
夢月「…………」

蓮夜「……その点、夢月ちゃんは心のパイプを繋ぐところまでは完璧さ。これはきっと夢月ちゃん自身の"誰かの力になりたい"って想いが、そのまま夢想師の力としてまっすぐに体現されていることに他ならない」

吏星「夢空間の現出は、自分自身との戦いだ。逃げなければ必ずできるようになる。……本来であれば他人を真に想うことの方がずっと難しいんだ。少なくともお前にはそれができている」

吏星「だから、案ずることはない。これを1つの良い機会だと思ってやってみろ。……責任は重いがな」

夢月「うう……うううーーー…………!!」

そら「……やってみようよ夢月くん。私もできる限りサポートする」

そら「夢月くんならきっと、できるようになると思うから。夢月くんに治療してもらった時のあの温かい気持ち、私は忘れてない。これからもきっと忘れない。だからもっと自分に自信を持って大丈夫。施術を受けた私が言うんだから間違いないよ!」
夢月「そら……」

そら「それにさっき言ってたじゃない? えっと、恐がることが駄目なんじゃない――」
夢月「――逃げることが駄目なんだ」
そら「そうそれ!」

夢月「ブレイブテイカー……」

そら「…………」
夢月「……そうだな。ヨウタが勇気を出して頑張るって言ってくれたのに、俺がこんなんじゃ駄目だよな」

夢月「……分かった。俺、やってみる」
そら「夢月くん……!」
夢月「ありがとう、そら。おかげで目が覚めたよ。俺が絶対、ヨウタを悪夢から救い出してみせる」

夢月「……そうだ! 俺があいつのブレイブテイカーになってやらなくちゃな!!」
そら「その意気だよ! 夢月くん!」
夢月「ヘヘッ! サンキューそら!」

吏星「何やら方向性がよく分からなくなってきたが……。早乙女がやる気になったのなら……まぁ良いか」
蓮夜「ねぇそれよりさ、そらちゃんって、本当にブレイブテイカーってやつ見てないと思う?」
吏星「知るか! どうでもいい!」

夢月「吏星! 蓮夜! 俺やるよ! まずは何から始めたらいい!?」
吏星「……悪いが1日だけ時間をくれ。俺達も何を教えるべきか考えなくてはならんからな。早乙女と天崎は先に帰って休むと良い。今日はご苦労だった」
夢月「OK分かった! 俺も明日までにしっかり準備しておく!」

吏星「あまり気負いすぎるなよ。施術は平常心が基本だ」
夢月「分かってるって! ――それじゃな、そら。また明日」
そら「うん、お疲れ様。私も失礼しますね。お2人とも無理しないでくださいね」
蓮夜「フフッ、ありがとうそらちゃん。お疲れ様」

吏星「……ふう」
蓮夜「さぁ2人きりで熱い夜を過ごそうか」
吏星「ふざけるのもいい加減にしろ。この大変な時に」
蓮夜「僕は真剣だよ。むしろ熱くなっちゃうのは、吏星の方だと思うけど?」

吏星「……何か知っているのか?」
蓮夜「…………」
吏星「話せ」
蓮夜「……分かった。僕の見立てでは――」

吏星「何だと……」
蓮夜「可能性は高いと思うよ」
吏星「確かに辻褄は合うが……そんな文献はどこにも……」

蓮夜「記述なんてのは過去の偉人が残した、彼らにとって都合の良い歴史さ。口伝でしか伝わっていない真実もある。存在しないことこそがその証明、だと思わない?」
吏星「完全に悪魔の証明だがな」

吏星「……しかし、そういうことか。こちらも併せて調査せねば……」
蓮夜「あれ? 何だかんだ言って信じてくれるんだ?」
吏星「夢想師という存在の特殊性を鑑みれば、ない話ではないと考えられる」

吏星「それに……こういう時のお前は嘘をつかんからな」
蓮夜「……素直じゃないなぁまったく」

蓮夜「これ、夢月ちゃんには伝える?」
吏星「……いや、やめておこう。良い結果を生むとは思えない。これ以上、早乙女に何かを背負わせたら、あいつの方が駄目になってしまう」
蓮夜「…………」

蓮夜「了解、吏星がそう言うならそうしよう。良いねぇ、だんだん保護者らしくなってきたじゃん」
吏星「やめろ。そう幾つも歳は離れていないぞ」

蓮夜「……上手く行くと良いね」
吏星「信じよう早乙女を。あいつならきっと、乗り越えられるはずだ」

蓮夜「…………」

Nightmare Kiss...
- The Awakened Story-
episode06に続く

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