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新人ディレクターが「有能!」と呼ばれるようになるための秘訣①

最近、特に「Webディレクターになって間もない方」からの初回指示出しの言葉で気になるものがあります。

トンマナに注意してデザインしてください
デザインの四原則を守ってデザインしてください
意図を伝えられるデザインにしてください

デザイナーの皆様は多少は共感いただけると思いますが、これが初回の依頼時点でついてくるともはや依頼内容ではなく、デザイナーのその業務に対して「やる気を削ぐ言葉」に早変わりするのです。

グラフィックデザインのみのお仕事の際には、あまり聞かない指示出しの項目でした。聞くとしたら「学校やスクールの課題をする時」あたりだったのではないだろうか?
※最近、若手ディレクターからこの言葉達が増えてきました

果たして、これらの指示がない場合にデザイナーから上がってくるものは、決まってそこまで破綻したものしか上がってこないような状況なのでしょうか。私も新人デザイナーから上がってきたものを添削していますが、ここを手直しするともっと良くなる、というものはあっても、完全にそれらを無視して素人以下のデザインで上がってきたことなど、ほとんどありません。

もし、毎回指示しないと明らかにデザインレベルとして表に出せないようなものが毎回上がってくるような場合、それはデザイナーではなく、「ツールを扱えるというだけの方」かも知れませんので、「他の職業デザイナー」に依頼を検討することも必要になってくると思います。

そしてまず「デザインをする際にこれらを守るのは最低限の暗黙のルール」であり「デザイナーなら心がけて作成している」ことを知って頂きたい。

要はプロのトラックドライバーに向かって「トラックというのは自動車の一種なので、運転の際は公道は右側通行、免許も必要ですし、ガソリンが無くなったら給油してください」のような指示をしているのに近いかも知れません。

シリーズ①トンマナに注意〜の指示が増えたのはなぜ?

まず大前提として、ディレクターの皆さんは、「トンマナ」が何を示しているかはきちんと把握しているとは思っていますが、改めて確認してみましょう。

トーン&マナー
そう、コンセプトや見た目の雰囲気等の統一をもたせるために、一定の使用色範囲(トーン)やアキのルール等を予め揃えておくことで、広告商材になるもののブランドイメージをアップさせるもの。マナーとはそれらの「ルール」を示したものである。

印刷物を始めとしたグラフィックデザイン業界でも、この用語自体は周知のものであり、基本的な最低限守らないと作品としては成り立たないものであるため、わざわざ書き記さなくても自然に守られているものこそがデザインという認識でした。

ところが、たまに「トンマナ」で検索をかけてみると不思議なことに「WEB業界用語です」とはっきり書かれていたりもします。
いや、前からありましたよ。
でも、わざわざ言いまくらなくても「守るもの」だっただけです。
もしこれを「WEB業界用語」と言い切っている記事があったとしたら、全体的にWEB業界以外の事情をご存じない方なのかも知れませんので、どこまでを参考にするかは読んだ方に委ねますが…。

それだけ、その方の知っているWEB業界の中ではデザインのトーンや基本的なアキや余白等のルールが守られず、混沌としていたのでしょう。

数ヶ月学んだだけですぐに業界へ入って仕事をする人も増えてきたいま、当然かも知れません。
Webの業務では、勉強時点でコーディング(マークアップ言語)やSEOの知識、サーバー関係の知識、運用の知識、それらが驚くほどの速さで、ある時は数ヶ月単位で標準ルールというのものがくるくるとめまぐるしく変わっていくのです。同時進行でデザインの基本から、根深いところまでを学んでいくためには、数ヶ月で形にできるところまでを習得、となると、基本的に「マークアップ言語の把握」と「デザインツールの使い方」までが限界となってきます。その状態で業務を始めてしまうと、上に書いた目まぐるしく変わる流れをずっと追い続けていく情報収集がメインになってくるのです。

デザインの基礎を勉強して、暗黙の了解ですよと言えるほどその身体に叩き込めるような余裕はないのです。

そして、上がってきたものの「トンマナが合ってない!」ということも発生してしまい、それならば・・・ということで先に言うようになったのかも知れません。稀に、奇跡的な芸術センスの持ち主だったり、もともと幼少期からデザインの勉強をしている人は当然ながら指示なくともズレたものは生み出さない(自分で違和感に気づくから)混ざっているため、その差がでているのも、トンマナちぐはぐ問題が目立ってしまう、そんなところでしょう。

そして、なんかわかりやすいじゃないですか。
勢いもありますよね、4文字ですし。

「トンマナ!」

何かの呪文でもあるかのように、やたらと耳について離れないその言葉のインパクト。

ついつい使ってしまうのもわかります。

トーン&マナーがなぜずれるのか?

では、そろそろ本題に入りましょう。(短縮形の語感が嫌いなのであえてトーン&マナーと呼びます)

トーン&マナーが一切合っていないものが上がってきたために、あえて注意しないといけないような場合は下記のどれかに相当する場合が多いようです。

①合わせるものが何か不明なほど、揃ってない見本しか添付されていない
②渡した資料が間違えていた、意図を間違えて伝えていた
③何かの意図があってあえて外してきた
④そのデザイナーのセンスが独特だった

①と②に関しては、まず指示出し側の問題でもあります。適切な指示さえ出せば、デザインの精度はともかく、最低限意図とはずれたものが上がってくることはありません。

むしろ、それで意図ズレのものが上がってくる場合は、デザイナーの技術力不足でもありますので別の方法を考える必要が出てくるでしょう。

③は一番読みづらいところです。
分かっていてわざと外したのか、ディレクターの意図にあえて反したのか。この場合はデザイナーと話し合う必要があるでしょう。意図をきっちりヒアリングしてみると、もしかしたらトーン&マナーがズレているのではなく、別の違和感があったのかもしれません。

④の場合。
諦めてください。発注先を間違えています。
もしくは、その人のセンスを信じてそのまま突き進んでみてください。
エンドクライアントさんはその奇抜過ぎる提案に、意外と「OK」出すかもしれません。

ではどう指示を出すべきなのだろうか?

どんな指示でも、シチュエーションや意図、またはデザイナーの技量や感覚によっていくつかのパターンがあります。

ディレクターの中でビジュアルがかたまっている場合

もうこの場合は、明らかにご自身でラフ画を用意したり、参考にしている(目指している)参考画像やURLを先方に伝えることです。

なお、それに加えて「どこまで・どの範囲までの改変を要求するか」は明示することです。

たとえば
①雰囲気だけを合わせて欲しい ※上級者向け指示(丸投げ)
②色合いを合わせて欲しい(範囲も指示)
③使っているフォントをあわせる(色なのかサイズなのか)
④余白の感じを合わせる(どの箇所なのか、サイズ指定あればpxも)
⑤どのレベルまで近づけてほしいのか(たとえば「上のタイトルエリアはほぼこの感じに近づけて欲しいが下のメインコンテンツは別の○○の感じで。近ければいいが6割程度近づいているとベスト。後半はより良いものがあれば変えてしまってくれて構わない」等)

また、どの部分が一番自分にとってしっくり来たのか、現行のものもあって改修などの場合は、どのポイントを重要視したいのか。
何を残してほしいのか、参考と言っても全部を指しているわけではないこともあるでしょう、ではどこが取り入れて欲しいものであり、どこが不要な部分なのかをきっちり示すこと。

「なんでそこまで指示しないといけないの?」

というディレクターに出会ったことがあります。
なのであえて一言。

脳内覗けないからじゃーーーーーーーー(怒

ということで「具体的なビジュアル」を持っている場合は、何に近いのか、どこを参考に近いものをどの範囲で(改変してもいいのかどうか)導入してほしいのか。

明確な言葉で伝えてください、ぜひ。
だってそれがディレクターのお仕事です。

デザイナーはエスパーではありません。
しかし、意図をきっちり伝えてくれさえすれば、何をどう表現すべきかはデザイナー側で考えて、現在作成しているものに最も適する形に、パクることなく「デザイン」を行なってくれるはずです。

ディレクターの中でもかたまっていない場合

この場合に取りうる策は2コ。

①デザイナーに丸投げしてみる
②デザイナーに相談する

ただし、何に詰まっていてどうしたいのかは伝えてください。
ざっくりした「当たり前のトンマナや四原則を守ってくれればいいので何か案を」なんて雲をつかむような言葉ではなく、具体的な言葉で。

ある程度の経験を持ったデザイナーなら、そこから良い案をだしてくれるはずですし、いくつか提案しながらどれが近いのかのヒアリングをおこなうことでしょう。

さて、全体のトーン&マナーについては上記の指示が適切なのですが、稀に謎の指示が追加されています。

トンマナに従って余白を揃えてください

これについては一言。

Webでは特にこれを言われます。しかし、「そのデザイン設計を行う際に設定した「数値パターン」を提示してください」と返すと、かなりの確率で「設定はありませんので、揃えてください」と戻ってくる。

ということでこちらで数値設定(左右マージンや描画エリアの四隅設定数値、要素間の数値等)するのですが、果たしてそれが合っているのかどうかのか?
左揃えで作成していても、すぐ下の全く関係ない広告エリアと比較して「揃ってません」との指摘が来たこともあります。関係あるのですか?と確認すると、そのときに初めて「関係のないものでも揃えてほしかった」と…。

「揃えてください」と来るからには「何をもって揃っていると言っているのか」の明示も必要です。

また、数値の件ですがメインカラー・サブカラー、および補助色を使用する規定がある場合なら明度差等、色味の設定があるならそれもデザイナーに指示する際に提示してください。これがないと返ってくる場合も多いです。

自分の思った感覚「もう少し明るい・暗い」等に揃えて欲しい

というのは、個人差がありすぎるため、デザイナー同士であっても合わせることが難しい部分。

稀に偶然にも、最初に組んだデザイナーと色彩感覚の好みが100%合致した場合、これらの「個人差」に気づかず、次に一緒に仕事をするデザイナーとの感覚差を全く伝えていなくて何度もやりなおしが発生したというのも見たことがあります。

「もう少し」の度合いがどの程度なのかは個人差によって大きく違うことは理解頂きたい部分なので、「伝えて」初めて双方が把握できるのです。

結論

とにかく、一緒に組んで仕事をするからには、デザイナーもできるだけディレクターの吸い取ってまとめてくれた要望に沿うものを作成したいと思ってデザインを作成しています。

しかし、意図が中途半端に隠されたり、心のなかで思ったままになったり、時には丸投げをしてしまったりすると、上がってくるデザインのクオリティは期待したものにならないばかりか、やり直しが繰り返されてどんどん意図から外れていくことにも繋がりかねません。

ディレクターとは「粗探しをして細かい部分だけを指摘する人」ではなく「プロジェクト全体を見て舵取りを行う人」であることをしっかり自覚をして「まとめたビジュアルを共有するための意図の明示」を行なっていただきたいと思います。

記事を読んで「コンビニコーヒーでも1杯おごってあげよう!」と思った方はサポート頂けると嬉しいです♪ ※高額はやめてくださいね。あくまでもコーヒー代の足しにさせていただければこれ幸いです(笑