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フリウリの土着品種を飲み干す

Vol.018
今回は、ブドウ造りに恵まれたイタリアの地形と、イタリアワインの魅力といえる、土着品種の話です。イタリア各州にそれぞれの土着品種がありますが、まず、北イタリアのフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州(以下フリウリ)の土着品種に迫ります。

イタリアは、実に個性的な地形で成り立っています。
アルプス山脈とアペニン山脈が国土の骨格となり、山間から平地に向かって、冷涼な空気が流れる大陸性気候と、海に囲まれた地形は、西側のティレニア海と東側のアドリア海から温暖な空気と湿り気をもたらす地中海性気候が混じります。その恵まれた地形と気候から、個性のあるブドウが生まれるのです。
そんなイタリアを、古代ギリシア人は「エノトリア・テルス(ワインの大地)」と讃えました。種類は2000種以上ともいわれるほど、多くの土着品種が生息。その多様性がイタリアワインの最大の魅力です。

みなさんよくご存じの、ワインの国際品種はおそらく、白ブドウでいえば、シャルドネやソーヴィニョンブラン、リースリング。黒ブドウでいえば、カベルネソーヴィニョンやピノノワール、メルローといったところでしょうか。

一方の、イタリアの土着品種は、さらに感動や驚きをおぼえます。芳醇な香りと複雑な味わいとテクスチャー……。イタリア人の気質や、かの地の文化に通底する“ボン・グスト”が隠れている、とヴィーノサローネの主は考えています。“ボン・グスト”とは、日本的にいえば“粋”のようなものでしょうか。なにか、つかみどころはないものの、「歴史や文化を如実に表す、十分な厚みを感じさせる味わい」があります。

だからこそ、ヴィーノサローネは、土着品種で造ったワインに着目し、「イタリアワインの“本質”にであう」ことを目指し、長い時間をかけて実践します。それも、楽しく心地よく。

今回ピックアップした土着品種は、数あるフリウリのなかから、“フリウラーノ”“ヴィトフスカ”“リボッラジャッラ”の3種。
ヴィーノサローネのネットショップで体験できる土着品種を選びました。

かつて、“フリウラーノ”は、“トカイ”と呼ばれていました。その経緯は、ハンガリー政府とEUがイタリア政府に対し、ハンガリーの地域名となる“トカイ”との混同を避けるために長年争われ、結果イタリアは事実上の敗訴。2007年4月から“フリウラーノ”と名称が統一されたのです。

“フリウラーノ”は、酸味と余韻の残るミネラルとのバランスがよく、しなやかな骨格を感じさせます。現地の土壌に育まれた滑らかな舌触りがたまりません。あくまでもヴィーノサローネ主の感想で、ひとそれぞれに、もっと複雑な味わいが感じられるでしょう。

実は、主は、1990年代末にヴェネツィアに住んでいたことがあります。
現地には、ヴェネツィアの文化的な遺産にあたいする居酒屋、通称“バーカロ”が何軒もあります。毎晩のように“バーカロ”に通っては、“フリウラーノ”と呼ばれる以前の“トカイ”をよく飲んでいました。ヴェネツィアは、フリウリ州の隣のため、“トカイ”のワインがかなり流通していたのです。

“ヴィトフスカ”。この品種は、強い酸味を感じ、アロマは控えめでデリケート、フリウリのテロワールが見事に表れる硬質なミネラル感が白眉です。とくに、フリウリの産地のなかでも、カルソ地区で栽培される“ヴィトフスカ”が逸品。白ワインのもつ幅広さや奥深さを知るための手がかりとして、“ヴィトフスカ”は最適の土着品種かもしれません。

“リボッラジャッラ”。かすみ草のような香りで酸は豊富、切れのいいミネラル感が特徴です。
しかし、ヴィーノサローネにラインナップしたワイン「パラスコス」は、“リボッラジャッラ”を100%使用しているものの、ブドウの果皮も浸して発酵させるマセラシオンを経て造ったワイン。そのため、前述したブドウの香りや味わいの印象が覆い隠されています。ワインの栓を開けてから時間を経て、“リボッラジャッラ”の個性がじんわりと引き立ちます。

イタリアで、“白ワインの聖地”と呼ばれるフリウリ。個性的な土着品種で造った白ワインは、イタリアワインの新鮮な一面を知ることになります。

次回の“ディアリオ ヴィーノサローネ”に続きます。

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