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”ブドウ飲み”というワインの比べ方

Vol.029
ヴィーノサローネは、イタリアの土着品種の豊かさを知ってもらえるように、各ブドウの個性を伝えることに努めています。イタリアワインの“本質”に近づくためのひとつの方法として、あまり知られていないけど、とても重要な土着品種で造られたワインを、当店のベイスで販売しています。いきなり宣伝で恐縮です。

なぜ、土着品種なのか。Vol.18でも述べていますが、土着品種は、やはりイタリアワインの広がりを体感できるからです。広がりというのは、土着品種が各産地のテロワールや気候と結びつき、より多様なワインになること。国際品種の白ブドウにはない、イタリアの独特な土着性を味わうのがヴィーノサローネの狙いです。
今回は、ちょっとしたワインの飲み比べ、“ブドウ飲み”を紹介します。

“ブドウ飲み”ってなに、と思われるでしょうが、これは主(あるじ)がつけた造語です。一般的に知られているワインの飲み比べは、“タテ飲み(垂直試飲)”と“ヨコ飲み(水平試飲)”があります。それとはまた別の方法として、“ブドウ飲み”の提案をします。

その前にまず、簡単に“タテ飲み”を説明します。
タテ飲みとは、同じ銘柄で、ヴィンテージの異なるワインを飲み比べる方法です。たとえばこんな感じになるでしょう。
「2010年のヴィンテージは、フローラルな香りが立ち上がり、いますぐにでも飲めそう。しかし、2015年はブドウが凝縮して、まだ香りも閉じている」というように、同一種のワインでもヴィンテージによって、状態が違います。年代を垂直に遡り、比べながら試飲する方法が、タテ飲みです。

一方、“ヨコ飲み”は、まず同じヴィンテージのワインを条件とします。そして、異なる銘柄を飲み比べます。つまり、ヴィンテージが一緒なのでヨコ(水平)という言葉が使われるわけです。
マニアックに攻める場合、同じヴィンテージで同じ生産者。しかし、ブドウが育てられた畑が違うワインを比較する、という試飲もあります。畑の地形や傾斜によって、日照時間が微妙に変わったり、風の流れが若干ずれることで、ブドウの成長に変化が生まれる。ワインのプロにしかわからないような、かなり専門的な試飲です。

主がいう“ブドウ飲み”は、ヨコ飲みを拡大解釈して楽しむ方法。同じ品種で、異なる生産者のワインを飲み比べることです。ヴィンテージは必ずしも同じである必要はありません。
なんだが、ややこしくなってきました。図式にすればこうなります。

生産者A/ブドウ1 生産者B/ブドウ1 生産者C/ブドウ1

A,B,Cの3つの生産者から、ひとつの品種が比較できます。「ブドウ1」は、生産者が異なれば、まったく違うワインになる。当然、産地の違いもあるうえ、発酵や醸造においても、それぞれの方法がある。そのため、同じ品種でも味わいが違います。また、ワインの製造過程で明らかに差が出る、生産者の哲学を読み解くことにもつながります。それが、“ブドウ飲み”の面白さだと思います。

現在は、白ブドウの果皮も漬け込むマセラシオンを経て造られた、色濃いオレンジワインが人気のため、“ブドウ飲み”がより広く楽しめる環境です。
クリーンな白に対して、ちょっと濁ったワイン。あるいは、伝統的な醸造に対して、近代的な醸造のワインを比べる。“ブドウ飲み”で、ワインの本質にまた一歩近づけます。

インスタグラムもどうぞよろしくお願いします。

次回の“ディアリオ ヴィーノサローネ”に続きます。


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