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所長コラム⑧「ビデオ会議のストレス」について

 こんにちは、VCラボ所長の松本です。

 コロナ禍においてZoomやTeamsなどを介したビデオ会議が日常となり、今や支社が一堂に会して本社で対面会議をするなんてことは、だいぶ少なくなったものと思います。移動の時間は節約できるし、出張費は削減できるし、きっとこれは不可逆な時代の流れなのだと思います。

 ただ一方で、ビデオ会議の問題点がちらほらと指摘されるようにもなっていると思います。以前は「対面と変わらない」という研究報告が目立っていた印象ですが、ビデオ会議が日常になった直近の結果が、2022年になって色々と結果が発表されるようになっています。主だったものを以下に紹介しておきます。

 尚、メタバースによるカウンセリングの試行を継続していますが、VRストレスの最たるものは、現状、目に装着するVR機器の重たさだと感じています。VR機器が軽量化してくれたら、普及が一気に進んでいくのではと予想しています。弊社でも、メタバース相談を受け付けるべく、準備を進めたいと思っています。


 スタンフォード大学コミュニケーション学部Jeremy Bailenson教授は、人がビデオ会議を負担に感じてしまう理由について、以下の4点を挙げて解説しています。
①.近距離からの視線
②.認知的な負荷の増加
③.自分の顔を見続けることの負担
④.身体的な不自由さ

 バーチャルで協働したペアよりも、対面で協働したペアの方が、多くのアイデアを生み出し、独創的なアイデアを生み出したようです。
 テレビ電話を用いたペアは、部屋を見回す時間よりも画面上の相手を直視する時間が長かったようで、テレビ電話の場合、画面上の相手とのコミュニケーションに注意が集中するため、認知の向かう対象が狭くなり、独創的なアイデアが生まれにくくなるという仮説が示されています。

 「VRを用いた作業を1週間続け、その作業効率を定量化する」という実験を行ったところ、テストに参加した被験者のうち、2人は吐き気や片頭痛などを体験したため、実験初日でリタイアすることになったようです。
 また、被験者の35%が「作業負担が増加した」、42%が「欲求不満を感じた」と回答。さらに11%が「作業に悪影響が出た」、19%が「作業中に不安を感じた」、20%が「メンタルヘルスが低下した」と回答したようです。

実証実験の結果として確認された主な影響は、以下のとおりでした。
①.音質が悪い会議では、内容が理解されないだけでなく、参加者にストレスを与える。
②.ストレスの原因として、特に認知機能に対する負荷が高まる傾向があり、これが継続すると認知機能が低下し、理解力や判断力、反応のスピードといった会議参加にとって重要な能力が鈍くなることが考えられる。
③.内容が理解できないことによるストレスは会議後半にかけて蓄積されていく。

■所長プロフィール

松本 桂樹(まつもと けいき)
株式会社ジャパンEAPシステムズ 取締役
神奈川大学人間科学部 特任教授

 精神科クリニックにて心理職として勤務後、日本初の外部EAP専門機関であるジャパンEAPシステムズの立ち上げを担う。 現在もEAPコンサルタントとして、勤労者の相談を多く受けている。
 臨床心理士、公認心理師、精神保健福祉士、キャリアコンサルタント、1級キャリアコンサルティング技能士、日本キャリア・カウンセリング学会認定スーパーバイザーなどの資格を保有。

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