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1人の空

あの人が居ない人生は
私には考えられなかった

その場に居ることを禁じられたが
彼の柩が静かに締められたら時
私の心も一緒に死んでしまった
あの柩の中に私もいるようだった

霊柩車に乗せられる彼を
遠くから見つめることしか許されなかった
でも、目をあけているのに
何も見えない
世界の全てが
ゆがんで見えてた
霊柩車が出ていっても
ずっーと
その場をはなれられなゃかった

彼女なのに
私はまだ他人だから
ご両親の許可が無ければ
何もできない自分が
嫌になった
あの人を抱きしめることも
最後に付き添うことも
できないなんて

その後どこをどこを歩いたかもわからなかったが、ホテルまで戻ってた

感情のない顔
目がはれ
鼻は真っ赤

「これじゃ
彼に嫌われちゃうや」
苦笑い

明日帰るんだ
1人で実家に
私、もう1人なんだね
泣きたいだけ泣こう
って心の中で思った
何かが吹っ飛んだ私は
変に落ち着いていた




あの日から5年が過ぎ
私は、慌ただしい毎日を過ごしていた
29歳独身 中間管理職
お局予備軍になっていた
同期の女子は、27には寿退職していった
そうなると、
自分ではお局ではないと思っていても、立派なお局である

誰とも、結婚しない
仕事と趣味の毎日
それが私の全てだった

主任は、良い人いないの?
もう29でしょ
早く子ども産まないと

いつまでも死んだ人の事

思ってたって仕方ないよ

年長のパートさんが
私に言う

また始まった
いい加減うんざりだと思うが
笑顔で返す

私結婚する気ないし、
子ども産めないから
ほっといて下さいね


つまらん無駄話も詮索もいらない
私は仕事をして欲しいだけ
ハラスメントだけど、
言っても無駄

「親切で」Г心配で」
「一般的なこと」で
ハラスメントじゃないとわめかれ
私が悪者になるだけ
私の方が被害者なのに
被害者面されるだけ

結婚に夢見たこともあった
いまでも
あの人と結婚したかったし、
そうであったらと思っている

家族の待つ部屋に帰るのも
友人の子どもだって
うらやましい

でも、あの人以上の人なんて居ないんだよ

なんで、結婚後旦那様なくした人は旦那様思いの一途な人で
結婚前に婚約者を亡くした人は
諦め悪い人なんだろう

愛する人を亡くすのは
同じじゃないの?

あ~
嫌な気持ちが、頭の中で
ぐるぐるしてる

あの、その発言は駄目だと思います。それって、マリッジハラスメントと妊活ハラスメントにあたりますよ


隣に居た新人社員が
そう言いだした

そんなつもりじゃないわよ
主仼が老後1人は淋しいだろうし
心配と親切で言ってるのよ

そうであったとしても、単身者に対して交際や結婚することを必要以上に勧めたり強要する行為はマリハラですし、女性に対して妊娠や妊活のことを聞くことで不快な思いをさせてしまう行為は、ニンハラですよ、今では当たり前のハラスメントですよ


静まり返る社内

沈黙の時間

はぁ~めんどい
どっちもめんどい
親切なふりする年長者も
いらない正義を振りかざす新人も
どちらも私しては同じぐらい
めんどい
誰か助けて~
って
アニメのヒーローを呼びたいよ

パン

大きな音がなり、振り返ると
部長が、手を鳴らしていた。

今は何の時間ですか?
人の人生やハラスメントの勉強時間でもないですよ
人には触れられたくないことがある
それに触れている時間では無いはずです
いい社会人が
何をしているのですか?
本当に相手を思うなら
そんな言葉はでないはずです
ほら、仕事、仕事
残業は認めませんよ

蜘蛛の子を散らすように
みんながその場かち離れて仕事にもどる
何事も無かったように、、、

ハラスメントは
受けた人の気持ちが生みだす問題でもある
相手を思えばこそだが
その言葉は
心を優しく包み込まれたり
心を殺す凶器ともなる

その場を納めるにしても
言い方を間違えれば、
パワハラにもなりうる
すごいなぁ

私じゃ無理
私ももっと成長しないといけない

今の私じゃだめなんだ
仕事と趣味の毎日なんていってるのに
ちゃんと仕事できてない
してるふりしてただけ
薄っぺらなスキルだけ

落ち込むな、焦らず自分のペースで前にすすめれば良い

まだまだ成長できる、1歩ずつ進めばいいんだ


私の心を見透かしたように
部長の言葉が
私の心の背中を
ぽっんっておした
出来ることから
1つ1つ
やっていこう
自分のためにも
ほったらかさない

私の人生、終わってない
自分の人生を自分で終わらせてた
彼の居ない人生をいいわけにして
逃げてた自分が恥ずかしい

彼を思ってるのと同じぐらい
自分らしく成長して
人生の終わりにまってる彼に
笑顔で逢えるように

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