プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第2番 ニ長調 Op.94bis

プロコフィエフ/ヴァイオリン・ソナタ 第2番 ニ長調 Op.94bisの曲目解説です。

S.プロコフィエフ(1891-1953)

旧ソビエト連邦の作曲家であり、ピアニスト。
プロコフィエフは、アメリカ時代(1918-22)、パリ時代(1922-36)を経て、1936年からはソビエト連邦に定住し、以後亡くなるまで2度の演奏旅行を除き外国には出ていない。彼のソビエト連邦時代はスターリンの大粛清の時代で、作曲活動は決して順調なものではなかったといえる。
ドイツ軍のソビエト進入後、モスクワを離れたプロコフィエフは、疎開先の各地で創作活動を続けていた。1943年、彼は疎開先のひとつであるウラル地方のペルミにて古典的なソナタ形式によるフルートとピアノのためのソナタOp.94を作曲した。本日演奏するヴァイオリン・ソナタ第2番は、この優雅なフルート・ソナタを改作したものである。改作した経緯は、フルート・ソナタの初演を聴いたヴァイオリニストのダヴィット・オイストラフがその流麗な旋律に目を着け、熱心にヴァイオリン・ソナタへの改作を勧め、プロコフィエフもその提案を快く受け入れたこと、また初演時のピアノを弾いたリヒテルによれば、当時の社会情勢の影響のためフルート奏者がなかなかこの曲を演奏しなかった、などの理由が挙げられる。
ピアノパートは原曲のまま使用され、ヴァイオリンパートのみ運弓法や音域など違いから、少し訂正を加えている。この曲は友人のヴァイオリニストであるヨーゼフ・シゲティに捧げられた。

第1楽章 Moderato ニ長調 4分の4拍子

ソナタ形式。くもりなく澄み渡った雰囲気を持ち、ロシア的な詩情をたたえた楽章である。のどかな第1主題、舞曲風で軽快な第2主題が呈示され、リズミカルな展開部に移る。各主題が転調しながら展開され、縮小された再現部、コーダへと続く。

第2楽章 Presto イ短調 4分の3拍子

3部形式による軽妙なスケルツォ。生き生きとしたピアノの序奏に導かれ、ヴァイオリンが主要主題を奏する。2つの楽器による軽快なやり取りを経て、中間部に入る。憂いを含んだヴァイオリンの旋律が現れ、また2つの楽器によるおどけた対話が繰り広げられる。

第3楽章 Andante ヘ長調 4分の2拍子

パリにいた影響だろうか、どこか印象派風の抒情的な楽章である。穏やかなピアノによる伴奏の上に、ヴァイオリンがまろやかな主題を奏でる。中間部はヴァイオリンとピアノが短い16分音符による音型をさざ波のように応答しあう。再び第1部に戻り、夢想的な雰囲気を漂わせ終止する。

第4楽章 Allegro con brio ニ長調 4分の4拍子 

ロンドソナタ形式。躍動感あふれる華やかな楽章。ヴァイオリンによる力強く進行する旋律が、リズミカルなピアノに支えられて第1主題を提示する。この主題は転調して反復される。次のPoco meno mossoから、ピアノがオクターブで低音域から第2主題を弾き始め、ヴァイオリンが華やかな走句を上に重ねていく。中間部は哀愁に充ちた旋律がヴァイオリンにより奏され、クレッシェンドし盛り上がりながら再現部へ移行する。そして第1主題に基づいたAllegroのコーダにより終結する。


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