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一人だけ白線のセーラー服を着ていた話

親の転勤で様々なところへ行った。幼稚園は2つの園、小学校は4校、中学校は2校、違う学校へ通った。

中学では、入学して1か月で転校が決まった。
3本の白線のセーラー服から同じセーラー服でも線の色は濃紺で2本線のセーラー服の学校へ転校した。スカートのプリーツのつけ方も少し違っていた。

1か月しか袖を通していない制服を買い替えるのはあまりにもったいないということで、親が学校に許可を取って、白線のセーラー服を着続けることになった。

「いいなぁ、白線のセーラー服」
「お、アディダスの制服?」
などと言われ、違うクラスからも見物にくる生徒までいて、恥ずかしかった。体育館に集合して列に並ぶときなどは、白線が目立ってすごく嫌だった。

だからと言って親に「新しい制服を買って」とは、言えなかった。
確かに1か月しか着ていない制服を新しくするのは、どう考えてももったいないことだと自分でもわかっていた。

3年生になって、母が近所の知り合いからお古の制服を譲りうけてきた。サイズは私には少し大きめで不格好だった。けれども、その制服を着て、鏡で自分の姿を見たときのほっとした気持ちを今でもはっきり覚えている。

今思えば、白線だろうが、濃紺だろうが最初こそ目立っていたかもしれないが、すぐに慣れてだれも気にしていなかったと思う。けれど、その頃の私はずっと居心地の悪さを感じていた。

お古の制服を着て初めて登校した日、クラスメイトが気が付いて声をかけてくれた。

「あ、似合うね」

3年生になってやっとその学校の生徒になった気がした。

めったに見ることはないけれども、今でも白線のセーラー服を見るとあの頃の自分を思い出す。


おわり


見出しのイラストは、msy.(みしぃ)|Annuiさんの作品をお借りしました。
ありがとうございます。


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