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喋りが楽しくもあり、難しい理由は

 プロレスが好きでよくみているんですが、あるときに「プロレスと喋りって似てるかも?」と感じたんです。


 アントニオ猪木さんは海外遠征に行ったとき、外国人レスラーに対して、とにかく受け身を教えたそうです。技をかけるだけではダメだ。うまいレスラーは、技を喰らうこともできると。


 これ、喋りでもそうなんです。YouTubeや配信アプリで「1人喋り」を発信することが簡単にできるようになりました。1人で数時間持たせることはできる。しかし、2人になると途端にできなくなってしまうというパターン。プロレスでいえば攻撃するだけで、受身が取れない状態です。

 理由は『喋ったらやり切った感が出て、聞けなくなってしまう』から。


 自分が喋るだけでは“話芸”にならないんですよね。1人で完結しちゃう。これは、フリートークでもお芝居でも同じです。話芸なんて小難しい言葉を使わずに言えば“会話”になっていない状態。

 もちろん、自分が喋るターンになったら喋っていいんですよ。でも話がうまい人は、その場、状況で“自分が喋れる時間は今どのくらいあるのか?”をわかっているんです。感覚的に。


 テレビやラジオを聞いててたまに思いません?『今、あの人の話をじっくり聞きたいのに!』って。自分が喋る側になると『用意してきたことを話そう!』として他の人の時間を食ってしまう。

 喋るときには喋る。聞くときには聞く。これをいつでもできるようにしておく。これは相手がいないと練習するのは難しそう‥?

 いえ、そんなこともありません。1度、喋りたいように喋って録音してみましょう。で、1週間くらいしたら聞きかえしてみる。

 1週間置く理由は“一生懸命喋ったから”という気持ちが冷めてくる頃だからです。すぐ聞き返してしまうと“ここはこういう気持ちでやったからね”と、客観的に判断できなくなってしまうので。

 客観的に聞いてみると『あ、ここはいらないな』とか『ここわかりにくかったから、もう少し説明を足そうかな』と整理していけるようになります。で、大切なのは『何回もやる』こと。



 怪談話を披露させていただく機会がちょこちょこあるんですが、同じ話を何回もするんですよ。ここで「それ何回も話してるじゃん」と言ってしまうのは素人。

 違う現場でご一緒したことのある方には、その場で同じ話を聞かせてしまうことになるんですが、話を受けてリアクション(わざとらしいのじゃないですよ。ここの部分はこうで怖かったですよねーみたいな)がうまいんです。

 場を冷めさせない、次に繋がるようなリアクション。これはかなり難しいですが、頭で考えていてもしょうがないので、現場でいろんな人の話し方を見て、聞いて徐々にやっていくものだと思います。

 しゃべりは、難しくもあり、楽しくもあるのはこれがあるからなのかもしれもせん。




聲優・ナレーター
有野優樹(ありのひろき)


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