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おんがくこうろん2✳︎ジョージ・ガーシュイン

星野源のおんがくこうろん第2回目は、ジョージ・ガーシュイン

今の若い人には馴染みがないかもしれないけれど、私が子どもの頃は、普通に自然に、彼の音楽がどこからともなく流れてくる、そんな感じだった。
ラプソディ・インブルーを始めとして、パリのアメリカ人や、スワニー、サマータイムなどなど…を作曲し、彼の曲の多くが、スタンダードナンバーとして今も残っている。

今回も、星野さんの他に、二人のかいせついんが登場。
有名な話から、知られざる逸話までを話してくれた。

若くして才能を開花させたガーシュインはニューヨーク生まれ。
当時のアメリカでは、レコードが高価で、音楽関係者は楽譜を買ってプレイヤーに弾いてもらっていたそう。
分業制で、作曲家、作詞家、アレンジャー、演奏者、歌手という風にはっきりと分かれていたという。
ニューヨーク通りには、たくさんの音楽出版社があり、さまざまな音楽が聞こえてきて、音の洪水に「ティンパンティンパンとうるさい」という意味でティン・パン・アレーと名付けられたのだとか。

ガーシュインは、12歳でピアノを始め、高校を中退し、そこでピアノの仕事を始めたそう。
ピアノが上手いだけでなく作曲も手がけ、弱冠21歳で、あの「スワニー」を作曲したそうだ。もう、驚愕でしかない。

ティン・パン・アレーと聞いて、星野さんが反応した。
というのも、星野さんいわく「音楽のお父さん」である、細野晴臣さんはかつて「ティンパンアレー」というバンド名で活動していたそう。私はその頃の細野さんを知らないのだけれど、細野さんといえば「ティンパンアレー」というのは、結構有名な話だ。


今回も映像のゲストとして、ピアニストの角野隼人さんが登場。
ステージでもガーシュインのラプソディ・イン・ブルーを演奏している角野さんが、彼の音楽の特徴をわかりやすく話してくれた。

例えば、「ラプソディ・イン・ブルー」
ひとことで表現すると、ヨーロッパのクラシック音楽と、アメリカのジャズを融合していると…
だからなんだ、と気がついた。
角野さんがジャズの要素があると話してるけど、子どもの頃から幾度となく聴いてきた「ラプソディ・イン・ブルー」は、ポップスにしては壮大で、クラシック音楽のように聴こえていた。
ただ、同時にクラシック音楽にしては、異質なものも感じていたこともたしか。

角野さんが、ブルーノートスケールについて話してくれた。
ブルースがベースのジャズの音階をいい、試しに普通の音階でラプソディ・イン・ブルーを弾いてみてくれた。
あれほど哀愁を帯びていたこの曲が、明るい曲に様変わりしてしまいびっくり。正直、魅力あるメロディかと聞かれたらそうでもないというのが、聴いてみての感想だった。

当時のニューヨークでは、作曲するにあたっては、AABA の型を踏襲することが当たり前になっていて、ガーシュインもそれにもとづいて作曲をしていたらしい。
その型の中で、彼独特の音楽を作り上げていったという。
ここで星野さんが、昔、中村勘三郎さんと共演した時に聞いたこととして話してくれたののが、型があってこそ、その枠を超えた型破りで自由なものが生まれる。その逆に型というものがないと、型なしとなる。という話。
なるほど、そういうものかもしれない。
型があると聞くと、とかく不自由さを感じるものだが、型がないまま、自由に表現したものは、ときに破綻して、その存在の意味さえなくしてしまうことがある。
ガーシュインは、型を理解した上で、そこを超えていく、はみ出していくことに、オリジナリティを、見出していたのかも。

ガーシュインの伝記映画の映像が何度か流れたのを観ながら、なんとなく観たことがあるような気がするんだけどなぁ…朧げなので、はっきりとは言えないが、見覚えのあるシーンが…
これも母がクラシックや洋楽が好きだったせいで、色んな音楽家の伝記的な映画、映像を観てきた記憶が、こんなとき蘇る。

アメリカの音楽をテーマの音楽会で ラプソディ・イン・ブルー  を発表した際、時間的な問題もあったが、オーケストラ用に編曲することに自信がなかった彼は、他の人に編曲を頼んだそう。それが唯一の心残りだったらしく、ヨーロッパにいるラベルに教えを乞うたことがあったという。
しかし、ラベルは1流のガーシュインに、2流のラベルが教えることは、ない。と言って断ったエピソードがある。
周りからはもう、教えるものはないと言われることは、それくらい実力を認められているのだと捉えるなら名誉なことかもしれない。
しかし、貪欲に学びたい、自分にないものを獲得したい、まだ色々知りたいことがある、教えて欲しいことがあると願うガーシュインにとっては、なぜ?どうして?という疑問と、断られたことへの悔しい気持ちがあったのではないだろうか。
もっと高みを目指したい人に立ちはだかる、壁のようなもののように感じた。

やがて彼は、オペラに取り掛かる。
集大成として完成したのが「ポギーとベス」
南部の黒人を主人公にした作品で、その中で歌われたのが、「サマータイム」だった。
彼はこの作品を上演する際に、黒人を登用することを条件としたそうだ。
そのことで、常に議論がなされるという。
それがアメリカの抱える現実であり、今もって議論される作品を生み出した、ガーシュインという人のすごさを感ぜずにはいられなかった。
音楽性の高さ、作品にこめた思い、そして何が人間にとって一番大事かを問い続ける作品を生み出したことに…

今回、初めておんがくこうろんで、彼の音楽的要素や背景、人となりに触れることができ、よりガーシュインというひとの偉大さを実感することができたように思う。

最後に…ガーシュインの頃は、楽譜を買ったと話しているのを聞いて、つい自分もそうだと思った。
当時はレコードが高価で楽譜を買ったという背景があってのことだが、今の自分は、いいなぁ素敵だなと思うピアノ曲に出会うと、ずっと聴き続ける、繰り返し聴くよりも先に、楽譜が欲しいと思ってしまい、探してしまう。自己流だし、全く上手くもないけれど、やっぱり弾きたいと思ってしまう。
困ったものだ。

最後に、ラベルの名前を聞いて、ボレロを思った。ガーシュインのエピソードに大好きなボレロの名前が出てきて、ちょっぴり嬉しかった。

第2回、ガーシュインよかった。
若い時から彼の才能溢れる様子に悔しがる源さんや、ティンパンアレーで細野さんが思い出されたり。
解説も分かりやすく楽しかった。こんないい番組を4回じゃ絶対終わらせないで 
#NHKさん
もっと色んなことを知りたい!

次回は、アリー・ウィリスさんです。

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