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吉井理人投手コーチの「選手を指導しちゃダメ」の真意

本日は「吉井理人投手コーチの「選手を指導しちゃダメ」の真意」についてです。sportivaという集英社のweb媒体にて2018年末から2019年にかけて連載された内容「現在ロッテの1軍投手コーチを務めている吉井理人コーチ」の「コーチとしてのスタンス/あり方」が非常に面白い内容でしたので取り上げます。

吉井コーチはこの記事の中で、タイトルにも書いている通りコーチ「コーチは選手を指導しちゃダメなんです」という言葉を言います。この言葉の意味するところを深掘りしていきます。詳しくは次のチャプターから。

このnoteはVoicyの過去の放送を文字に起こしたものです。

筑波大学大学院で、工藤さん・仁志さんと学びながら掴んだ"教える根拠"

まずは、簡単に吉井理人コーチの経歴を。経歴自体が非常にユニークなので、いつもより凄し長めにお話ししますね。
現役選手としては、近鉄とヤクルトで抑えや先発を経験しつつ、1997年にNPB史上初のFA権行使によるメジャー移籍を行います。チームはNYメッツ。その後、MLBで幾つかの球団を経験し、2003年からNPBオリックスに復帰をします。

その後は、日本ハムの投手コーチを経験しつつ、元プロ野球選手の現在SBの監督をつとめる工藤さん、元巨人の仁志さんと共に筑波大学大学院スポーツ健康システムマネジメント専攻へ入学します。その理由としては、日本ハムコーチ時代の自身の指導に対する反省から、「自分の経験を理論で理解したうえで、言葉で説明できるようになりたい」として、野球コーチング論研究室で野球の指導に関する理論などを研究するようになったと、wikipediaに書かれています。
そして、その後は工藤公康さんが大学院に在籍しながらSBの監督になったことをきっかけに、2015年のオフから自身もSBの1軍投手コーチを務めます。そして、その後は、再度日本ハムのコーチをつとめたのち、2018年オフからロッテの投手コーチを務めています。

いやー、こうやって話してみると色々な球団に属しているので、選手としてもコーチとしても非常に経験豊富なことが伝わってきます。

で、この吉井投手が、sportivaにて、プレイヤーとしてプロとMLBの経験をし、そして投手コーチまで実績を重ねてから、筑波大学の大学院で学んだ内容に非常に価値を見出している話がありました。ここが凄く興味深いなと思いましたので少し読みますね。

その勉強の最たるものが大学院だったとすれば、学ぶ前と後で何がどう変わったのか。
ふり返れば、07年限りで現役を引退し、直後に日本ハム投手コーチとなった吉井は、同年の秋季キャンプに参加した後にこう語っている。
「痛感したのは、かなり勉強しないといいコーチにはなれない、ということ」。
「変わったというか、その前から、わりと自分のなかでコーチングの哲学は持っていたんです。それを大学院で科学的な研究に基づいたコーチングの勉強をさせてもらって、あながち間違っていなかったな、という確認ができました。やっぱり、コーチは選手の邪魔をしたらダメなんだと。あの……指導しちゃダメです」

もう少し記事の内容を抜粋します。

選手の邪魔をしたらダメ、というのは感覚的に理解できる。が、「コーチの立場で指導してはいけない」となると、その仕事の意味がわからなくなる。あくまでもイメージとしては、コーチ対選手は”教える、教えられる”関係ではなく、コーチは目標に向かって走る選手に伴走するようなものだろうか。(ここからまた吉井投手の言葉)
そうですね、本当にサポートですね。とくに今、指導者のパワハラが問題になっていますけど、昔はそれである程度の成果が出たんです。でもやっぱり、長い目で見ると、それでモチベーションを保つのが選手はすごく大変なので、結果的にはダメになりますよ。アスリートファーストという言葉がありますけども、指導者は『選手が主役』じゃないとダメですね

そして、吉井投手は大学院の学びについてこのような言葉も述べています。

「ちゃんと根拠があるんだとわかりました。現役時代、自分がコーチに教えられるのが嫌だったんで、自分が嫌だと思うことは絶対に選手にしないでおこうと、そういう使命でやっていたんですけども、そのこと自体、根拠があるんだと。やっぱり、これはこれでいいんだ、と思えましたね」

この記事、すごく面白くてここから、じゃあ吉井投手は選手に何をしているのかというと「振返り」。振返りのコミュニケーションということが書かれていて、ここもすごくユニーク。

ですけど、今日話したいのはそこではなく、吉井投手が「コーチは教えちゃダメ」という言葉を行ったこと。そして、そこには「大学院で学んだ内容コーチングであったりスポーツ科学を学んで、自分がやろうと思っていることの根拠を掴めたのが大きい」ということ。ここを深掘りたいです。

通常、メジャーでも活躍してプロ野球の1軍でコーチをしているような人なら、その経験自体が根拠になりそうなものですが、吉井投手はそうではない。恐らく、本当に自分の教えていることは正しいのか?それが分からない状態でコーチと言う立場にいるのが嫌だ/選手に申し訳ない/自分のような思いをしてほしくない、と思ったのかなと思います。あくまでも私の仮説になりますが。

こうやって話していると、1つの言葉を思い出します。「名選手、名監督にあらず」これ、よくききますよね。今回の「コーチは選手を指導したらダメなんです」という言葉と「名選手は名監督にあらず」というのは、表裏一体だなと思ったんです。

これはどういうことか。次のチャプターで話します。

「名選手は名監督にあらず」が起きやすい2つの理由

名選手名監督にあらず。これって確かに当てはまるケースが多い。なぜなのか考えてみました。

あくまでも私の仮説ですが、理由は2つ。

まず1つめ。「名選手は自分の成功体験のみをベースにして物事を見やすい」名選手と言うほどなので、強烈な成功体験があります。強烈であればあるほど、それが全てであり意識しなくても周りにそれを求めるようになりガチ。

そして、2つめ。「現役時代にめちゃくちゃ活躍した人がコーチになったら、周りはFBしにくい」。実績が全てのプロスポーツではどうしてもこれは起こってしまいがち。

つまり、名選手名監督にあらずというのは、実は理にかなった話で、名選手の状態のまま何も情報をアップデートせずに指導者になったら、教え方どうこうの前に「教えている内容」がそもそも間違っていることが多いのでは?ということです。コミュニケーションとかそういうこと以前前の部分で間違っている。

そこに周りもうすうすに気付いてても指摘しにくい。そうすると、ますます指導内容が間違った方向に拍車がかかる→そうするといい選手は育たない→結果、名指導者にならない・・・。という負のスパイラル。

ここを吉井コーチは、「自分のやり方って本当にあっているのか?再現性あるのか?」恐らく、「どのような選手が来たとしても正しい指導ができるようになろう。ならないとだめだ」そのぐらいの志を持って大学院にいったのだと感じます。

これ、大学院にいくことが偉い!とか正しいと言いたいんではなくて、たとえどれだけ実績を積んだとしてもプレーするのと指導は別物であり、立場が変わればインプットしないといけないこと/学習しないといけないことは発生するし、それを何らかの形でインプットしようとしないと良い指導者にはなれないということ。がポイントかなと感じます。

先月、VoicyスポニチNewsの日曜日のパーソナリティをやられているゆみさんから、バレーボールの元日本代表監督の植田達也さんという方をぜひ取り上げてみてくださいー!と教えていただいて、私も初めて植田さんと言う方を知り調べていたのですが、植田さんも日本代表選手→日本代表監督を経て、早稲田大学の大学院で研究室で学んだりされていて、今は大阪商業大学の特任教授を務められていました。

Tips:「自分は教えるとき/指導するとき、どんなスタンスで教えている/指導しているのか?それって合っているのか?」これを振り返る

ちょっと今回は熱が入ってしまいましたので、このまま日々のTipsにうつっていきますが、やはり指導者のような、選手に大きな影響を与える仕事や立場についている人には、指導する際に「その指導内容/方法って本当にあっているのか?」「どれだけ再現性があるのか?」これを考えていて欲しいなと個人的には感じます。

よく、高校野球を見ているととある高校から1名の怪物選手のようなスターが生まれてきます。そうると、その高校の監督が名指導者のように報道されることがあります。
勿論、何人も素晴らしい選手を輩出していたら、素晴らしい指導なのだと思いますがよくよく事実確認をしてみると、その怪物選手はたまたまその監督の指導者のやり方がはまっただけで、実はそれ以外の100名の選手には逆効果の指導をしていて、つぶれてしまっていたりします
多くの人を育成できるやり方を見つけるのってスポーツでもすごく難しいことだと思います。また、仕事上でもそうですよね。確実に部下の成果が出るようなやり方が分かっていたら、みんなこんなに苦労しません。

でも、指導者やリーダー、人を育成する立場になるのであれば、やっぱりそこを言い訳したり逃げてはダメだなと感じます。これはみなさんにというよりも自分自身への戒めも込めてになりますが。相手に「教える」という内容は最低でもこれは「絶対に合っていると思える、そしてその根拠をはっきり言えるないようにすること」それがないのであれば、教える立場であったとしても一緒に話ながら答えをみつけるそんなスタンスがいいんじゃないかなと個人的には思います。

ということで、明日からお盆の方もいらっしゃると思いますが、ぜひこのお盆の機会は、通常より時間あるかと思いますので「自分は教えるとき/指導するとき、どんなスタンスで教えている/指導しているのか?それって合っているのか?」これをぜひ振返ってみましょう。私も振返ります。全然だめなことだらけな予感しかしませんが。

このnoteはVoicyの過去の放送を文字に起こしたものです。
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最後に来週のお盆以降の配信について、これまでと少し変更がありますので次のチャプターでお話しします。

来週はお盆と言うことで配信はお休みさせていただき、再来週から徐々に配信を再開していく形にしました。
また、このチャンネルはVoicyのクリエイターズラボというコミュニティのメンバーで運営しているのですが、先日2期生も入ってきてくれたので、もしかしたら2期生の方もこちらのチャンネルで話すこともあるかもしれません。ぜひ楽しみにしていてください。

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