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国交省で管理職を務める女性の、キャリアブランクを経た転職体験

【告知】国家公務員への転職を考える方向けのキャリアフォーラムを開催します

夫は単身赴任中。自身は2児の子育て真っ最中という状況ながら、国交省にて管理職として活躍されている忍海邊さん。国交省に転職された当時は3年間夫のアメリカ駐在に帯同して帰国した直後。「子育て中、しかもブランクのある自分に興味を持ってくれる転職先はあるのか?」といった不安があったという。「カルチャーも何もかもが異なる国交省で、流れに乗って仕事をしていたら、少しずつ任される仕事が多くなってきて、今のポジションに辿り着いていました。」そのキャリア変遷をお聞きした。

<プロフィール>
忍海邊智子さん
国土交通省 航空局航空ネットワーク部首都圏空港課 東京国際空港企画室長。
2002年に神戸大学経営学部卒業後、JR東海に入社し、主に関連事業分野(駅開発、電子マネー、新規事業等)を担当。2014年に配偶者の海外赴任(米国シカゴ)のため退職。帰国後、国土交通省の中途採用(課長補佐職)に応募し、2018年4月に入省。都市局まちづくり推進課を経て、2020年7月に海事局総務課企画室長、2021年11月より現職。
※内容や肩書は2023年5月の記事公開当時のものです。



夫の海外赴任で一時キャリアを中断。でも意外なほど転職には影響がなかった

ー学生時代から政策に関わりたいという思いがあったのでしょうか。
学生の頃は、政策というよりは、企業経営の方に興味がありました。経営学部でマーケティングを専攻していたので民間企業の経営戦略に携わりたいと思っていました。新卒でJR東海に入ってからは国の方針に触れる機会があり、社会人になってからの方がイメージがついてきました。
新卒当時は、「社会貢献性が高い企業で働きたい」「日本をより良くしたい」という軸で就活をしました。鉄道会社に就職した理由は、日本の鉄道は時間に正確な面など、社会インフラを支えている存在であるとともに、関連事業にビジネスチャンスがあると思ったからです。今でこそ当たり前になった「エキナカ」という言葉も当時なかった中で、「駅の中にいろんな店が入ったら面白いのではないか」と思い、駅開発にとても興味がありました。同時期にJRも構想を持っていた訳ですが、まだ形になっていなかった段階で、同じ方向性を向いていたのはタイミングが良かったです。
現在は少し異なるようですが、私が入社した頃は、総合職採用だと、1年半ほどの現場研修の中で、駅員、車掌、運転士などを経験します。新幹線運転士の免許を取ったときは免許証に「国土交通省」と書いてあって、「そっか、国交省から免許をもらったんだ」と何だか感慨深かったのを覚えています。その後は、鉄道事業本部で駅業務(主に社員教育)を担当していました。でも、どうしても駅開発の仕事がしたくて。2年目の冬に社内起業家制度に応募し、駅の開発提案を出したら通りまして、事業推進本部に配属になりました。以降はずっとその部署に所属していました。手を挙げてよかったと思っています。
その部署では、エキナカの開発、新規事業、電子マネーなどを担当していました。ずっと勤め続ける予定でしたが、12年勤めたところで主人の海外赴任でアメリカのシカゴに行くことになり、退職せざるを得なくなりました。その当時はまだ、配偶者帯同による休職制度がなかったんです。辞めるときは葛藤がありました。全然辞めたくなかったです。子供もまだ小さく、一歳の時に復帰して育休明けの仕事にも慣れてきたタイミングでした。仕事は続けたいけど、家族のことを思うと辞めざるを得ない。「自分のキャリアはここで終わっちゃうのかな」という不安がありました

ー駐在帯同ならではの不安ですね。転職活動はどのように進められましたか。
帰国したのが6月下旬、8月くらいから仕事を探し始めて、国交省の内定をもらったのは12月です。翌年4月から働き始めました。
シカゴでの3年3ヶ月を経て帰国し、転職活動をスタートした時は、「数年のブランクのある自分に需要があるのかな、そもそも幼児を二人抱えた状態で仕事ができるのかな」と、とても不安でした。 

シカゴのダウンタウンにある「ミレニアム・パーク」のマギーデイリー公園にて

ー実際の企業からの反応はいかがでしたか。ブランクは影響しましたか?
転職活動を始めてみると、意外と大丈夫でした。民間をはじめ、複数の内定をいただくことができました。すごく心配していたので、「12年のキャリアは経験として捉えてもらえたんだ」ということが素直に嬉しかったです。英語力もプラス評価にはなっていたようですが、12年間のキャリアの方が価値を見出してもらえたようです。当時下の子がまだ1歳半くらいだったので、本当にこの状況で採用してもらえるのかな…とずっと不安でした。いろんな企業でいいリアクションをしてもらえて、ありがたかったです。 

ーその中で、霞ヶ関で働くことになったきっかけは。
とある転職サイトで国交省の課長補佐級を募集していて、ちょっと面白そうだなと思って応募しました。中央省庁で働くことはそれまで考えたことがなかったのですが、業務紹介の中で街づくりや運輸業などいろんなフィールドで仕事ができること、過去の経験が活かせることを知りました。関われるフィールドが広く、街づくりから航空まで、携わったことのないところまで関与できることに興味を持ちましたし、最後は政策に携われるというやりがいが大きな決め手だったと思います。
実はJRの同期に国交省出向経験がある人がいて、内定を頂いた後、少し相談をしました。「仕事は結構大変だけど、やりがいはあるよ」とアドバイスしてくれて、チャレンジしてみることに決めました。
実は霞ヶ関に転職で入れるなんて知らなかったんです。たまたま目にしていなければ、きっと今も民間企業で働いていたと思います。アンテナを高くしていないと、採用していることにすら気が付けない状態でした。

国交省に入る際には「街づくりの仕事がしたい」と話していました。運良く都市局のまちづくり推進課に配属され、課長補佐の立場で、民間の活力を活かした街づくりを推進するための金融制度などの政策立案を2年3ヶ月担当しました。予算と法改正がメインで、今までの経験を活かしながら、コワーキングスペースの整備等の都市開発事業に取り組みました。
その後は海事局総務課で企画室長になりました。海事局では、海事産業の基盤強化のための法改正や税制などを1年4ヶ月担当しました。
その後航空局に配属され、現在に至るまで、羽田空港の企画室長として空港全般の管理に就いています。まずは予算など、航空のイロハから勉強しました。1年目ではコロナ禍の水際対策で週末含め応援にいく機会などもあり、予算関連だけでなく、貴重な経験をさせて頂いています。5年間で3つのポストですが、すごく濃い経験をしています。フィールドが広い分、幅広い仕事ができていると感じます。

民間企業の企画業務と政策立案は似ている部分がある

ー同じ「企画担当」というお立場ですが、JRと国交省では仕事の内容に違いはありますか?
JRでのエキナカ開発の企画は、駅が決まっていて、乗降者数などのデータがあり、コンセプトを作って、どのようなテナントさんを集めるか、デザインにするか…という流れで決まっていきます。一方、国交省の政策立案は、まず世の中で何が求められているのかの分析から始まり、例えばスタートアップへの支援が求められているとなれば、都市開発事業として、コワーキングスペースを整備する、となります。仕事のやり方としては民間での経験をそのまま国交省で活かせている部分は大きいですね。政策立案は実はマーケティング要素を大きく含んでいます。ちゃんと調査しないと、身を伴わない政策になってしまうんですよね。なので、作っている企画の中身は全然違いますが、仕事のプロセスは活かせることが多いです。
世の中の課題を分析し、何が求められているのか知り、どのような政策を打つのか考える。エキナカであれば、駅にどういった機能が求められているのかしり、そのために何をするのか決める。ベースとなるプロセスは似通った部分があると思います。
企画プロセス以外に活かされているスキルとしては、多様なプレイヤーの中で一つのことを決めていく経験です。JRでは社内の多くの部署をうまくまとめていくだけでなく、電子マネーの相互利用など、他社との連携も経験しました。国交省では、民間プレイヤーとしてエアラインやグランドハンドリング事業者さんの他、自治体や航空局内のさまざまな課、他省庁など、共に仕事をするメンバーが非常に多岐にわたるため、しっかりとコミュニケーションをとって、仕事をしていくことが重要です。JRでやっていた関係者調整が数段レベルアップしている感覚です。学ぶことも多く、成長させてくれる場所だと感じています。

羽田空港にて

 ー国交省でのお仕事で一番やりがいを感じること、醍醐味は何ですか。
仕事が世の中に直結していることでしょうか。国の仕事というのは、世の中で起こっていることの問題解決をしていく最前線です。自分の仕事が最前線で世の中を良くしていっていると思えることは大きなやりがいです。
例えば、都市局に所属していた時は、「都市と多様性」というテーマでダイバーシティ懇談会が開催され、「居心地が良くなる歩きたくなる街づくり」のための施策を担当していました。法改正、金融支援などを進め、ちょうど1年が経過した際、自分が住んでいる区の広報誌に「ウォーカブルシティの実証実験が始まります」というリーフレットが入っていたんですよ。すごく嬉しかった瞬間です。自分が住んでいる街だけでなく、地元・大阪での取り組みなど、全国で広がっていくことが嬉しいですし、醍醐味だと感じます。

女性も昇進できる、意外なほど多様性のある環境

ー思ってたのと違うなあ、というギャップなどはありましたか?
良い点ではまず、女性が昇進できるということです。私自身は今「企画室長」という立場なのですが、元々強い上昇志向の持ち主でもなく、流れにのっていたらそうなっていたという感じです。”同期※”の中にも、女性で室長になられている方はいます。(※中途採用の場合、入省時に一定の査定により「新卒●年目程度」という扱いが決まる) 女性管理職比率は、すごく多いという訳ではないですが、JRと同じくらいです。
もう一つは労働環境ですね。やはり官僚というと残業が多いイメージはありました。入省時にはすでに働き方改革の動きがありましたので、「ある程度は改善されているのかな」という期待と共に入省しました。ところが、実は入省直後に夫が単身赴任となり、まさかのワンオペ育児になってしまいました。仕事と家庭の両立を軌道に乗せつつ、新しいことを学びつつ、現場を回さないといけません。2年目の頃には法改正があったので国会対応まで加わりました。流石にその際には、関西から両親に来てもらって手助けをしてもらいました…。でも周囲の方々や上司がサポートしてくれて、理解を示してくださってありがたかったです。コロナ禍でテレワーク体制が整ったことも伴って、現在はワンオペでもなんとか回せるようになっています。
それから、若手の意見などもしっかり政策立案に取り入れてくれる風潮があります。もちろん局にもよるとは思いますが、局長など上の立場の方も意外なほど気さくなところもあります。先輩も上司も後輩も、ものすごく優秀です。JRも素晴らしい環境だったのですが、改めて霞ヶ関はすごいなと思います。 

ー逆に入省後、苦労されたことはありますか。
ある程度覚悟はしていたけど、霞ヶ関ならではの仕事のやり方ですね。政策立案、予算、法律、税。これをどういった形で進めていくのか、最初はスケジュール感もわからず、手探りで進めるしかありませんでした。自分でできるようになるまでにはすごく苦労しました。研修もありましたけど、もっと事前に知る機会があればよかったと思います。
中途入省だと全てがゼロベースで始まるので、全てにおいてウェルカムに受け入れてもらえるとは限りません。正直、入省当初は「この人は仕事できる人なのかな」というような目線は感じました。だから、早めに成果を出さないといけないというプレッシャーはありましたね。これは民間企業間の転職でも同じかも知れませんが。実際にはコミュニケーションを取って信頼関係を構築すると、ちゃんと受け入れてくれる方ばかりです。

ーやっぱり新卒中心の組織ではありますか。
そうですね、でもディベロッパーや銀行など民間企業の出向者の方も意外と多く、みなさんすごく優秀で、意外なほど多様性のある職場でもあります。イノベーションは既存の知と新しいものが触れ合った時にできるものですから、民間の出向者、中途採用、そういった人材が霞ヶ関に融合していくとより良い政策に繋がると肌で感じます。これからも民間と相互の交流、移動は重要だと思いますね。
ただ、交流人事だと原則勤務期間は2年。所属は元の会社なのでどうしても「片足感」は出てきてしまいそうですよね。中途入省だと片足どころか、全体を通して突き進めないといけないという「やり切り力」がより必要になるので、中途入省でしっかり政策に取り組むキャリアにも魅力があると思います。

ー今後どのようなキャリアを思い描いていらっしゃいますか。
いろんな環境変化がありますが、その時を精一杯楽しむ、前向きに過ごしていくという心構えでいます。アメリカにいた時も、仕事はしていなかったけど、現地での出産・子育ても素晴らしい経験になりました。アメリカならではの休暇の過ごし方など、人生の財産になっています。だからこそ逆に、戻ってきた時にはすごく仕事をしたい気持ちがあったのだと思います。
国交省での仕事は大変な時もありますが充実しています。世の中に少しでも役に立っているのであれば、とても嬉しいですし、今の仕事はずっと続けていきたいですね。ただ、10年前、まだJRで働いていた時にはまさか霞ヶ関で働いているなんて思いませんでしたから、10年後、20年後にどこで何をしているかは全く想像がつきません。少しでも世の中の役に立てる仕事を、これからもやっていきたいです。


【編・写:大屋佳世子】


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