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素敵な言葉を抱きしめて眠る 僕はいつもそれに憧れ

ツイッターにはとりあえず添い寝フレンドの話と書いたけども、しっかり振り返ってみれば恋愛体験談になるかな。これは少し生々しくて、自分が思い出す時少し胸が痛むと同時に、心を捉えて離さない20歳の時の話。ほんの数ヶ月の関わりに終わった女の子との繋がりの、エモーショナルな記憶。

8年も経つと人なんて別人みたいに変わる、と自分を振り返って感じる。でもその度に同時にこの記憶を思い出す。この時の自分を思い出せば、どれだけ自分の表面が新たな一面が上塗りされ変わっていっても、元来の本当の自分を忘れずにいられる気がするから。

・当時の自分は長い引きこもり状態からようやく抜け出し始めた状態だった

まず前段階の話として、自分は高校3年の頃にうつ病を発症し高校を中退した。その辺りのことは今日のメインのお話を書く上での前置きにしては長くなってしまうので、またいつかゆっくり書くとして。そこから当時2年近くほぼ引きこもり同然の、中身の薄い生活を過ごした。

せめてバイトをしようとするも、そもそもうつの原因が人間恐怖症ゆえ、仕事場での人間関係のストレスに負けて(そもそもストレス耐性も極端に弱い状態)長く続けられず。

そのタイミングでたまたまバンドに誘ってもらって、そのメンバーと週1で集まってバカな話をするというのが大きな息抜きになっていき、少しずつ外へ出る勇気が湧いてきた。前向きな気持ちが起きてるうちに、生活リズムを変えるために精神障害者のリハビリ施設へ通うことにした。

それまで人との関わりが極端に薄かったのもあるし、単純に19歳で色恋的なモノへの憧れが強かったせいか、そこの可愛い職員さんを好きになってしまった。勿論、告白して叶う叶わない以前に御法度。誕生日にプレゼントを渡そうとしたら「決まりで受け取れないの」と言った彼女は、明らかに自分の気持ちを察していた。

なんとか自分の心を殺して、当の目的であるリハビリに努めた。かなり苦しい時期もあった、その当時凛として時雨のTKがソロで発表した“haze”の「今君が霧の中で 手に入れられないものに苦しむなら」というフレーズを何度も聞き貪って涙した記憶がある笑。

そして自分の本能が告げた「この施設にただ通うだけでは辛い目に遭う、今のうちに他の世界を見ろ」に従って、まだ整いきってない精神状態で無理矢理新しいバイトを始めた。施設に通う時間を減らして、なんとか前を向こうとした。仕事自体は苦しかったけど、人を想って叶わない気持ちに比べたら遥かにラクだった。そのタイミングで、この話の相手となる女の子が現れる。

・ツイッターで知り合った東京の子から京都で遊ぶ相手をしてほしいと連絡が来る

当時ツイッターを使い出して1年くらいの頃だった。そこで知り合った人と直接会うという経験もなく、同じ音楽趣味の人とやり取りするぐらいにしか使っていなかった。先述の必死に次のステップへ進もうとしていた2012年11月初旬、そこまで大してやり取りしたことがなかった一つ年下の、東京在住の女子大生の子からDMがきた、「今度関西を旅行するから京都を案内してほしい。」と。

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今思えば誰でも良かったのかもしれないけど、それでも浮ついた話と無縁な状態になっていた当時の自分は嬉しかった。「なんで俺なんやろ?」という疑問とか怪しさ以上に好奇心が完全に勝った。喜んで相手することにした。彼女が京都に到着するのが夜、自分もバイト終わりが夜だったので、夜通し遊ぶことになった。京都駅で合流した彼女は、ツイッターで上げていた自撮りよりずっと可愛かった。

自分ができる最大限のおもてなしプランを考え、オシャレな京風居酒屋で美味しいご飯を食べ、カラオケでお互いが好きなヘヴィなビジュアル系の音楽を歌って馬鹿騒ぎした。当時の自分の歌は今思えばヒドいレベルだったけど、持ち上げ上手な彼女の(おそらくは)お世辞を受け取って有頂天だった。

・この幸せな感覚は、こちらが一方的に感じただけのものだと受け取ろうとした自分に、彼女は...

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一睡することもなく明け方を迎えた深夜カラオケの後は、始発で彼女が行きたがっていた紅葉の嵐山へ。その時に彼女がおもむろに自撮りでツーショットを撮った。二人とも良い表情をしていた、なんならその時の自分は自分とは思えないぐらい良い顔をしていた。単純に「幸せ」という感覚を味わったのが数年ぶりだったのだと思うと無理もない。

相手もこの日は確かに楽しんでくれてたのだと思う。翌月12月の末には自分が行く予定だったCOUNTDOWN JAPAN FESがあり、そこで関東遠征するときは泊めてほしいと言ったら、喜んで受け入れてくれた。夕方まで一睡もせず楽しい話をしていたけど、ついに別れの時間がきた。

何も幸せを感じられない日々を送っていた自分にはあまりに強い刺激だった。別れた後、帰りの電車に揺られながら猛烈な寂しさが湧きあがったのを覚えている。その正体は「自分にとっては特別なこの時間も、彼女にとってはよくある暇つぶしの一つでしかないのだろう」と言う気持ちだ。普通の人生を生きている彼女には、これくらいの体験は日常的な範囲で、きっともっと素敵な刺激があるのだろうと。

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お得意の、感情を押し殺す努力を始めようとした矢先だった。すぐに彼女からメールが届いた「わたし、もうみつきくんに会いたくなっちゃってるんだけど!」。今にして思えば、小悪魔女子の常套句でしかない笑。けれど当時の不安定な自分の心を満たすには十分すぎて、あっという間に転がされてしまった。

その後数日関西に滞在し複数の人と過ごした彼女は、関西を経つ際にも「やっぱりみつきくんとの時間が一番楽しかったよ」と追い討ちをかけて俺を沼に突き落とした。恥ずかしいけれど、自分が恋に落ちたのは誰もが想像つくと思う苦笑。

・徐々に見えてくる温度差、それでも彼女の家に行くことに。

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彼女が東京に帰ってからスカイプで話すようになった、当初は明け方まで話している状態だった。幸せだった。けれど自分が彼女に思いが募るほど、向こうが冷めていくのもよくわかった。それに焦り頻繁に連絡しては、向こうが冷めていく悪循環。当時の自分の余裕のなさを呪いたい苦笑。

それでも会った時に決めた通り、COUNTDOWN JAPANに行った後に彼女の家に泊めてもらうことは変わらなかった。目的のバンドのライブを見終えた後、新宿駅で彼女と合流した。そこに現れた彼女は、明らかにもう1回目の時の楽しいオーラがない。少し気まずい空気で会話も弾まなかった。

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彼女の一人暮らしの家は八王子にあった。八王子という地名は知っていたけど、本当同じ東京とは思えないぐらい離れていて別世界だ。彼女の住むアパートはハイウェイとモノレール沿いにあり、深夜にも関わらず走行音が聞こえ、侘しい風景をより際立たせていた。12月31日の22時頃。あと数時間で年越しを迎えるとは思えなかった。

彼女の家に上がると、お酒を飲みそれまでと比べて少しだけリラックして談笑できた。ただ、彼女はあけっぴろげに「好きじゃない男をこの部屋に招いて、結局セックスしたことはある」とか「叶わないけど密かに想い続けてる相手はいる」と語った。多分、俺に「恋愛的な意味で深入りしてこないで欲しい」というアピールだった。一人の相手して真剣に恋愛したかった俺は少なからず寂しい気持ちになった。

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別々にシャワーを浴びて、一つのベッドで寝ることになった。彼女はきっと、一人の遊び相手として、抱かれる分には構わないし、そのつもりでいたのだと思う。けれど、当時「超」のつくほど真面目な生き方しか知らなかった自分は真剣に好きだからこそ、単純に付き合ってからセックスするいう手順で居たかった。そして、なし崩し的なセックスで彼女との関係が疎遠になることも嫌だった。

だから正式にまず告白した。彼女の返答は「遠距離恋愛は考えられない...」という曖昧なものだった。その時の自分は都合よく解釈したくて「フラれたわけじゃない...まだ可能性はある。」と受け取った。彼女は実際は「寂しさを埋めてくれる相手を繫ぎ止めるため」にそう言ったのも薄々気付きながら。

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結果ハグと軽くキスだけをして年を越し、朝を迎えた。欲を抑えるのは本音を言えば大変だった。けれど彼女は穏やかな顔で眠っている彼女を見たとき、こうしてよかったなと自己満足に浸った。

2013年の最初の朝。眩しい光が部屋に差し込む。外を眺めてみる。あまりに天気が良すぎて、富士山が見えた。そして聞こえてくるのはモノレールとハイウェイの車の音、そして猛々しい風の音。

自分はこの瞬間、知らない惑星に不時着してしまったかのような気持ちになった。なんて寂しいんだろう。こんな場所にたった一人で暮らしたら、きっと寂しくておかしくなってしまう。

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そして悟った。彼女はただ寂しい人なんだと。そして自分は、誰でも代わりが効くその寂しさを埋める相手の一人に過ぎないのだと。利用されてるようなもの。けれどその悔しさや怒りが起きないほど、この部屋から見える殺風景の寂しさったらなかった。

だからその時は、彼女のためになれるなら、この役割でもいいと思った。それくらい彼女と過ごしてきた楽しさも本当で、彼女のことが好きな自分がいた。

・この寂しい風景を見事に表した曲、THE NOVEMBERS“holy”

彼女の住む部屋の窓から見た景色、その近所を散歩した時に感じた猛烈な侘しさが忘れられない。このTHE NOVEMBERSのholyという曲を聴いて浮かぶ光景や匂いが、まさにそれを具現化している。

朝焼けの光、近所を流れる小川の音(アウトロのエフェクト処理はまさに小川の音のようだし、追憶に蓋をするような感覚になる)、遠くに見える山。寂しさゆえに封印していた幼少期の記憶を掘り起こしてしまうような痛さと、でも忘れたくない愛おしい気持ちが同居する。

“嫌いな言葉を繰り返して聞く 僕はいつもそれに怯えていた
素敵な言葉を抱きしめて眠る 僕はいつもそれに憧れ
綺麗な言葉を抱きしめて眠る あなたは
少しのことを考えていた
それだけで生きていけると思っていた
思っていたんだよ”

孤独であるからこそ、人は誰かと心を交わし合いたいと願うし、誰かの心の中に存在していたいと望む。そんな根源的な人の心を強く意識させられた瞬間だった。

また会おうと言ったものの、しばらく経って結局おれは彼女が俺に振り向くことがないことを痛感していくばかりで、正直にそれが辛いということを伝えた。彼女はやはりただ寂しかっただけで、悪い人ではなく、それ以上俺を繋ぎ止めようとはしなかった。そして「それでも、あの時抱きしめてくれた温もりは忘れられないし、大切だよ。」と言ってくれた。

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それもお得意の小悪魔発言なのかもれないけど、繫ぎ止める気がないのなら必要のない言葉だからきっと本当なんだろうと思ってる。当時は自分も余裕がなかったから勢いに任せて連絡手段も絶ったけど、本当は怒りもない。自分にとって特別な感情を味わえる経験をさせてくれたし、これがあってその後の幸せな大恋愛にも繋がったから。

その後、彼女がどこでどういう風に生きているか知らない。でもきっとあの寂しい部屋からは旅立ってる気がする。寂しさに怯えることのない穏やかな暮らしを送っていたら良いなと思う。

そして、俺はあの寂しい風景をまたこの目で見たいし、匂いを全身で感じたいと思うから、いつかあの街へ足を運ぼうと思ってる。そこに「人が人と繋がりたい」という純粋な感情を呼び起こす何かがあると思うから。