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闘う古着屋。激闘の翌日に。

4.22 新宿FACE。プロ格闘技団体KROSS × OVERが主催するKROSS × OVER25が開催された。初めての格闘技観戦。「もの」を扱うメディアがなぜ?そう思われるのも当然だろう。

今回の取材先は、RISEフェザー級ランカーでもあり、日本最大のヴィンテージの祭典VCMにも出店したオンライン古着屋Big Apple Storeのオーナー。そしてエンジニアとしても活躍する三刀流。松下竜之助氏。

VCM vol.4への出店から3週間後に格闘技の試合。短期間のうちに異なる領域で大きな仕事を終えた翌日。減量から解放された松下氏の大好物であり、ものときろくでも取材経験がある"OVERWHELM HAMBURGER & BAR STAND"にて活動の原動力と今後について伺った。

VCM vol4での出店風景
KROSS × OVER25勝利後、ファンの方に向けたポーズ

- 改めて昨日の試合、勝利おめでとうございす!

一番美味い顔が撮れるかと思います!(笑)

- 好きなだけ食べてください!

なににしようかな。前回食ったのがなんだったっけな?めっちゃ肉だったんですよね。

(店員:ダブルチーズバーガーですかね?)

ダブルチーズじゃなかったんですよね。一番大きいのがいいんですよね。

(店員:それならオーバーウェルムバーガーですね。)

じゃーオーバーウェルムバーガーに、プルドポークオーバーライス。で大丈夫です。

- もっともっと注文しちゃってください!

え!!?じゃーダブルチーズバーガーも付けてください!(笑)
あとチョコレートシェイクもお願いします。

- 3月末にVCMに出店して、昨日は格闘技の試合した。激動の1ヶ月間いかがでしたか?

いつも試合期間は試合から1ヶ月前に設定して、気持ちを高めて調整していくんです。今まで古着のイベントと被ったことがなかったので今回はキツかったですね。いつもVCMの初日夜は野毛で飲みまくるというのが全くなくて。仲の良い古着屋さんもたくさん来てたので寂しかったですね。(笑)

- 古着と格闘技をどういった背景で両立することになったんですか?

ルーツは、中学校の時にお母さんが「あんたもオシャレすれば?」とイオンで厨二病のようなハイカットのカラフルなバッシュを買ってきてくれたことです。そこからスニーカーを掘り出したら、カルチャーに繋がっていきました。元々音楽はHIP HOPが好きだったので、HIP HOPの服を真似したり。ラルフローレンが強いのもHIP HOPルーツです。

- 格闘技より先にファッションやHIP HOPがあったんですね。

はい。格闘技を始めた理由も腕っぷしが強い男に憧れたからです。HIP HOPが好きな奴ってヤンキーというか、ちょっとヤンチャなところあるじゃないですか。第一志望の高校に落ちて滑り止めの高校に入学したのですが、たまたま名門のボクシング部があったので入部しました。

- HIP HOPが好きだったのはなぜですか?

親父が昔の歌が好きで物心ついて最初に聴いた曲がTHE BLUE HEARTSの「リンダリンダ」だったんです。そこから人が知らない音楽を知りたくなって、ブラックミュージックからHIP HOPにのめり込みました。ラッパーたちのカラフルな服って、何を着てるんだろう?って調べたら、POLO SPORTSだったり。腕っぷしが弱かったんで、イカつさ・強い男に憧れましたね。

- お話を聞いていると、Big Apple Storeのラインナップは松下さんご本人をそのまま表現している感じなんですね。

まんまですね。本当に好きなものではないとプレゼンできないんですよ。その中でもラルフが嫌いになることは確実にないので、ラルフを基盤にしています。

- そもそもなんですが、Big Apple Storeの名前の由来はなんなんでしょうか?

Big Appleはニューヨークの別名なんです。僕たちも学生の時に憧れたのがニューヨークだったんで、誰かが憧れるお店になれたらいいなと。Big Appleってキャッチーで覚えやすいじゃん。って感じです。

注文したハンバーガーが到着。2ヶ月ぶりの揚げ物に悶絶する松下氏。

揚げ物なんて2ヶ月ぶりですね。前の3月17日の夜に試合があって、次の試合が昨日の4/21だったので、何も考えずに食べれる日が3日しかなかったんですよ。その次の週にヘルペスがめっちゃできましたね。(笑)

- 世界でも格闘家でもあり、古着屋でもあるのは松下さんだけじゃないですか?

それはそうかもしれないですね!販売者としては僕しかいないかもしれないです。

- エンジニアもされているんですよね?

そうなんですよ。某大手IT企業でエンジニアをしています。新卒は人材系企業に入社して、新規事業の立上をして営業部長になりました。ただ仕事のスピード感が遅かったりで、自分で作れるようになった方が楽じゃないか?と感じ、エンジニアに興味を持ち2年目に辞めました。エンジニアならオンラインで完結するし、格闘技もできるし、古着屋も円滑にできそうだなと。それからオンラインのスクールに半年通って今の企業に未経験で入社しました。

- それであの超有名企業のエンジニアをされてるってすごいですね。Big Apple Storeはいつ始めたのですか?

社会人になった瞬間に全く同じ趣味の服を着る高校の同級生と二人で始めました。「ラルフのコレクションを投稿している人はいるけど、ファッションや古着として表現している人っていなくない?」って話で盛り上がったんです。ラルフってコレクター界隈で、これとこれを合わしたらダメが強めに出るんですよ。「それをぶち壊したい。だって俺つえーしさ」ってノリで。(笑)

「ラルフって良いもの作ってるんだよ。」っていうのをみんなで知ってもらいたいんですよね。例えば、ラルフのシルクコットンなんて当時は注目されず売れてなかったんです。コム・デ・ギャルソンだってシルクコットンのシャツを作ってますけど、ラルフがすでにやっていて。ポニーついてるシャツやスポーツのイメージじゃなくてファッションとして提案したいなと。

- 始めた当初の評判はいかがでしたか?

オンラインでやってる自分が古着屋って言うのがおこがましくて仲の良い古着屋さんにも隠してたんですよ。でも、ある時「これ、竜ちゃん?」って。それで打ち明けたら「すごいの集めてるんだね!」って言ってくれて。少しづつフォロワーも付いてきていたので「何かしらお店に貢献できたら嬉しいです」って話をしたら「じゃーうちの店でPOP-UPしてもらっていい?」と言っていただけました。

POP-UPで初めて顔を出して、ちょっといい感じに名前が売れたんで「よっしゃー!」って打上げしていたんですが、ちょうどその時に格闘技の先輩から「プロのオファー来てるけど出てみない?」と連絡があって。「ベルト取れるなら出まーす」って返事をしたことで、今の僕の土台が決まりましたね。

初めてのPOP-UPを高円寺の古着屋HIMSELFで開催した際の写真(本人提供)

- 格闘技もそのタイミングでプロになったんですね。

もう抜けられなくなっちゃいましたね。実はお母さんには隠しているんです。大学3年生の時に白内障になってしまったんですが、どうしても続けたくて。お母さんに相談したら「大学4年で辞めるならいいよ」と。

一番仲良かったキャプテンともう一人にだけ伝えて、部員に黙ってボクシング部を続けました。それからもレギュラーは死守して、オリンピアンも出場する大学リーグ戦を最終的に勝ち越すことができたんです。そして引退試合の後に部員全員に白内障のことを打ち明けて、卒業して約束通りボクシングは辞めました。卒業後はお母さんにバレても趣味と言い訳できる程度にキックボクシングをしていたんですが、プロのオファーがきてしまったので隠さないといけなくなってしまいましたね。

大学時代の試合の1枚(本人提供)

- 一つ一つのお話が漫画みたいで面白いです。

Big Apple Storeの相方と知り合ったルーツも漫画みたいで面白いですよ。僕たち広島出身なんですけど、相方はヤンチャな人が多い呉(くれ)市の生まれで。高校1年生の時、まだ調子乗ってる奴ってぐらいにしか知らなかった相方がボクシング部の1個上の先輩と喧嘩することになったんです。

他の友達から「あいつ今日先輩の教室に乗り込むらしい。お前ボクシング部だし止めにこいよ。」って言われて行ったんですよ。そうしたら本当に漫画みたいに教室が格闘場みたいになってて(笑)案の定、先輩に綺麗にやられて歯とかぐちゃぐちゃになっちゃったんですけど。

1人で先輩の教室に殴り込みに行った、相方のことをかっこいいと思って、 怪我した相方の肩担いで保健室に連れて行きました。その時に相方が「ごめんな。先生には階段から落ちたことにしてくれ」って。こいつ本当にめちゃくちゃカッコいいなと思って、それから仲良くなりました。

- ヤンキー漫画みたいな話ですね。今も一緒にやられているんですか?

これも相方のカッコいいところなんですけど(笑)そいつは一つのことに凄く集中するタイプなんですね。ある時「俺やりたいことができた。勉強してこなかったから、いま勉強がめちゃくちゃ楽しい。資格とって経理の道に進みたいんだ」って言ってきたので「お前は両立できるタイプじゃないから、席は開けておくから好きなだけ経理の勉強してこい」と円満な状態で辞めてもらって。それから2年後に相方が「試験的でもいいからお前のところの経理やるよ」って、スタッフではなく経理として戻ってきてくれたんですよ。

- 漫画化したい(笑)話は少し変わりますが、松下さんご本人の今後の展望を聞かせてください。現在は格闘技・古着・エンジニアの三刀流ですが、集約するのか全て続けていくのか。

現状は個々で頑張らないと将来に繋がらないので全てやっていこうかなと。ただ将来的には法人化して同じ会社の別部門として動かしたいと思ってます。

格闘技に関してはジムを開きたいですね。大学時代の友人が日本チャンピオンになりましたし、アマチュアでも日本2位でオリンピック候補の友人もいるので、アマチュアボクシング・プロボクシング、キックボクシング、あと友人にレスラーもいるので、打撃系から総合格闘技までカバーできる凄く良いジム出来そうじゃない?と話をしています。そのためには各個人が説得力が必要なのでキックで色んなベルトを獲っていきたいですね。

- どれかではないんですね。

そうですね。エンジニアは保険的な部分もありますが。金に走ったらカッコ良くなくなっちゃうので。死なないようにしておけば、ずっとカッコよくいられるかなと思ってます。

- Big Apple Storeとしてお店を持つ計画などはあるんですか?

はい。実は店舗化を視野に入れ始めました。 オンラインショップとしてやりたい事はやりました。 今後やりたい事は店舗がないと難しいです。超明確な目標はないですけど、自分が好きなものを全力伝えられる場所で僕が好きな人・ものに集まってくれる方々を繋ぐ場所を作りたいなと。 基本的に、古着の部分では目標を曖昧にして、自分の気分な好きなものを形にする場所にしようと思います。

それこそ格闘技のスポンサーさんには新品の服の方やシルバーアクセサリーを作ってくれる方もいらっしゃるので、そういったアイテムを置いたら古着好きな方も見てくださることになりますしね。

- 松下さんの生き方って真似できるものではないかもしれませんが、みんなが憧れると思います。同世代や若い方に伝えたいことやアドバイスはありますか?

好きなことを好きだって表現した方がいいなと思います。うちのラインナップって全然変わってないんですよ。夏はラルフのアロハを出して、冬のラルフのジャケットと好きなヴィンテージとかギャルソン出して。オーナーこんなのハマってるんだなっていうアウトドアアイテムが出てきて。

好きなことを表現することに妥協をすると何も出来ないですよね。格闘技なんか特に人前で殴ったり殴られたり、なかなか理解されにくいものです。 現実的にも簡単に稼げるものでもありません。やるメリットなんかほぼないと思います。 でも、好きだから本気でやってます。こんだけやれば伝わるんだよって。あとシンプルに飲みの席でいつでも面白い話ができる人でいたいなと思います。一週間ぶりに会った友達に「お前、一週間でこんなおもろいことあったん?」って言われる人でいたいですね。

- 格闘技のファンと古着のファンは違いますか?

古着から格闘技に流れてくる事は少ないです。 でも、実際に会ったことないオンラインでの常連さんが、勝利賞で地元の特産物送ってくれたり、整体系のお仕事されてる方が、体の不調あったら来てください!と言ってくれたり、興味を持ってくださる方は多いです!

- 古着のお客さんに格闘家の一面を見てほしいと思いますか?

僕を通じて格闘技に興味を持ってもらったりしてくれたら嬉しいなと思います。 両方見てもらえるように頑張らないといけないですね。

- 逆に格闘技のファンの方が古着を買うことはあるんですか?

たまにありますね。「良い服があったら買うわ。」みたいな。格闘技のファンの方は、信用してる好きな選手からカッコいい服が買えるんだったらで買っていただけますね。

取材場所の深夜でも楽しめるハンバーガーショップ OVERWHELM HAMBURGER & BAR STAND

- ここからは松下さんを象徴するアイテムの紹介をお願いします。

昨日の試合で履いたパンツを持ってきたんですけど、パンツを見せたいわけではなくて、スポンサーの方々のパッチですね。スポンサーに限らず、僕に関わってくれている方々との繋がりの象徴です。自分だけでは何もできないので、この方々を含めた周りの人達のおかげで生きていけてます。今までスポンサー営業をしたことがなくて、いつも「スポンサーってどうやったらなれるの?」と聞いていただけて。すごく人に恵まれています。人に助けていただいてることを目視できるのがこのパンツなのかなと。

僕のことを応援してよかった。と思ってもらえるように、ちゃんと正当な形で有名になる。それで「あいつをスポンサーしてるんだ」って胸張って言ってもらえるように恩返ししたいですね。

- Big Apple Storeを象徴するアイテムはなんですか?

ラルフのアロハシャツですね。その中でもドラゴン柄は、僕が着ながら店頭に立っていることが多いのと、名前に「竜」が入っています。ラルフなのにイカついドラゴンで、限定ものなので数も少ないです。やっぱりラルフのアロハは欠かせないですね。

- ありがとうございます。スポンサーになりたくなってきますね!(笑)

是非よろしくお願いします。(笑)

- 最後に次回の古着のイベントや格闘技の試合について教えてください。

6月前後で古着のポップアップをやろうかなと思っています。多くの方にいらしていただけると嬉しいです。


Big Apple Store

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@ryunosuke_box 代表/オーナー
@big_apple_ryu1204 オーナーの趣味
営業時間 : 起床〜就寝
店舗 : 無し。オンライン。
お問い合わせはInstagramのDMへ

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