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ヴィジュアル系における白塗り文化について 〜その2:コープスペイント〜

その1ではピエロ(バンドではない)のメイクからの流れの白塗りの話をしましたが、もう一つの白塗りの起源はコープスペイントからの流れが強い、と推測します。

こちらは何十年も前から音楽シーン、とりわけブラックメタルやエクストリームメタルの界隈で一般的だった見せ方で、 白い肌に黒い隈取、バンドによってはそこに血糊や白黒以外の色味も組み合わせ、悪魔や死体などの邪悪や不敬なニュアンスを視覚的に表したものであり、残虐性のイメージを強めるものとなっています。
ヴィジュアル系は昔からメタルとは密接な関係にあるので、ここが発祥の一つであることは間違いないでしょう。そして、今ではメタルだけに留まらず、様々な音楽性のバンドの表現方法として取り入れられています。

このコープスペイントを始めに取り入れた人物としてはイギリスのロックシンガー、アーサー・ブラウンの名が挙げられます。 また、ノルウェーを始めとしたヨーロッパ圏のブラックメタルのイメージが強いかも知れませんが、下流に行けば行くほどメタルはもちろんメタル以外のジャンルにも派生していき、 KISSやMISFITS、日本では聖飢魔II、アマチュア時代のXあたりに行きつきます。
ことヴィジュアル系で言えばDir en greyやMadeth gray'll、Raphaelなんかの激しめの音のバンドが白塗り(に近いぐらい白い肌)だったのもその流れであることは明白ですし、 the GazettEのRUKIさんに代表される首の引っ掻いたような黒いメイクや、近年のヴィジュアル系に見られる顔半分だけの骸骨メイクなんかもこのブラックメタル×コープスペイントの延長線上にある、と考えられなくもありません。
ヴィジュアル系でいえばブラックメタルからの白塗りとその1で述べたピエロ(バンドではない)を発端とするアングラ系統の白塗りとをミックスした価値観の白塗りも存在し、NoGoDやキズ、マモノ、また犬神サアカス團あたりにも往年のヘヴィーメタルに影響を受けたプレイが見られたりもするのでこちらの流れにあるという考えも間違いではないのでは、という気もしなくもありません。

さて、ではそのコープスペイント自体はどこから来たのか。 こうなってくるともう歴史学の話になってくるのでヴィジュアル系が全然関係なくなってくる上に明確な文献が存在せず、9割方僕の憶測になってきますので、興味がない方はここまでで大丈夫です。


僕はコープスペイントの源流ーーーと言えるほど密接かどうかは分かりませんがーーーーの1つには「死者の日」があるのでは、とうっすら考えています。
「死者の日」発端は紀元前まで遡り、今から3000年程昔のメキシコを起源とする風習。
昔から祖先の骸骨を飾る習慣のあったメキシコでは、死者を弔うというよりは使者に捧げるお祭りのようなイメージで、 祭壇を華美に飾り付けたり、お面に派手なペイントをすることで、死者や祖先と共に心身を集わせるという祝祭がありました。
このお面というのが「死者の仮面」と呼ばれるもので、眼球周りの窪んだ部分や剥き出しの歯に白い肌と骸骨そのもの。
それだけではなく、そこにペイントを施す、という部分を切り取って考えれば、顔を飾るという部分での共通認識がある、と言えるのかも知れない。
ここまで書いていて思いましたが、俗にいう典型的な骸骨モチーフであれば別に死者の仮面じゃなくても昔からあっただろうし、そもそも「骸骨にペイントをする」と「ペイントで骸骨にする」じゃ全然ニュアンスが違ってくるな。この考察は話半分で読んでください。

話がだいぶ逸れましたが、 コープスペイントからの白塗り、というのは流れとしては真っ当な継承、と言えるかも知れません。
その2はこれで終わります。ありがとうございました。

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