【詩】牛


  牛

 おう 放火魔が漏らした小便 破水に似ている 液漏れした乾電池に降り注げば どこからどこまで体液なのか 分からなくなってくれそうな 段取りの悪い排泄者の 苦し紛れの殺虫ごっこに ライターの火を近づけるのが 善意
 放火 犯行予告が好きなラジオを 乳頭に押し当てている 牛のような女の脳漿 体液に似た味がしている 堕ろされて間もない 経血
 将来、兵士になるはずだった精子が、コンクリートの隙間で、雑草に食べられながら、走馬灯を眺めている
 生まれてすらいない胎児の経験 まるで人生気取りの内容が 繰り返し 覗き見されている
 おう 新しい火事を急いで消すため 妊婦が消防士を産もうと いきむ

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