岩本隆行(Takayuki Iwamoto)

人間の心と頭は言葉によってできていると思っています。 言葉によって自分の人生を切り拓く…

岩本隆行(Takayuki Iwamoto)

人間の心と頭は言葉によってできていると思っています。 言葉によって自分の人生を切り拓くことを探究しています。 ◆株式会社3in代表取締役CEO。起業家教育と地域創生事業を実施しながら、ビジネスや生活の基礎となる国語力の講座も展開していますhttps://3in.co.jp

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  • じぶんよみ源氏物語

    「源氏物語」のストーリーをたどっていきます。古典に馴染みのない方も楽しんでいただけるように、物語のポイントを抑えています。学生の方をはじめ、リカレントで学びたい方、ビジネスのコミュニケーションの題材にしたい方など、幅広く読んでいただくことを意識しています。

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掛詞は美しきダジャレ ~これぞヤマトの粋~

山口県下関市にある長府の街を歩きました。 ここは高杉晋作が奇兵隊を結成した地で、 毛利藩の城下町の風情が残っています。 街の中心にあるのが忌宮神社。 創建は西暦193年と書いてあります。 下関・壇之浦での源平合戦が1180年代。 そう考えると、 長府の歴史の深みがうかがい知れます。 忌宮神社から続く小径を歩くと、 乃木神社があります。 ここには乃木希典将軍が祀られています。 乃木希典は江戸で生まれ、 少年時代に長府に移り住み、萩で学びます。 幼い頃は、 泣き虫でいじめ

    • じぶんよみ源氏物語34 ~時の過ぎゆくままに~

      幼馴染の恋は美しい 前回に引き続いて 源氏物語、二十一帖「少女」の巻から。 真面目な男・夕霧のお話です。 父・光源氏の教育方針で 学問の道に進んだ夕霧でしたが、 その陰で、幼馴染との恋に落ちていました。 お相手は雲居雁。 内大臣の娘です。 内大臣といえば、かつての頭中将。 若かりし頃、光源氏たちと「雨夜の品定め」で 女性談義を繰り広げたやんちゃな貴族です。 内大臣は、光源氏の亡き妻・葵の上の弟で 夕霧にとっては叔父にあたります。 光源氏とは良きライバルでありながら

      • じぶんよみ源氏物語33 ~やむにやまれぬ大和魂~

        明けない夜はない 藤壺の一周忌が明け、 喪中を表す鈍色だった物語の世界が 藤の花の紫色に彩られていきます。 源氏物語、二十一帖「少女」。 宮中の神聖な行事で舞を披露する少女たちが この巻のヒロインです。 少女に恋するのは、夕霧。 光源氏と葵の上の間に授かった子です。 葵の上は、 光源氏の最初の妻でありながら、 六条御息所の嫉妬を買い、 物の怪に取り憑かれて亡くなる悲劇の姫君。 あの時、命懸けで産んだのが、この夕霧です。 それにしても、 この男君は光源氏の子でありなが

        • じぶんよみ源氏物語32 ~衰えぬエネルギー~

          熟成を重ねた人 年齢を重ねると 若かった時よりも少し消極的になるのは 当たり前のことかもしれません。 そんな中、 いつまでも心が若い人もいるようです。 源典侍という女性。 多くの恋を経験した彼女は、 還暦を超えてもなお、積極的です。 藤壺は37歳、六条御息所は36歳で 亡くなったことを考えると、 源典侍のパワーは、当時にして、 底知れぬものがありました。 色欲が闇を切り拓く 源典侍が初めて登場するのは、 七帖「紅葉賀」の巻で、 光源氏がまだ19歳の時です。 彼女は5

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        掛詞は美しきダジャレ ~これぞヤマトの粋~

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        • じぶんよみ源氏物語
          33本

        記事

          じぶんよみ源氏物語31 ~濃い灰色に染まった2人~

          高貴と庶民のあひだ 源氏物語きっての貴婦人である、 六条御息所の邸の庭には 朝顔の花が咲いていました。 一方、 河原院で物怪に取り憑かれた夕顔は、 「中の品」の女性。 この物語において、 朝顔は高貴な花であるのに対し、 夕顔は庶民的なイメージをもっています。 源氏物語、第二十帖「朝顔」巻のヒロインは、 文字通り、朝顔の姫君。 前の斎院です。 斎院とは京都の賀茂神社に仕える内親王で、 つまりは皇族の血を引く者。 いうまでもなく、高貴な姫君です。 ところが父が他界し、

          じぶんよみ源氏物語31 ~濃い灰色に染まった2人~

          じぶんよみ源氏物語30 ~かくしてタブーは破られた~

          物質主義の時代から聞こえる声 バブル全盛期の物質主義の時代。 そんな世の中に生まれた私にとって、 目に見えないものを信じることは、 ちょっとしたためらいもありました。 ところが、 源氏物語には、 占いがたくさん出てきます。 登場人物たちが判断に行き詰まった時、 占いに委ねる姿に触れると、 なんだか微笑ましくもありました。 そもそも光源氏が皇族から降りたのも、 父・桐壺帝が依頼した 高麗の相人の占いによってでした。 明石の姫君が皇后になるという判断も 宿曜、すなわち占星

          じぶんよみ源氏物語30 ~かくしてタブーは破られた~

          じぶんよみ源氏物語29 ~陰の中には必ず一点の光がある~

          高層ビルは見上げるためにある 生まれてこの方、 ほぼ田舎から出たことのない私。 上京すると、 人の多さだけでなく、 ビルの高さにまず圧倒されます。 地下鉄の階段を上って地上に出た瞬間、 首の後ろが痛くなるくらいに ビルを見上げるのですが、 颯爽とした周りの人々に気づいた途端、 何食わぬ顔を作って歩き始めるのです。 平安時代となると 地方の人が京都に行った時の衝撃は、 それはもう大きかったはずです。 高層ビルの代わりに、 強大な格差社会がそびえ立っていました。 人間の怖さ

          じぶんよみ源氏物語29 ~陰の中には必ず一点の光がある~

          じぶんよみ源氏物語28 ~正しいことが正解ではない~

          いちばん欲しいもの 光源氏は、 3人の子供を授かりました。 ①夕霧(葵の上) ②冷泉帝(藤壺) ③明石の姫君(明石の君) これは、かなり複雑で、 ②の冷泉帝をはじめ、 隠し子的な存在もあって、 けっこうドロドロしております。 何が言いたいかというと、 いちばん欲しい女性との間に、 子供ができなかったということです。 その女性とは、紫の上。 光源氏が生涯をかけて愛した 彼の正妻と言ってもいい人。 このことが、 物語ではとても重要な意味をもちます。 ホームシックの美

          じぶんよみ源氏物語28 ~正しいことが正解ではない~

          じぶんよみ源氏物語27 ~平和な戦い~

          武器よさらば 平安時代は 大規模な戦乱がありませんでした。 武士が台頭していなかったという意味で、 平和な時代でした。 ただ、 政治的な駆け引きは、もちろんありました。 その決戦の時に行われたのは、絵合。 左方と右方に分かれて、 それぞれの絵のコレクションを持ち出し、 判定を受ける、というバトルでした。 これが日本の戦いの原点だと思うと、 誇らしい心持ちになりますね。 帝の心をつかむのは、どっち? 源氏物語、第十七帖「絵合」巻です。 今回のバトルは、 冷泉帝の心

          じぶんよみ源氏物語27 ~平和な戦い~

          じぶんよみ源氏物語26 ~恋の終わり~

          同じ時間は続かない 私が20代の頃、 「変わる」という言葉に敏感でした。 変わりたくなかったのです。 ちょうど日本経済の成長の停止が顕在化し、 社会にはなんとなく危機感のようなものが 漂い始めていました。 その一方で、 きっとこの国は大丈夫に違いないという、 希望的観測も残っていました。 Windowsが普及し始めた頃で、 パソコンの操作が格段に楽になっていました。 電子メールだの携帯電話だの、 当時にしては最新のデジタル機器が登場し、 そういうものが人々の話題にな

          じぶんよみ源氏物語26 ~恋の終わり~

          じぶんよみ源氏物語25 ~こだまでしょうか~

          人は怖いもの 地元の中学生の方々と 交流する機会がありました。 たくさんの質問をいただいて、 中学生パワーに圧倒されました。 「学校をもっとより良くするために リーダーシップを身につけたいのに 他人の目が気になって怖い」 という声も上がり、 思春期を生きる瑞々しい感性に、 刺激を受け取りました。 何でも先進的なことをやろうとすると、 周りからの視線にさらされるのは、 どこでも見られる光景です。 それが、面白いことに、 それを最後までやり切ったら、 人々の評価も変わ

          じぶんよみ源氏物語25 ~こだまでしょうか~

          じぶんよみ源氏物語24 ~脇役と主役~

          少数派は切り捨てられるのか? 多数決の時代。 学校の校則の決定から国政選挙まで、 多数決は民主主義のルールと言われれば それまでです。 一方で、真の民主主義とは、 一人ひとりの権利が守られること。 多数決で敗れた人たちの声をどう汲み取るか、 ということも同じように大切なはずです。 えてして、 少数派は弱者になってしまいます。 長い物に巻かれることを余儀なくされるから。 その長いものが世の中の主流になっていく。 とはいえ、真実とは数の大小ではない。 むしろ、本質は、 弱

          じぶんよみ源氏物語24 ~脇役と主役~

          じぶんよみ源氏物語 23 ~必ず最後に愛は勝つ~

          プラス思考はエネルギー 目標を設定して、 そこに向かって積極的に行動することは、 理想の生き方だとわかっています。 同時にそれは、 心のトレーニングがいるからこそ、 理想的なのだということも、 経験上、よくわかっています。 現時点での自分自身と目標との間には、 「世の中」という現実社会が横たわっています。 人は他人と関わって生きていく以上、 自分ひとりの力だけで目標を具現化することは、 とても難しい。 「世の中」の方々が、 自分の理解者ばかりならいいですが、 それはそ

          じぶんよみ源氏物語 23 ~必ず最後に愛は勝つ~

          じぶんよみ源氏物語 22 ~プロの作家とは~

          空も飛べるはず 本物のプロ作家とは、 お金をたくさん稼いだ者ではなく、 書き続けた者のこと。 では、なぜ書き続けられるのか? それは明確な目的があるからです。 好きだからという単純な目的ではなく、 何かを伝えたいという衝動があるからです。 だから、ネタは尽きない。 プロの作家にとっては、 書くことは生きることと同義です。 今、私の本棚には、 小学館「日本古典文学全集」の 源氏物語があります。 ずっしり分厚い本が6冊。 学生時代の恩師は、 毎朝原文を少しずつ朗読されて

          じぶんよみ源氏物語 22 ~プロの作家とは~

          じぶんよみ源氏物語 21 ~出会いは風の中に~

          風の歌を聴け よくよく考えてみると、風って、 私たちの生活の中で色々なことを伝えます。 「風の噂」で情報が伝わるし、 「風邪」はウイルスを伝染させ、 五月は「風薫る」季節です。 八百万の神と言いますが、 日本人は風に命を見出し、 風の中に何らかのメッセージを 感じ取ってきたのかもしれません。 ロマンティックな感性だと思います。 目には見えないけど、動いている。 草木や波も風が動かしている。 たしかに神様のようにも見えます。 須磨にも風が吹いていた 光源氏の須磨での生

          じぶんよみ源氏物語 21 ~出会いは風の中に~

          じぶんよみ源氏物語 20 ~本来の自分がいちばん強い~

          強い人間 村上春樹の代表作「ノルウェイの森」に、 永沢さんというリアリストが登場します。 ハツミさんという彼女がいて、 その方は「理想的」とも言える女性です。 ある夜、 永沢さんとハツミさんと「僕」の3人で ディナーをとっている時、 永沢さんは、 俺は自分のことを 他人に理解してほしいと思っていない と冷徹に言い切ります。 他の連中は自分のことを 他人にわかってほしいと思ってあくせくするが、 俺は理解してもらわなくたってかまわない、 自分は自分、他人は他人だ、と。

          じぶんよみ源氏物語 20 ~本来の自分がいちばん強い~