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かなへび

かなへびとはトカゲの一種だ。日本のほぼ全域に生息し、私たちの身近にも住んでいる。愛くるしい瞳と流線の体のラインが美しい。私はかなへびを見かけるとつい追いかけてしまうくらい、彼らが好きだ。

 我が家の庭に除草剤を撒くのを止めて1年が経つ。その結果、庭の生態系は大きく回復した。大袈裟と言われようが構わない。この春から秋にかけて、庭で見かけた昆虫や爬虫類の数は2倍以上だ。子供達と庭で虫の観察をしようとすれば、すぐに10種類以上の生き物に出会えてしまう。瑠璃色カミキリムシ、オニヤンマ、大きなカマキリ。これまでは見かけなかった生き物に出会う度に、子供たちを呼んで一緒に観察した。野ネズミ、シマヘビ、モグラなどを見かけたときの妻の表情は何ともいえないものだったが、生き物がこの庭を選んでいるのだと嬉しくなった。
 中でも特に増えたのが、かなへびだ。彼らは天気の良い日は石の上や縁側に昇って日向ぼっこをしている。体温を温めるため、カルシウムを吸収するためだ。そのあまりにも無防備な姿と、目をつむって気持ちよさそうにしている表情がたまらなく好きだ。
 今年は小さなかなへびをたくさん見かけることができた。1歳の娘とそれを追いかけ、茂みに逃げ込まれてはアハハと笑う。小さなかなへびと娘を重ね合わせ「大きく育てよ」と心で願う。
  こんなにも生態系が改善されたと喜ぶ反面、今までどれだけそれを破壊してきたのだろうと思い至る。人間が作り出す化学薬品は、小動物にとっては核兵器も同然。草花を枯れさせる液体は土中に染み込み、微生物たちも殺してしまう。
 自然の生き物に想いを馳せることはSDGsの第一歩である。私たち大人にとっては、長年の虫嫌いがそのハードルを上げてしまうだろう。しかし子供たちにとってはどうだろうか。少なくとも、庭や通学路で見かける小動物と触れ合う機会くらいは大切にしたい。


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