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DAO_#5:DAO運営と資金調達の課題 - ガバナンストークンの狙い

企業が株式を発行し、それを売却することで資金を調達し、株主が企業を共同所有するのと同じように、DAOは「ガバナンストークン」を発行し、それを売却してETH(イーサ)等の資金を調達し、トークン保有者がDAOを共同所有します。DAOが企業と異なるのは、経営が概念的には自動化されたシステムによって行われることです。この単元では、DAOによる資金調達の課題について解説します。


NFTによる資金調達との比較

投資家らがトークンの二次流通の期待で引き寄せられ、出資者らの意図がプロジェクトの本来の目的から逸脱する可能性がある点では、DAOの資金調達はNFTによる資金調達と同じく、構造上のリスクを抱えていると言えます。DAOでの資金調達がNFTによる資金調達と異なるのは、ガバナンストークンの保持者が組織のガバナンスに明白に関われることです。(関連単元:NFTで資金調達をするには - 投資家にとってのメリットとリスク

ガバナンストークンの持つ役割と課題

■ガバナンストークンによるDAOのガバナンス

ガバナンストークンの現在の保有者は、DAOのガバナンスに参加する権利を持っています。ただし、その意思決定がスマートコントラクトの修正によってどう反映されるかには課題があり、拒否権をもつ支配者の出現を許したり、メカニズムに脆弱性があったりする恐れがあります。(関連単元:スマートコントラクトによるDAOは何ができるのか、重要な課題とは

■トークン保有者の問題

また、トークンの目的がガバナンスであるにも関わらず、その価格が上昇することを期待して再販の機会を待っているだけで、ガバナンスには興味を持っておらず、実際にガバナンスには関与していない場合も多く見受けられます。このことは様々なDAOにおける投票率からも明らかですが、大きな懸念事項です。

DAOの運営は、理論的には全てのトークン保有者によって行われるべきですが、現実にはガバナンスは影響力のある少数の人々だけが執り行い、組織に支配者がいるのと何も変わらない可能性があります。これは同時に、外部から買収しやすいということでもあり、ガバナンストークンの持ち分による投票という仕組みによって、本当に組織の自律性や自己決定性が実現されるのかにはいまだ大きな課題があります。

投資とガバナンスのギャップから引き起こされる懸念

■投資家の目的とプロジェクトの目的の食い違い

ガバナンストークンを保有する人々の多くが投資の観点から参加しており、そのためにガバナンストークンを購入した人々の中には、実際のDAOの運営に興味を持っていない、または理解していない人も少なくありません。このことは、投資とガバナンスという二つの異なる目的の間にギャップが存在することを示しています。

更に、トークンを購入する投資家たちの目的がプロジェクトの本来の目的から逸脱する可能性があります。例えば、投資家が高いリターンを期待してトークンを購入する一方で、DAOのプロジェクト自体が社会貢献や長期的なビジョンを追求している場合、その二つの目的は必ずしも一致しないかもしれません。

■長期的なリスクと不確実性

DAOに資金を投じることは、その自律性と透明性から見て新たなビジネスモデルとしての可能性を秘めています。しかしその一方で、ガバナンストークンを介したガバナンスの実施や投資家の意図の違いなど、まだ解決すべき課題が多く存在します。このような課題は、DAOの長期的な安定性や信頼性に影響を与え、投資家や参加者にとってはリスクや不確実性となります。

合同会社型DAOでガバナンスの課題と向き合う

ガバナンスの課題と向き合う一つの方法として、合同会社型DAOで運営するという方法もあります。

合同会社型DAOの場合、業務執行社員は組織の日常的な運営や重要な意思決定プロセスに直接関与し、業務執行社員の社員権トークン(ガバナンストークン)は同じ業務執行社員にしか譲渡できないようになっています。そのため、外部からの買収対策のほか、プロジェクトの本来の目的から逸脱した投票への抑止力になり得ます。

合同会社型DAOにおけるメンバーシップの区分

日本国内では、自民党デジタル社会推進本部web3プロジェクトチームなどがDAOの環境整備に向けて議論を進めており、今後、更に組織運営の幅が広がる可能性があります。環境整備とともに様々なユースケースの登場を通じて、DAOの課題が是正されていくことが期待されています。


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