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ブロックチェーン入門_#12:ブロックチェーンにおける五つの主要な課題

ブロックチェーンには様々な技術的な課題があります。それらはどういったもので、どのような対策が打たれているのでしょうか。一つ一つ、確認していきます。


ブロックチェーンの課題

ブロックチェーンの技術には、次の五つの主要な課題が存在します。

課題1:時間と資源の効率性

プルーフ・オブ・ワーク はブロックチェーンに耐改ざん性をもたらしますが、本質的にはくじ引きであり、当たる確率はその時々で変わります。そのため、ブロックが生成されるタイミングは正確には予測できません。(関連単元:「ブロックチェーン技術「プルーフ・オブ・ワーク」 - 改ざんを防ぐ」

ナカモト・コンセンサスは、そのようなプルーフ・オブ・ワークの累積コストを推定することで動作します。ただ、これまで正当な履歴ではなかったチェーンに費やされるコストが後から高まった際に、それまで正当とされていたチェーンの末端に近いブロックから無効化される恐れがあります。(関連単元:「ブロックチェーンの技術「ナカモト・コンセンサス」 - 歴史を一つに」

これらの理由で、厳密にはトランザクションを確定できない(ファイナライズできない)問題があります。Bitcoin(ビットコイン)の場合、商習慣的に6ブロック待つことで事実上の確定が成されたと判断しますが、それには1時間ほどの時間がかかります。

また、プルーフ・オブ・ワークは大量の電力を消費するため、環境負荷が高くなります。

課題2:情報の秘匿性

ブロックチェーンは検証可能性を全員に対して提供するため、トランザクションの内容が誰でも閲覧できる状態にあります。このため、プライバシーの保護が難しいという問題がありますが、秘匿化の技術の導入は可能です。

課題3:スケーラビリティ

ブロックチェーンは、1ブロック当たりのトランザクション量に制限を設けることが多く、かつブロック間隔が一定であることから スループット に限界があります。そのため、大量のトランザクションが同時に発生すると、ブロックへの組み込みが遅くなるという問題があります。大規模に適用される際には性能が低下することが懸念されます。

課題4:迅速なガバナンス

ブロックチェーンは自律分散的に開発・運用されているにも関わらず、全参加者に同じ処理をすることを求めています。そのため、一部で新しい仕様を試して、うまくいったら全体に適用するといった、インターネットのアプリケーションで通常行われているようなアジャイルな展開を進めることが非常に困難です。

課題5:インセンティブの一致

ブロックチェーンの安全性(いかなる方法でも記録を否定できない状態が保たれている度合い)は、 ネイティブトークン の価格に大きく影響されます。トークン価格が高騰すると参加者が増え、ブロックを作成するコストが上昇することにより安全性が高まりますが、価格が下落すると参加者が撤退し、安全性が低下する可能性があります。

ブロックチェーンの維持に関しては、このようにネイティブトークンの価格の上昇が望ましいのですが、ブロックチェーンの上で動作する スマートコントラクト のようなアプリケーションに関しては、実行手数料をネイティブトークンで支払うことから、価格の上昇は必ずしも望ましくありません。

このインセンティブの不一致が、アプリケーションのプラットフォームとしてのブロックチェーンの使い勝手に大きく影響する恐れがあります。

Ethereumにおける取り組み

Ethereum(イーサリアム)は後発のブロックチェーン技術であり、かつ実験的なマインドで開発・運用が進められており、上記の課題に対する解決策を模索しています。

課題1~4への取り組み

Ethereumでは、プルーフ・オブ・ステークへの移行によって電力消費を抑え、かつトランザクションの確定を可能にしたり、情報を秘匿しながら正しさを検証できる技術(ゼロ知識証明)を応用してプライバシーを守ったり、負荷分散の技術(シャーディング)やオフチェーンで多くの処理を行う「 レイヤー2 (セカンドレイヤ)」によりスケーラビリティを向上させることを狙ったり、提唱者であるヴィタリック・ブテリンを中心にガバナンスを行うことで頻繁なアップデートを可能にしたりといった試みを続けています。(関連単元:ブロックチェーンの課題解決になるか - レイヤー2編

課題5への取り組みと限界

また、Ethereumでは、スマートコントラクトの実行手数料としてネイティブトークンであるETH(イーサ)のみが用いられるようにすることで、必ずETHが買い支えられる設計を意図していると考えられます。

しかし、実際にETHが買い求められる理由は投機的なものがほとんどであり、暴落のリスクは免れません。ブロックチェーンの維持とその上のアプリケーションとで、参加者のインセンティブが不一致な状態にあることには変わりがありません。

次の教材では、課題1~4の解決策で少し登場したプルーフ・オブ・ステークについて解説します。非常に重要な概念なので、誰かに説明することが難しいなと思う方はぜひご確認ください。


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