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ブロックチェーン入門_ #コラム:マイニングを個人がするには?暗号資産を得るよりも大切なこと

Bitcoin(ビットコイン)に代表される、ブロックチェーン上の取引データを承認し新しいブロックを生成する時に、膨大な量の反復計算以外では解けない計算式の解を求め、ブロックチェーンの連続性の正しさの担保に利用する仕組みを、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)やマイニングと言います。ブロックチェーン戦略政策研究所の樋田桂一代表は「マイニングは仕組みやプレーヤーを変えながらもずっと続いていくものです。暗号資産(仮想通貨)を報酬としてもらえることに注目されがちですが、ブロックチェーンエコシステムの維持の役割と最終的な投票権をマイナーたちが握っていることに注目すべきだ」と言います。個人がマイニングする上で知っておくべきことを樋田さんにたずねました。

個人でやるなら「プールマイニング」か「クラウドマイニング」

――2009年1月3日にBitcoinの最初のブロックである「ジェネシスブロック」が生成され、14年の月日が経ちました。マイニングはどのように変わってきたのでしょうか。

樋田:10年くらい前であれば、皆さんが普段使っているようなパソコンでもマイニングができましたが、今はASIC(Application Specific Integrated Circuit、エーシック)という専用チップを使ったマイニング専用マシーンを使わないと厳しいですし、マシーンも1台だけでなく複数並べないとマイニングができないほど競争が激しくなっています。個人でマイニングをする「ソロマイニング」ではなく、グループでマイニングをして報酬をシェアする「プールマイニング」が多くなっています。企業に投資してマイニングを代行してもらい、配当として利益を得る「クラウドマイニング」がありますが、詐欺被害の報告もあるため、企業を見極めないといけません。また、 Ethereum (イーサリアム)は2022年にPoWを終了し、膨大な計算が不要で(電力消費が少ない)、暗号資産の保有量の多さをブロックチェーンの連続性の正しさの担保に利用するプルーフ・オブ・ステーク(PoS)という仕組みに移行しています。

――樋田さんご自身はマイニングをしていますか。

樋田:2013年頃、自分でBitcoinのノードを立ち上げて動かすことが大事だと思い、パソコンに入れてマイニングをしようとしたことはあります。いわゆるソロマイニングだったのですが、全く解が発見できず、3日ほど放置していました。比較的マイニングが成功しそうなアルトコインを選んでやった時は報酬を獲得できましが、今はやっていません。ただ、例えばFUELHASH(フエルハッシュ)のようにマイニングマシーンの販売や運用、 レンディング などを行う企業とはつながりがあります。FUELHASHは政治的に安定している電気代が安い国として、アメリカやカナダ、ノルウェーなどと提携してマイニングを展開しているように、レンディングを展開している業者の多くは海外展開が中心になります。

マイナーがエコシステムの決定権を握る

――マイニングはどのような国が先行しているのでしょうか。

樋田:以前は中国に計算量(ハッシュパワー)を持っている企業やグループが多かったですが、中国人民銀行が2021年5月にマイニング禁止の方針を打ち出し、マイナーが中央アジアのカザフスタンに流れたという経緯があります。今はアメリカやロシアなど各国に分散されています。計算に膨大な量の電力を使うマイニングの収益は電気料金との差額のため、同じマシーンを使うなら電気料金が少ない国が有利です。その意味で、電気料金が上がり続けている日本でやろうとすると、メリットが薄いと言えるでしょう。

――暗号資産を所得する以外にもマイニングによるメリットはありますか。

樋田:メリットと言うよりも、エコシステムに加わることの意義はとても大きなことだと思います。マイナーはブロックチェーンを承認し、真正性を担保しつつブロックをずっとつないでいく作業をする人たちであり、この人たちがいなければパブリック型のブロックチェーンを動かすことはできません。もう一点、エコシステムの決定権はマイナーたちが握っています。例えば2017年に、 スケーラビリティ 問題を解決するために、ブロックサイズを1MBから拡大するかどうかという議論がされた際、マイナーたちの投票でブロックサイズを維持した上で別の解決策を模索することが決まりました。話が飛躍しているかもしれませんが、ブロックチェーンを用いたサービスがより人々の生活に浸透した時、計算量を持っていることが国の安全保障上の問題になってくるかもしれません。今は計算量の偏りが注目されていますが、将来的には国で考えなければいけない問題になるのではと見ています。

2024年に予想されているBitcoin半減期の影響は?

――個人がマイニングをする際、電気料金もそうですが、暗号資産のトレンドを見極めることも重要です。例えば、2022年はBitcoinを含む暗号資産市場の下降トレンドが続いていました。他に注意すべきことはありますでしょうか。

樋田:Bitcoinの場合は半減期の問題ですね。市場に新たに供給されるBitcoinの量が、4年に1回、半分になる時期があります。マイナーの報酬が半分になるため、マイニング業者の競争がさらに激化します。これまでの半減期を踏まえ、2024年に4回目の半減期が起きると予想されています。前回の2020年の傾向を見ると、半減期が終わると価格が上昇していますので、流れをよく見ることが大切になります。あとはマイニングマシーンの進化です。2年もしたら新しいマシーンが登場するくらいなので、費用対効果を考えながらマシーンをリプレイする必要があると思います。

Bitcoinの価格変動(出典:ビットコイン(BTC)価格・チャート・時価総額 | CoinMarketCap)

――マイニングには大量のコンピューターが稼働することで消費電力が莫大なものになるという課題もありますが、今後、マイニングはどう変わっていくと思いますか。

樋田:なくなることはなくずっと動き続けると思いますが、環境問題の観点からマイニングの電力消費に対する規制等が議論される可能性は高そうだなと思っています。ですが個人的には、例えば送金の観点で言うと、マイニングのコストの方が既存の金融サービスよりも安くなるケースもあり得るのではと思いつつです。Bitcoinを世界中に送金できるサービスは、既存の金融機関ネットワークの送金手数料や店舗運営費、人件費などを合わせたものと比較すべきだからです。また、ブロックチェーンの連続性の正しさを担保する点においては、PoSよりもマイニングの仕組みの方が計算量(電力)に裏付けられている分、継続性や堅確性が高いかもしれません。いずれにせよ、マイナーは表にこそ出てこないですが、ブロックチェーンの真正性の維持に非常に大事な存在であることに変わりはありません。前述した安全保障上の問題ではないですが、将来に続くものなので、日本でも各地でマイニングができるような形を模索したいなと考えています。


取材協力:樋田桂一

大学在学中、東京めたりっく通信株式会社に入社。職業能力開発総合大学校 電気電子系 電子工学科を中退。14年1月にRising Bitcoin Japanを立ち上げ、ビットコインの普及のため講習会等を積極的に展開する。同年9月に発足した一般社団法人日本価値記録事業者協会(JADA)に事務局長として参画。16年4月にJADAは一般社団法人日本ブロックチェーン協会(JBA)へ改組され、18年10月まで事務局長として活動する。22年1月に株式会社ブロックチェーン戦略政策研究所を設立。同月、JBAアドバイザーに就任。

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