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NFT_#4:NFTマーケットプレイスの現状と課題を検証する

NFTが広く流通するようになるにつれ、NFTを売買、交換できるオンラインプラットフォームであるNFTマーケットプレイスもシェアが広がっています。世界最大規模の取引量を誇るOpenSea(オープンシー)を踏まえて、NFTマーケットプレイスの構造と課題を解説します。


NFTの起源:チケットからコレクティブルへ

まず、NFTの起源を考えてみましょう。NFTを発行したり移転したりするために最も一般的に使用されているスマートコントラクトの規格であるERC-721は、もともとトークンを何かのチケットとして使用するために設計されました。ERC-721の標準文書にて、NFTの代わりとなる単語として「権利証(deed)」や「チケット(ticket)」が挙げられていることからもそうした背景がうかがえます。

NFTが大衆に知られるようになったきっかけは、2017年にリリースされたCryptoKitties(クリプトキティーズ)です。このゲームでは、ユーザがバーチャルな猫を購入し、収集し、育て、売却し、繁殖させることができます。この頃からNFTはむしろ収集の対象となる品物、すなわちコレクティブルの交換システムとして使用されるようになりました。そこで注目されたのがNFTマーケットプレイスです。

主要なNFTマーケットプレイス:OpenSea

数あるNFTマーケットプレイスの中でも、2017年に設立されたOpenSeaは、よく知られているNFTマーケットプレイスの一つです。

このマーケットプレイスでは、NFTは固定価格か、あるいはオークションを通じてユーザ間で直接売買されます。Rarible(ラリブル)、CryptoPunks(クリプトパンクス)、日本のSBINFT MarketやAdam byGMO等、NFTを発行(ミント)し、販売し、購入する場所として多くのマーケットプレイスが存在しますが、OpenSeaはその高い流動性により、巨大かつ独占的な地位を占めています。流動性の高さが多くのユーザを呼び込み、多数のユーザの存在が更に高い流動性をもたらしています。

NFTマーケットプレイスが抱える課題

■開放型マーケットプレイスの問題:剽窃と偽造・捏造

OpenSeaのように、ユーザの行動が制御されない開放型のマーケットプレイスでは、他人の作品をNFT化して販売する剽窃や、偽物など存在しない商品についてのNFTを作る偽造・捏造を避けることが困難です。

■キュレーションされたマーケットプレイスの問題:信頼への依存と自由の制限

一方、出品が管理され、ユーザの自由が制限されるようなマーケットプレイスでは、管理者への信頼が必要となります。しかし、そもそもNFTでは発行者への信頼が何にもまして重要であり、他人や組織への信頼を必要としない、トラストレスな状態でシステムを運用することはできません。同じようなメタデータとリンクしているトークン群の中で、この<コントラクトアドレス、トークンID>のNFTが本物であると証言する、信頼できる誰かが必要です。

■NFTロイヤリティ

NFTについて世間で言われている利点の一つに、NFTが転売され二次流通が起きると、その販売額の一部が元々の作者に還元される、というNFTロイヤリティの考え方があります。しかし、この仕組みは実際には未だ発展途上にあります。

既存の規格であるERC-2981はマーケットプレイスにロイヤリティの額を知らせるだけのもので、実際にその通り支払いをするかどうかはマーケットプレイスの判断に任されています。一方、ERC-4910に基づく「ロイヤリティ付きNFT」が間もなく標準化されます。これはERC-721標準の拡張を介してNFTとロイヤリティを直接結びつけるものであり、作者が正当に受け取れるべき支払いをマーケットプレイス等の中央が操作または迂回するのを防ぐことを目指しています。

しかし、こうした標準がどの程度受け入れられるか、そしてそれがマーケットプレイスの構造や運用にどのような影響を及ぼすかは、まだ確定的なことは言えません。

NFTマーケットプレイスの未来に対する懸念

NFTマーケットプレイスの成長とともに、剽窃や偽造・捏造の問題、そして権利者の報酬システムの透明性や公正性への懸念が高まっています。これらの問題は新しい技術や規範、標準化によって解決される可能性がありますが、現状ではこれらの解決策がどの程度効果を発揮するかは明確ではありません。

また、OpenSeaなどの一部のプラットフォームが巨大な市場シェアを占めていることは、健全な競争を阻害し、マーケットプレイスの多様性やイノベーションを制限する可能性があります。これらの問題に対処するための新しい規制や技術が必要となるでしょう。

次の第5回では、NFTマーケットプレイスのOpenSea(オープンシー)などで採用されているLazy Minting(レイジーミンティング)について、メリデメを整理しながら解説します。


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