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ブロックチェーン入門_#コラム:パブリックとコンソーシアム、運営事業者が語るメリット・デメリット

ブロックチェーンを基盤にした DApps を開発する際、 パブリックチェーン と コンソーシアムチェーン 、どちらのブロックチェーンを選べばいいのでしょうか。両者は管理者の有無や取引の合意形成などが異なり、得られる効果や検討すべき課題も異なります。「パブリックブロックチェーンの恩恵をより多くの人に」をパーパスに掲げる株式会社HashHubの平野淳也CEOと、コンソーシアムチェーンを用いた「ibet for Fin」などを展開する株式会社BOOSTRYの佐々木俊典CEOに、それぞれの立場から語ってもらいました。
※本記事はそれぞれ取材したものを編集しています。


コンソーシアムで自由度を担保するには

――パブリックチェーンとコンソーシアムチェーン、それぞれを選んだ理由を教えてください。

平野:HashHubはパーパスに「パブリックブロックチェーンの恩恵をより多くの人に」とあえて「パブリック」を強調していますが、その理由としては、参加する人数や開かれた性質など、技術としての革新性やよりインパクトを与えられるのがパブリックブロックチェーンだと思っているからです。

佐々木:中間者の介入なしに自由な取引ができるという意味で、BOOSTRYも本当はパブリックチェーンでできるならやりたいというのが本音ですが、 ST を取り扱うことを考えると、取引を制御できないリスクの方が大きいです。一方でコンソーシアムチェーンでも、設計次第で取引の自由度をパブリックチェーンと同水準で確保できると考えています。

――コンソーシアムチェーンでも取引の自由度を担保できるという具体例を教えてください。

佐々木:コンソーシアムチェーンは特定複数の企業で運営するため、業界横断の協賛を得られないとワークしません。業界横断だと競合他社と連携することになるので、それができるかどうかがコンソーシアムチェーンの勝負どころです。BOOSTRYが展開するSTの発行と流通に特化したコンソーシアム型チェーンの「ibet for Fin」は、それにこだわった仕組みになっています。ibet for Finコンソーシアムは2023年4月現在、15社が共同運営企業として参加していますが、特定の企業のサービスを使わないと駄目というものではなく、例えばBOOSTRYを排除しても成り立つ仕組みを採用しています。それくらいきっちりと作らないと複数の企業に参加していただけないと考えています。また、ブロックチェーンの良さの一つとして、誰でもアクセスできて自由に新しいものをどんどん作ることができるという開発環境が挙げられますが、ibet for Finでは自社での追加開発が自由にできます。この二つの観点が担保されていたら、STに関しては、パブリックチェーンと同じような運用をコンソーシアムチェーンでもできるのではないかと個人的には思っています。

ibet for Finは独占的組織のいない分散型のセキュリティ・トークンを取り扱うブロックチェーンです。
(出典:株式会社BOOSTRY)

パブリックも制御できる

――開かれた環境という意味でパブリックチェーンのメリットを語っていただきましたが、パブリックチェーンにはどんなところに課題があると思いますか。

佐々木:不特定多数の参加が可能なパブリックチェーンには、「 スケーラビリティ 問題」があると思います。その解決策として レイヤー2 が開発されていますが、ブロックチェーン以外のオフチェーンでトランザクションを実行するという意味では、誰かがコントロールや制御をしていると言えるでしょうし、レイヤー2を作る労力とコンソーシアムチェーン運営の労力はあまり変わらないのではと個人的には思っています。

平野:レイヤー2にも未成熟なところがあると思いますが、流通する金額もそこそこ大きくなってきていますし、これからどんどん技術革新が進んでいくと思います。いずれ未来に使える技術ではなく、今まさにディプロイされて、数千億円という資産が取り扱いされていて、色々なアプリケーションがレイヤー2で動いています。これはたった2年前には全くなかった光景で、そのぐらい急激なスピードで進化しています。

――レイヤー2、もしくはさらに他のレイヤーが登場するかもしれませんが、今後、技術革新が進んでいくことに期待したいですね。そうなると、課題となるのは取引を制御できないという点だけだと思いますか。

平野:全く制御ができないわけではありません。例えば、2023年1月にパブリックブロックチェーン上でステーブルコインを用いて米国債など米国のETFに投資ができる「Ondo Finance」のサービスが始まりましたが、Ondo Financeでは本人確認(KYC)と反社チェック(AML/CFT)などの条件をクリアした投資家しか取引ができないようになっています。その意味で、制御に関しては解消可能なデメリットと言えるのではないでしょうか。

運営事業者から見たブロックチェーンの魅力

――パブリックチェーンかコンソーシアムチェーンかは問わず、ブロックチェーンの良さはどんなところだと感じていますか。

平野:そもそもブロックチェーンはパブリックだろうがコンソーシアムだろうが、新しい技術で開かれたネットワークの性質を持っていて、そのエコシステムが今この時もどんどん成長しているというところだと感じています。

佐々木:基本的には ピアツーピア (P2P)なところだと思います。ブロックチェーンを用いたサービスを考えるにあたり、権利をP2Pで発行したり流通したりできるかどうか、それを将来像に描けているかどうかが、ブロックチェーンを使うかどうかの全てだと思っています。P2Pを全く将来像に描けないなら、ブロックチェーンを使う意義はないでしょうから。

――これからブロックチェーン事業を始めようとしている人にメッセージをお願いします。

平野:私がブロックチェーンに関わるようになって10年ほど経ちますが、この10年だけでも非常に大きな変化がありました。当初は基本的に怪しいものという印象が強かったですし、取引所としてマウントゴックスはありましたが、今はもうなく、ブロックチェーン関連の会社で黒字の会社は1社もなかったと思います。Bitcoin(ビットコイン)が産業になったのはこの10年の大変化と言えるでしょう。暗号資産(仮想通貨)やWeb3などの勉強を始めると、新しい単語がたくさんあり、必要な知識がどんどん増え、ときに金融市場の影響もダイレクトに受けます。やってみたものの分からないと感じてしまうかもしれませんが、技術としてこれだけ社会にインパクトを与えるのはなかなかないですし、そこから色々なものが生まれることを私は確信しています。

佐々木:AIに対しても言えることですが、技術ありきで始まると無理が生じてしまうと思います。例えばP2Pの課題があった時に、中間者を排除することに意義が出るものかどうかをしっかり分析し、課題解決の方法にブロックチェーンがなり得るというような流れで考えるべきことだと思います。


取材協力:株式会社HashHub

パブリックブロックチェーンの可能性を最大限に引き出し、社会に価値を届けます。ブロックチェーン総合企業として、専門家のリサーチをもとにWeb3業界の最新動向やマーケットレポートなどを配信する「HashHubリサーチ」、暗号資産(仮想通貨)レンディングサービス「HashHubレンディング」、最先端の暗号資産・ブロックチェーンプロジェクトが集う「HashHubコワーキングスペース」、三つの軸で事業を展開しています。

取材協力:株式会社BOOSTRY

ブロックチェーンなどの先進的なテクノロジーで新時代の資金調達モデルを構築し、挑戦者とファンがもっと自由に、もっと楽しくつながり合えるプラットフォームを創造しています。ブロックチェーン技術を用いて有価証券の発行等が行われるコンソーシアムチェーンの「ibet for Fin」や、証券トークンの取扱いに必要な各種機能を包括して提供する、金融機関向けエンタープライズソリューション「E-Wallet」など、様々なプロダクトやサービスの開発を行っています。

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