見出し画像

DAOを始めてみよう(1)DAOの設計を固める(コラム)

DAOはWeb3プロジェクトやビジネスを立ち上げるための手段としてますます人気を集めており、開発者やプロジェクト関係者からの注目を集めています。実際にDAOを始める場合、具体的にどんなことをしたらいいのでしょうか。このコラムでは、DAO構築の検討から必要なツールまでを紹介します。

なお本単元は、ブロックチェーン開発プラットフォーマーであるAlchemy(アルケミー)が2022年3月に発表した「How to start a DAO」をベースとしています。


1.DAOの構造を決める

まず、DAOを構築する理由とDAOの構造について検討しましょう。著名なベンチャーキャピタルである、アンドリーセン・ホロウィッツのブログ「Building and Running a DAO: Why Governance Matters」では、「DAOがうまく機能するたびにその周りは熱狂的な雰囲気に溢れる」と述べています。組織やコミュニティ、プロジェクトの形態にかかわらず、DAOを適用しようとする人もいますが、必ずしも分散型構造での運営が適しているとは限りません。

そこで、Alchemyでは以下のようなチェックリストを作成しました。これらのチェックリストを検討することは、DAO構築プロセスの次のステップである、トークンの割当と報酬の決定に役立ちます。

・あなたのDAOは何を達成したいですか。短期的・長期的なビジョンは何ですか
・あなたの組織は非階層的な所有構造を必要としますか
・あなたのDAOはどのように意思決定を行いますか
・あなたの業界においてDAOで解決できる課題はありますか
・DAOはあなたのコミュニティ、ユーザー、顧客に何か利益をもたらしますか
・DAOを立ち上げずにビジネス構築は可能ですか
・あなたが成し遂げたいと考えていることを以前に実行した人はいますか
・DAOを立ち上げるために、技術的・開発的リソースはありますか
・暗号資産市場の下落相場を乗り切れますか
・あなたはコミュニティ主導のDAOを構築したいですか。もしそうなら、コミュニティはどのようにあなたのビジョン構築を助けますか

DAOは黎明期であるため、未開拓な事例が多くあります。しかし、上記のチェックリストに回答することで、DAOで達成したいことがより明確にイメージできるようになるはずです。

2.構築したいDAOのタイプを決める

次にどのようなDAOを検討するか決めましょう。DAOとして何を行うか(プロトコルを管理するのか、コレクターの集まりなのか、共同で投資を行うかなど)を検討する上で、一般的にDAOは以下のように分類できます。それぞれトークンの有無やトークンの配布方法なども異なります。

・プロトコルDAO:プロトコルの維持・運用・管理を行うDAO
・グラントDAO:DAO資金を用いて非営利寄付を管理するDAO
・ソーシャルDAO:意見交換の場など交流を主とするDAO
・コレクターDAO:DAO資金を用いてNFTなどのコレクションを行うDAO
・ベンチャーDAO:DAO資金を用いてDeFiなどに投資を行うDAO
・メディアDAO:コンテンツを提供するメディアなどをDAO化したもの
・エンターテイメントDAO:非中央集権的なエンターテイメントやイノベーションを目的とするDAO

3.DAOトークンの使用例

次にDAOトークンの割当について、コミュニティとの関係や長期的なビジョンに特化した場合を戦略的に考えましょう。初期段階からトークン設計や配分を正しく行うことで、投資家に魅力的な提案ができるようになり、効果的な資金調達が可能になります。また、過剰な資金調達を行わず、コミュニティにもトークンを与えることで、最初の支援者やコミュニティからの賛同を高められます。以下はDAOトークンの使用例です。

・DAO貢献者への報酬及び将来的なインセンティブ付与
・DAOガバナンスとDAOの方向性に関する投票
・コミュニティに対するその他の利益や機会の提供

DAOトークンによって、ユーザーがDAOの成長に向かって積極的に参加し、成功に対して投資できるようになります。DAOトークンにガバナンスや議決権を付与することは必須ではありませんが、多くの場合、重要な問題への投票ではコミュニティが優先される傾向にあります。

例えば、NFTマーケットプレイスを立ち上げたLooksRare(ルックスレア)では、NFTマーケットプレイスのOpenSea(オープンシー)がトークンをローンチしない可能性が高いことを利用し、NFTコミュニティに直接働きかけました。LooksRareはNFTを販売するコミュニティ、クリエイター、NFTを購入するメンバーにトークンを与えました。更にトークンステーカーに取引手数料を分配し、販売した瞬間にクリエイターに即座に支払いました。

LooksRareの$LOOKSトークンを保有していても、会社の方向性に関する積極的な議決権は与えられませんが、取引手数料の100%がユーザーと$LOOKSトークンをステークする人々に分配されます。

LooksRareは厳密にはDAOと見なされないかもしれませんが、コミュニティ第一のアプローチは急速な人気上昇につながりました。その結果、LooksRareはローンチしてわずか2週間でOpenSeaの約13%のトレードボリューム(1週間あたり128億円)に到達しました。

トークンがどのように利用されるか、別の事例を見てみましょう。Ethereum(イーサリアム)アドレスに任意の名前を付けられるサービスであるENS(Ethereum Name Service:イーサリアムネームサービス)のコミュニティでは、ENS DAOの運営ディレクターの解任を、数年前にソーシャルメディア上で行った中傷を理由にDAOの投票で決議しました。

トークンの仕様を検討することは、長期的なコミュニティからの賛同とDAOの成功のために重要だと言えます。

4.DAOトークンの供給・配分・報酬を決定する

トークン総供給数に関して10億トークンと100万トークンに本質的な違いはありません。しかし総供給数が変わることで価格設定は変動するため、心理的効果があります。Arash AlooshとSamuel Ouzanは暗号資産価格の心理的影響に関する研究において、以下のように結論づけられています。

「低価格の暗号資産は取引量が非常に少なく、時価総額も非常に少なく、過去の月次および四半期収益率も低い。興味深いことに、低価格の暗号資産はトークン供給数が多い。その結果、米ドルでの取引量が少ないにもかかわらず、トレード回数はより多くトレードされる。つまり、リテールユーザーは価格の低いトークンに対してバイアスがかかり、よりトレードを行う傾向にある」(Arash Aloosh&Samuel Ouzan「Finance Research Letters Volume33(2020年3月)」内の「The Psychology of cryptocurrency prices」より)

従って、トークン供給量の適切なスイートスポットを見つけることは重要です。ENSやUniswap(ユニスワップ)のトークン供給数決定までの過程を確認してみるのもいいでしょう。トークン供給量は通常、数百万から数億の範囲で妥当な数を選択します。そのため、初期トークン供給量が恣意的に高い場合は避けましょう。

トークンの割当はトークン供給量以上にDAOを成功させる上で重要です。ビジネスとして、目的達成のために十分な資金調達を行うことはもちろん、初期のユーザーやコミュニティ支援者に報いることも重要です。コミュニティに報酬を与えつつ、十分な運営資金も確保するには、絶妙なバランスが求められるでしょう。

DAOは比較的新しい概念であり、様々なプロジェクトが様々な方法でトークンの配布を試みています。トークンの用途と割当を理解すれば、ユーザーとコミュニティの価値を創造しながら、ビジネスを成長できるでしょう。

ここまで準備できたら、いよいよDAOを構築してみましょう。「DAOを始めてみよう(2)DAOを構築する」のコラムでは、DAOを構築する際によく使われているツールを用途別に解説します。


製作:株式会社Kudasai

株式会社Kudasaiは、2020年に創設された日本最大級の暗号資産コミュニティ「KudasaiJP」を起点とし、株式会社化されました。株式会社KudasaiはWeb3企業のみならず、Web3に関わる全てのプロジェクトや企業の成長を支援する企業です。ブロックチェーンスタートアップの計画・開発やアドバイザリー、コミュニティ拡大まで、多面的かつ包括的な成長支援ソリューションを提供しています。

Web3ポケットキャンパスはスマホアプリでも学習ができます。アプリではnote版にはない「クイズ」と「学習履歴」の機能もあり、よりWeb3学習を楽しく続けられます。ぜひご利用ください。

▼スマホアプリインストールはこちら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?