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DAO_#3:スマートコントラクトによるDAOの可能性と重要な課題

スマートコントラクトによるDAOでは、組織のルールがコードとして記述され、そのコードが実際に実行されることによって組織が運営されます。しかし当然ながら、この自動実行だけでは実際の組織を運営することはできず、現実に行おうとすれば人間の助けが必要になります。そんなスマートコントラクトによるDAOの可能性や課題について解説します。


コードで組織運営、アプリケーションの提供も可能

■資金管理やDeFiとDAO

人間が労働する物理的な世界とスマートコントラクトの状態とを同期させるのは困難です。そのため、DAOはどんな組織にも適用できるわけではなく、現実的には、何らかの資金を管理する組織として実現されます。資金であればブロックチェーン上のデータとして扱え、その操作は全てブロックチェーン上で行えます。オラクル等で外界から情報を得る仕組みが必要になりますが、同期の問題はより単純になります。

また、他によくDAOが登場する例として、企業ではなくDAOを通じてステーブルコインや分散型取引所などのDeFiのアプリケーションの提供を行うことが挙げられます。この場合、初期には企業がDeFiのアプリケーションを運営し、その後、運営主体をDAO化することがよく行われています。

例えば、2014年にプロジェクトがスタートしたDeFiプロトコルのMakerDAOは、Maker Foundationが主体となって運営されてきました。ですが、2021年には共同創業者のルーン・クリステンセンが「Maker Foundationは数カ月以内に正式に解散する」とブログで発表し、分散型組織に移行する考えを明らかにしました。

DAOの自律性と問題点

■スマートコントラクトと自律性

「スマートコントラクト」の章で解説した通り、スマートコントラクトは人間や他の外部アカウントによって呼び出されなければ動作しません(関連単元:スマートコントラクトの基礎知識 - 知っておくべき三つの特徴)。つまり、自発的には動きません。例えば、周期的に何かの処理を実行したいなら、外部システムがタイマーで駆動してスマートコントラクトの機能を呼び出す必要があります。そのため、本当に自律的であるかどうかは疑問だとも言えます。

しかし、クラウド等を含めた通常の自動システムや組織の構成員らが各々スマートコントラクトの機能を呼び出し、システムが総体として他から制御を受けない形で動いているのであれば、全体としては広い意味で自律的に動作していると言えるかもしれません。

■意思決定の問題

問題は意思決定です。DAOにおける意思決定は、コードの変更を意味します。誰かが変更を提案したとして、その変更が正しいかどうかは、コードを読んで確認しなければなりません。問題は、参加者全員がそれを行えるのか、という点です。

もう一つの問題は、提案を採用するかどうかは、通常、投票で決められることです。ブロックチェーンは検閲できない台帳であるため、参加者の意思を確実に表明することができます。この点では、投票システムの実現に適していると言えます。

ただし問題なのは、投票で可決された新たなコードを有効化するトランザクションを誰が発行するのか、という点です。繰り返しになりますが、スマートコントラクトは呼び出されなければ動きません。それが特定の誰かだとすると、その人が拒否権を持つことになり、実質的な組織の支配者になってしまいます。

逆に、特定の“誰か”に依存せず、誰でも可決された提案を有効化することが許されるなら、“誰か”が巧妙に隠された悪意ある提案を行い、それが可決されれば、その“誰か”が自身でコードの変更を実行することが可能になります。これにより、様々な攻撃ができることになってしまいます。

つまり、スマートコントラクトを用いたDAOにおける意思決定の自律性は、不十分であるか、または脆弱であると言えるのです。

スマートコントラクトによるDAOの可能性と課題

これらの制約にも関わらず、スマートコントラクトによるDAOには一定の可能性があります。それは、組織のルールや意思決定の過程が透明化され、組織が更に公正に運営され得るからです。

しかし、参加者全員がコードの理解や読解に習熟していなければならないという制約、コードの変更を活性化するトランザクションを発行する人間の問題など、重要な課題と懸念が存在します。これらの課題が解決されない限り、スマートコントラクトを用いたDAOが真に自律的な組織となるための道のりは遠いと言えるでしょう。


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