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セキュリティ・トークン_#2:「セキュリティ・トークン」の基礎知識

セキュリティ・トークンとは、ブロックチェーン技術を用いて発行・管理されるデジタル化された金融商品(有価証券)のことであり、デジタル証券とも呼ばれています。この単元ではセキュリティ・トークンの概要と機能を解説します。


セキュリティ・トークン、暗号資産、NFT、それぞれの違い

ブロックチェーン技術を用いて発行・管理されるという意味では暗号資産(仮想通貨)やNFTと同じですが、セキュリティ・トークンはデジタルデータに、金融商品取引法などの規制の枠内にて有価証券と定義されるものです。ゆえにセキュリティ・トークンの売買や勧誘は、金融商品取引法に則ったライセンスを持つ証券会社などの金融商品取引業者や登録金融機関でなければできません。

また、セキュリティ・トークンはNFTと同様、トークンに該当します。ただし、NFTの特徴である非代替性はセキュリティ・トークンにありません。例えば、同じ企業が発行している同種の株式を交換したとしても、それによって本質的な価値が変わらないのと同じように、セキュリティ・トークンは代替可能な性質を持つと言えるでしょう。

セキュリティ・トークンの種類

2020年5月施行の改正金融商品取引法により、セキュリティ・トークンは「電子記録移転有価証券表示権利等」と規定され、金融商品取引業者や登録金融機関で取り扱いが可能になりました。セキュリティ・トークンは主に以下の三つに分類されます。

■トークン化有価証券

株式、社債、投資信託などをトークン化したもの。日本で発行されているセキュリティ・トークンの大半はトークン化有価証券に当てはまります。詳細は「セキュリティ・トークンの具体的な活用例 - 不動産と債券」の単元で解説します。

■電子記録移転権利

集団投資スキーム持分や信託受益権などをトークン化したもの。例えば、合同会社が不動産受益権を資産として、匿名組合出資持分をセキュリティ・トークンで発行する、という実例があります。

■適用除外電子記録移転権利

集団投資スキーム持分や信託受益権などをトークン化したもののうち、取得者を限定し移転制限を設けたもの。電子記録移転権利に該当しないセキュリティ・トークンと位置付けられます。取得者を適格機関投資家などに限定した上で、技術的措置を施して権利の転移に制限を付けるなどの対応が必要です。

セキュリティ・トークンの区分と取り扱いについて(一般社団法人日本STO協会「セキュリティトークンに関する現状等について」(2023年6月)より野村ホールディングス作成)

セキュリティ・トークンの特徴

セキュリティ・トークンは“有価証券をデジタル化した“だけ”ではありません。ブロックチェーン技術ならではの機能を踏まえて、セキュリティ・トークンが本来備える特徴を考えてみましょう。

■法律に準拠した金融商品

ブロックチェーン技術を用いた商品やサービスは数多く存在しますが、セキュリティ・トークンは有価証券として金融商品取引法の規制の下で適切に設計された金融商品です。株式や社債と同様に、開示規制や販売・勧誘ルールといった行為規制などが適用されます。

■効率化

従来の有価証券では、ポストトレードなど手続きが複雑で時間がかかることがありますが、セキュリティ・トークンの取引はブロックチェーン技術によって効率的に行うことができると期待されています。例えば、Ethereum(イーサリアム)ベースの場合には、スマートコントラクトを呼び出すことで、プログラムされた条件に基づいて利払いや償還などを自動的に実行することも可能になると言われています。

■多様な商品への少額投資

有価証券をセキュリティ・トークンで発行することにより、これまで個人投資家には投資機会が限られていた様々な商品に対しても、比較的少額から投資ができます。例えば、マンションや物流施設、旅館などの大型不動産に比較的少額で投資できる不動産セキュリティ・トークンがすでに開発、発行されています。また、インフラ資産、航空機などの多様な投資対象資産への応用も検討されています。

■耐改ざん性

ブロックチェーンの特長として「耐改ざん性」「耐障害性」「耐検閲性」「自己主権性」が挙げられます。その中の一つである耐改ざん性とは、一度記録されたデータは容易には改ざんできないことを意味しており、改ざんしようとするとそのブロックを含む以降の全ての累積したコストがかかるようになります。これにより、取引履歴の透明性も担保されます。(関連単元:「ブロックチェーン」の基礎知識)

■ダイレクトなつながり

セキュリティ・トークンの種類によっては、投資家と発行会社(資金調達者)がダイレクトにつながることが可能になります。発行会社は必要な情報を投資家に直接届けることが可能となり、他方で投資家も投資対象に関する情報を直接得ることが可能になります。

■金銭/非金銭リターン

セキュリティ・トークンの種類によっては、配当や利子のみならず、発行会社の提供するクーポンやポイントなどの非金銭リターンを受け取ることも可能です。デジタル上で管理されるため、優待などの権利についてもスムーズに権利移転でき、従来とは異なる「株主」体験も可能になります。そのため、ファンユーザー向けのマーケティングとして、セキュリティ・トークンを発行するという方法も考えられます。

これらのセキュリティ・トークンの特徴から、従来の有価証券では難しかった個人の投資促進やスタートアップの資金調達の多様化なども期待できます。


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