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資金調達_#3:「IEO」の基礎知識と法規制

IEO(Initial Exchange Offering)とは、トークン発行者が利用者に対して直接トークンを販売するのではなく、発行者から委託された取引所が利用者に対して販売する形で実施される資金調達方法です。受託販売型や第三者型ICOと呼ばれることもあります。

本教材ではより正確に、「資金決済法上の暗号資産に該当するトークンを、発行者が自ら販売するのではなく、暗号資産交換業者に委託して販売する方法」と整理して解説します。STOなどを含まない狭義のICO(Initial Coin Offering)とIEOの違いは、暗号資産を販売する主体が、発行者自らか発行者から委託された暗号資産交換業者かという点にあります。


IEOが誕生した背景

「「ICO」の基礎知識と法規制」の単元で解説したように、2016年頃よりICOがブームになるにつれて、詐欺的なプロジェクトが現れるなどしたため、ICOに対して規制がなされるようになりました。この規制により、ICOで資金調達をするには、原則として暗号資産交換業の登録が必要となりました。そのため、2019年に資金決済法等の改正(施行は2020年)によって規制がなされた後は、日本国内ではSTOを含まない狭義のICOの実施例はありません。

そこで、発行者の負担を軽減しつつ利用者保護を図る方法として、IEOが実施されるようになりました。

IEOでは、暗号資産交換業者がトークンの販売の主体となるため、発行者は暗号資産交換業のライセンスを必要としなく、実施までのハードルが軽減されています。他方で、販売を委託された暗号資産交換業者が、厳格な規制のもとで販売するトークンの審査や利用者への情報提供などを管理することにより、トークンの信頼性が担保され、詐欺的なプロジェクトの排除が期待され、利用者(投資家)保護が図られています。IEOで取り扱われるトークンは、資金決済法の暗号資産に該当するものが対象となります。

発行すること自体は法規制の適用対象外

暗号資産を発行すること自体には、法規制はありません。発行者自らが販売をしないIEOでは、発行者に法規制は及びません。ただし、発行するトークンの内容等については、委託する暗号資産交換業者にかかる規制を通して、狭義のICOと同様の規制が適用されます。

具体的には、金融庁が定める暗号資産ガイドラインにおいて、IEOを行う暗号資産交換業者を監督するにあたっての留意点・着眼点が示され、それを受けて、日本暗号資産取引業協会(JVCEA)により具体的な自主規制規則が定められています(ガイドライン及び自主規制規則では、IEOではなく、第三者型ICOという用語が使われています)。これらは法律ではないものの、実務においては事実上、法令に準じた存在になっています。

暗号資産交換業者に対するガイドラインと自主規制

ガイドラインでは、暗号資産交換業者の業務の適切性を監督するにあたって、以下の留意点・着眼点が示されています。

(1)対象事業やトークンの審査・検証
(2)トークン購入者への情報開示
(3)システムの安全性の検証
(4)販売価格の妥当性の審査
(5)審査・検証の体制
(6)モニタリングの体制

このガイドラインを受けた自主規制規則により、IEOを行う暗号資産交換業者には、以下のように体制の整備等を行い、対応することが義務付けられています。暗号資産交換業者は発行者や対象事業について、審査・検証ないしモニタリング等をする者として、発行者から依頼を受けて実施するIEOの適切性を確保する必要があります。

(1)受託販売業務に必要な体制の整備・措置の構築等
(2)反社会的勢力の排除のための措置
(3)IEOにかかる審査
 ・対象事業の実現可能性等
 ・発行者における適時、適切な情報開示のために必要な体制の有無
 ・発行者における調達資金の管理を適正・確実に実施するために必要な体制の有無
 ・発行者における財務諸表の適切な開示のために必要な体制の有無
 ・発行者における不適切な勧誘や広告を防止するために必要な体制の有無
 ・発行者におけるインサイダー情報を利用した不適切取引を防止するために必要な体制の有無
(4)発行者による履行状況のモニタリング
(5)トークンの安全性の確保及び販売価格の妥当性の審査

審査スピードをいかにして上げられるか

IEOの場合、発行者はトークンの販売を暗号資産交換業者へ委託することで、自ら暗号資産交換業のライセンスを取得する必要がなくなります。そのため、手続きコストが抑えられ、プロジェクトに集中できるというメリットがあります。

ただし、トークンの内容など、実体面で要求される内容はICOと大きくは変わりません。以前に比べて審査のスピードが迅速化されるなど改善はされていますが、より普及していくにはまだ課題がある状況です。とは言え、発行者の負担と利用者保護のバランスから考えて、暗号資産での資金調達の現実的な方法として、IEOが増えていくことが予想されています。


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