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ボイコネ(声劇Live配信サービス)に対する適格消費者団体の再申入書を読み解いてみる

これまでの経緯については、

をご参照ください。

令和3年2月2日に適格消費者団体(消費者被害防止ネットワーク東海)からの再申入書が公開されました。

この内容について、読み解いてみたいと思います。

責任を負わないという免責条項

ボイコネ側は、利用規約の33条1項第2文を「会社に故意とかうっかりがある場合を除いて責任は負わないよ」というのを付け加えれば問題ないと回答しているようですが、適格消費者団体はそうじゃないと再申入れしています。

ボイコネ利用規約
第33条(免責および損害賠償の制限)
1.当社は、本規約の各条項に従って制限された限度においてのみ、本サービスについての責任を負うものとします。当社は、本規約の各条項において保証しないとしている事項、責任を負わないとしている事項、利用者の責任としている事項については、一切の責任を負いません。
2.当社の責めに帰すべき事由によって本サービスに関して利用者に損害が生じた場合、当社が負う損害賠償責任の範囲は、当社に故意または重過失がある場合を除いて、金1万円を上限とします。
3.前条および本条各項の規定を含む本規約上の規定で当社の責任を免除・限定する規定が、消費者契約法、民法等の法律の適用により無効または合意しなかったものとみなされた場合には、当社は、利用者に対して、現実に生じた損害を賠償する責任を負うものとします。

そもそも、一切の責任を負わないというのは消費者契約法という法律に違反するので、そういった規約は無効になると考えられるわけですが、ボイコネ側の変更案だと、「当社は、本規約の各条項に従って制限された限度においてのみ、本サービスについての責任を負うものとします。」という33条1項1文目から、損害賠償を請求することが一切できないと誤解してしまい、諦めてしまう可能性があるので、ちゃんと改訂してくださいと、適格消費者団体は申し入れています。

台本(脚本)の著作権と上限額

ボイコネ側がとても程度の軽いうっかりなどで台本作者の著作権などを侵害してしまったとき、1万円を上限として損害賠償を払うよという規約についても、ボイコネ運営が直接権利侵害することは想定していないという回答をしたようです。

ボイコネ利用規約
第33条(免責および損害賠償の制限)
1.(略)
2.当社の責めに帰すべき事由によって本サービスに関して利用者に損害が生じた場合、当社が負う損害賠償責任の範囲は、当社に故意または重過失がある場合を除いて、金1万円を上限とします。
3.(略)

しかし、情報提供の中にはボイコネが無断転載・改変をしたというものがあるんですがという突っ込みがなされています。

そして、ボイコネのようなプラットフォーム上でトラブルが起きたときに、プラットフォームを提供している事業者も責任を負うことがあり、事業者の損害賠償額が8993万円となった判例もあるよと添えられています。

このようなことから、上限を1万円とするのはあまりにも少額過ぎるから、消費者契約法により無効となるという再申入れをしています。

コミックシーモアやシーモアBOOK SPOTなどでの利用と利用規約

ボイコネとしては、ボイコネアプリ上だけではなく、運営母体であるNTTソルマーレが展開している「コミックシーモア」や「シーモアBOOK SPOT」、ゲーム事業などでも、投稿した作者に事前の断りなく無償かつ無断で利用できるという利用規約を改訂することには応じられないと回答しているようです。

第20条(会員コンテンツの知的財産権)
1.会員コンテンツについて発生する知的財産権は、当該コンテンツを創作した会員に帰属するものとします。
2.会員は、当社に対し、当社が以下の目的で会員コンテンツを、地域または期間の限定なく、使用および利用(二次利用および再許諾を含みます)するための無償かつ取消不能の利用権を許諾します。
(1)本規約に違反する行為を検証する目的
(2)本サービスその他当社が提供するサービスのプロモーションを行う目的(オンラインイベントまたはオフラインイベント等での上映その他の利用を含みます)
(3)本サービスの仕様変更、保守、改良を行う目的
(4)本サービスその他当社が開発するサービスの企画・運営、共同研究において利用、改変する目的
3.会員は、他の会員に対し、他の会員が本サービス上の機能に従って会員コンテンツを利用するための無償かつ取消不能の利用権を許諾します。たとえば、ある会員が本サービスに従って配信済みの声劇LIVEをアーカイブすることがこれに含まれます。
4.会員は、前二項に定める当社及び他の会員の使用又は利用に関し、著作者人格権を行使しないものとします。

理由としては、NTTソルマーレのサイトに具体的に示しているから、許諾の範囲が不明確でもなければ広すぎることもないでしょというもののようです。

ただ、個人的にはボイコネを利用している人が特にリンクが張られているわけでもなくNTTソルマーレのサイトをわざわざ検索なりして確認をとるのか疑わしいというのもあります。

適格消費者団体としても、月間利用者数1500万人を超える国内最大級の電子書籍配信サービスや、事業者向けコミック読み放題サービスなんてものは、投稿者は想定していなくて、ボイコネ上だけで利用される分には事前に許可はいらないよと考えているだろうし、それなのに地域・期間の限定もなく、無償で取消不能の利用OKをさせるのは、作者にとってあまりにも不明確で広すぎるという突っ込みがされています。
そもそも、投稿された台本(脚本)をボイコネ以外で使いたいのであれば、作者を尊重して個別に許可とればいいじゃないか、と。
ごもっとも。

だから、NTTソルマーレのウェブページに事業内容を表示してるからという理由は不十分であり、改訂をするようお願いしています。と締めくくられています。

回答を急かした理由(文化放送との兼ね合い?)

ボイコネ側は適格消費者団体に対して、12/20までに回答してくれと伝えていたようです。

あくまで邪推の域を出ないのですが、文化放送でボイコネ劇団という企画が動き出しています。

ボイコネのシナリオを使うようで、早めにボイコネの回答を適格消費者団体がどう受け止めて、どのように申入れなどをしてくるのか知りたかったのかもしれませんね。

実際、すでに少なくとも3つはボイコネのシナリオ提供がなされています。

作者に対して事前に許可を求めていたのかどうか、またアドリブや一部分の切り取りといったような改変があったのかどうか、そしてそれらについても許可を求めていたのかどうかはわかりませんが、文化放送での企画に影響を及ぼすかもしれませんね。
(文化放送が、ボイコネと適格消費者団体とのやりとりについて知っているか知らないのかはわかりませんが、おそらくは知らないと思います)

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