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サブスクリプションについて考えてみる。

今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
この前、「中の人」はとあるサブスクリプションモデルの商材の相談を受けました。サブスクリプション商材ってMELSAモデルの中でも、アクティブユーザーモデルでよく採用されるスタイルですよね。DAU・WAU・MAUやチャーン率など、特有の指標があったりして、たくさんの刺激に触れているところです。
ということで、今回はサブスクリプションについておさらいしてみようと思います。

サブスクリプションとは

サブスクリプションとは、定期的に料金を支払うことで利用することができるサービスのことを指します。例えば、音楽ストリーミングサービスや動画配信サービスなどがその代表的な例でしょう。毎月定額を支払えば、好きなだけ楽しむことができます。
公式テキストでは以下のように解説しています。

定期的な課金を主な収益源とし、定期課金ともいいます。近年では「サブスク」と略されています。サービスの課金は、利用サービスのランクやコースに基づく一定額の請求が基本です。継続課金サービスにユーザーを誘導すること、課金ユーザーのランクを上げること、解約(チャーン)を防ぐことが重要です。

『ウェブ解析士認定試験公式テキスト2023』

小難しいですねぇ。要するに、「定期的にお金をもらって、継続的に利用してもらう」というビジネスモデルを指してサブスクリプションモデルというそうです。
「中の人」サブスクリプションの本質はモノを売るのではなく、モノから生まれる便益を継続的に提供することだと思っています。
わかりやすい事例があったのでご紹介しようと思います。

栗田工業の事例

栗田工業株式会社(https://www.kurita.co.jp/index.html)さんは水の浄化設備や機械の製造・販売を行う会社です。
10年以上前に、大手家電メーカーが液晶パネル用の大型工場を作っていた時の話だそうです。大きな工場では水の浄化設備は必要不可欠な装置です。それらを製造・販売する栗田工業さんにとっては設備が売れれば大きな利益を得ることができますね。
しかし、栗田工業さんは設備を売らなかったそうなのです。ではどうしたのかというと、家電メーカーの工場の近くに工場を建設して、メーカーの工場と自社工場をパイプで繋いだそうなんです。浄化設備は自社工場内に設置、家電メーカーから流れてくる汚水を浄化して送り返すというビジネスを展開したのだとか。
浄化設備というモノから、水の浄化サービスという浄化設備から生み出される便益の提供へと転換し、継続課金のビジネスモデルを形成した事例です。

サブスクリプションの勘所

サブスクリプションモデルを成功に導くためには3つの勘所をおさえておくべきなのだそうです。
3つの勘所とは、「限界費用」「顧客との関係」「囲い込み」だそうです。それぞれ見ていきましょう。

勘所1:限界費用

サブスクリプションモデルはデジタル商材と相性がいいことが知られていますが、それには「限界費用」が関係していると言われています。
下記の記述を見てみましょう。

デジタルデータは、追加的な費用(=限界費用)がほぼゼロで複製・伝達が可能
通常、あるモノやサービスの生産を増やすときには、追加的な費用が発生する。例えば、自動車を一台追加生産する場合には、その原材料費や組立てに必要な人件費などが追加的にかかる。このように、ある財・サービスを一単位増やすために要する費用を、限界費用という。

総務省『令和元年版 情報通信白書のポイント

サブスクリプションの代表例といえばNetflixですよね。毎月定額支払えば、いくらコンテンツを視聴しようと追加料金はかかりません。視聴するコンテンツが増えたところで、企業側のコストも変わりません。つまり、限界費用がかからないということです。
限界費用がかからないということはユーザーの「消費者余剰」を最大化することができます。

消費者余剰とは、消費者が支払っても良いと考えている価格(支払意思額)と、実際に払っている価格との差のことである。実際に支払っている価格が同じだとすると、支払意思額が大きいほど消費者余剰も大きいことになる。

総務省『平成28年版 情報通信白書のポイント

消費者余剰は[消費者が払っても良い価格>実際の支払額]の時に生じるので、これが大きいほど、値上げできる可能性が広がりますよね。だって、消費者はもっと支払っても良いと考えているわけですから。

ただ、サブスクリプションモデルは何もデジタルコンテンツに限ったものではありません。最近ではアパレルやチョコレートなどのお菓子にもみられるビジネスモデルです。
例えば、「ブランド品使い放題」のようなサブスク商品があったとしたら、ユーザーが使用するたびに商品は消耗するし、デリバリーにかかるコストも増えます。と、いうことは限界費用がかかるわけです。デジタルコンテンツのような成功を収めるためには、この限界費用を極力低く抑える工夫が必要になってきます。

勘所2:顧客との関係

サブスクリプションモデルの最大のメリットは、「顧客と継続的な関係を持つことで顧客と情報が共有できる」という点にあります。
顧客から共有される、使用状況や製品の活用度合い・消耗度合いなど様々な情報をもとに、サービスの改善を行い提供価値を高めていくことができます。
商品やサービスの質が改善されると、必然的に継続率が高くなっていきます。公式テキストでも指摘されている通り、サブスクリプションモデルの重要指標のひとつがチャーン(解約)率です。チャーン率が減少するということは、売上の下限が上がっていくことと同義です。事業の成長には欠かせない観点になりますね。

勘所3:囲い込む

穏やかじゃない表現ですが、顧客の囲い込みはサブスクリプションモデルの特徴のひとつです。
特定のサービスに一度慣れてしまうと、別のサービスへ転換するのが難しくなります。Adobe製品なんかがまさにそうですね。「中の人」はデザイン系ソフトはAffinity製品を重宝しているのですが、入稿の際は.aiを求められたりするし、ウェブサイトのワイヤーフレームなんかは.xdを求められたりするので、Adobe製品も使い続けています。
といった具合にですね、一度普及してしまえばそう簡単に乗り換えられないのがサブスクリプションのすごいところです。

まとめ

サブスクリプションとは定期的な課金により、商品やサービスを継続的に提供するビジネスモデルのことです。
その本質は、モノの販売から、モノから生まれる便益の提供への転換だと考えられます。サブスクリプションモデルで成功するためには、

  1. 限界費用を極力抑えること

  2. 継続的な顧客との関係を築き、共有された情報を活かして提供価値を高めること

  3. 顧客を囲い込んで、他社への乗り換えを阻止すること

が重要となってきます。

あとがき

今週も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
サブスクってずるいですよね(笑)
気づかないうちに固定費が上がってしまうのが怖くて、できるだけ一括買い切りをしたい派なのですが、数えてみたら結構なサブスクに加入していました。
デザイン系のソフト、会計ソフト、グループウェア、ドメイン、サーバー、etc…なんだかんだ言っても欠かせないサービスだからずるい!
でも、各社チャーン率を下げるために様々なUXの設計を行なっているので、使うだけでも大変勉強になりますよね。と自分に言い聞かせています(笑)

それでは、また来週お会いしましょう。

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